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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■男達の秘め事編■
50/139

Episode05-1 二人の絆

 普通の病院にかかれないヴィンセントとヒューズを連れて、キアラ達が戻ってきたのはガリレオ騎士団の救護室だった。

 二人の治療を担当したのはアレッシオ。二人に関してもヴィートが事前に話を付けていたため、傷の治りが異常に速い彼らを見てもアレッシオが慌てる事はなかった。

 それに正直、二人の怪我は軽い方である。

「あらやだぁ、これ折れてるわよぉ」

 とアレッシアが突っついているのはキアラとレナスの掌である。

「骨が折る勢いで殴られたのか…」

「お前は一発だけだろ。俺なんて二発だ」

 ギプスを撒かれている第4小隊の隊長と副隊長に、殴られた男達はそうこぼす。

「助けてあげたんだから文句言わないでよ!」

「あそこで殺しておけば、俺の人生安泰だったのかもなぁ」

「何それ! 信じらんない!」

 と、ヒューズにつかみかかろうとしてレナスは痛みにうめく。

「あんたは肩も怪我してるんだから」

「こんなのすぐ治る!」

「あんたにはそんな機能ないから、ほらほらヒューズと交代して」

 無理矢理寝かせられ、レナスは更に不機嫌になる。

 その傍らに、そっと寄り添ったのはヒューズだ。

「悪かった…」

 彼女だけに聞こえたささやきは深い後悔に満ちていた。だからこそ、レナスはもう一度彼の頬を殴り飛ばした

「痛い!」

「俺の台詞だっての」

「……今ので、おあいこだから」

 不器用な、しかし彼女の拳に、気にするなという思いが込められていることにヒューズは気付く。

 それでも後ろめたさがぬぐえない彼に、レナスは苛立ち、言葉を重ねた。

「今のは肩の傷のぶんだから!」

 そこでようやくヒューズが苦笑する。

「むしろ増えたぞ一発」

「残りは、私の腕が使えない間の分」

「1回は免除されるのか」

「殴られるような事しないでよ」

「お前が静かに寝ててくれりゃあ、何もしないしおきない」

 どういう意味だと喚くレナスをなだめるヒューズ。

 二人のやり取りに、それを眺めていたキアラはほっとする。

「もう、いつも通りだ」

 思わず零れた言葉に、側のヴィンセントも微笑む。

「全部含めて、認め合ってるんだな」

「なんか、ヒューズさんに適わない理由が分かりました」

 ヒューズは全てをさらけ出して、その上でレナスの側にいるのだろう。キアラがヒューズの姿に恐怖を抱いたときも、レナスはまっすぐに彼を見ていた。

 危機は感じていてもあのときのレナスに恐怖はなかった。必ず彼が戻ると、きっとレナスは信じていたのだ。

 不安で頭がいっぱいだった自分とはまるで違う、まっすぐな信頼。それを間近で見て、キアラの胸に今更のように後悔に押し寄せた。

 無言で立ち上がり、キアラは素早く部屋を出て行く。

「ここは、追いかけるところだぞ」

「言われなくても」

 まだ少し痛む肩をおさえつつ、ヴィートのつぶやきにヴィンセントは苦笑いを返した。


※8/3誤字修正致しました。(ご指摘ありがとうございました)

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