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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■男達の秘め事編■
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Episode01-1 騎士団長はさぼり魔

 逮捕した強盗を地下の牢屋にぶち込んだ後、キアラはすっきりした顔で騎士団内を歩いていた。

 出来ることならば荒事はない方が良い。だがやはり、自分の手で悪党を逮捕するというのはなかなかに気分が爽快だ。

 それも本日、彼女はすでにスリや泥棒を含む4人の悪党を捕まえている。

「これは新記録だ」

 と一人ニヤニヤしていると、突然目の前に壁が迫った。

 慌てて立ち止まると、壁だと思っていたのは騎士団長のヴィートだった。

「すいません!」

 ぶつかりそうになったことをわびて敬礼をすると、ヴィートは少し困ったように笑う。

「どうせなら胸に飛び込んできて欲しいところだがな」

「ありえませんが?」

 即答され、ヴィートは大仰な仕草で頭を落とす。

「せめて二人だけの時くらい、パーパに優しくしようよキアラちゃん」

「戸籍上、あなたは私の父親ではありませんので。…まあ、あったとしてもしませんが」

「でもパーパはパーパだ、さあ再会のハグをしよう」

「嫌です」

 またもや即答だった。

 相手は騎士団長。だが扱いがぞんざいのなのはキアラだからと言うわけではない。

 普段は第5小隊隊長のヒューズと並んで『おっさんコンビ』と呼ばれる騎士団長は、ヒューズかそれ以上にだらしがない上に仕事をしないことで有名だ。

 副官達の目をかいくぐって昼間から酒場に入り浸る。騎士団に出資してくれる貴族との晩餐に寝癖で行く。等はいつものこと。

 今日も長くなってきた白髪交じりの髪は乱暴にひとつにまとめ、顎にはもちろんそり残しの無精髭。その上隊服は『色気が足りない!』と言って着崩し、無駄に胸元を開けているという有様である。今更だが、女子の隊服をスカートにすべきだったと後悔しているらしい。

 もちろん騎士団長をやるくらいの器量はあるのだが、平和な時はとにかくだらしがない騎士団長に、キアラを含む騎士達は手を焼いている。

「行ってもいいですか? これから巡回なんで」

「今帰ってきた所じゃないか」

「代打です。今日もまた、その……」

「うちのうら若き乙女達をフッた奴がいたのか? 乙女に涙を流させるなんて最低だねぇ」

「と言うわけですので」

 では、と敬礼をしてキアラは歩き出そうとしたが、そこで引き下がるヴィートではない。

「俺も行く」

「団長は黙って自分の仕事をしてください」

「人々と交友を深めるのも、騎士の立派な仕事だ!」

 どうせ昼間からワインを飲みたい口実だろう。 

 キアラの予想は見事的中することになるのだが、結局ヴィートを止められず、二人が騎士団本部を出たのはその10分後のことであった。


※8/3誤字修正致しました。(ご指摘ありがとうございました)

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