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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■騎士の初恋編■
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Episode01-2 マフィア上がりの王子様

「で、どういう流れで口説き落としたの? ほらほら、お姉さんに話してご覧なさい」

 合コンを終えた次の日の朝、騎士団本部にある第四小隊の事務室に入ったとたん、隊長のレナスに捕まった。

「口説き落としてません。相手が勝手に連絡先を押しつけてきただけで」

「天下のヴィンセント王子に連絡先貰うなんて、それだけで大したもんよ」

「ほしければ差し上げます。別にいりませんから」

「とかいって、まんざらじゃないんでしょー」

 レナスの挑発にキアラは無言を貫いたが、図星でなかったといえば嘘になる。

 去り際に耳元でささやかれた言葉も、手渡されたメモも、キアラにとっては簡単に捨てることが出来ない物だった。

 レナスや他の隊士に比べたら恋愛に興味があるとは言えないし、正直男は苦手だった。それでも彼女も年頃の娘である。異性への興味も少しずつ芽生えつつあるのだ。

「デートの約束とか、したの?」

「週末に合わないかとは言われました」

「じゃあ、あんた日曜休みね。代わりに私がしっかり盗賊退治してあげるから」

「いや、それはいけません! 街道の盗賊退治は私が請けおっていた案件で」

「王子様とのデートと、盗賊退治。秤にかける馬鹿がどこにいる!」

 言うが早いか、レナスは他の隊士に休日出勤を申しつける。

 呼びつけられた隊士も悪い顔一つせず了解してしまったので、キアラも下手にごねられない。

「でも、ヴィンセント王子って言えばなかなかの硬派じゃない。意外に行くところまで行くかもね」

 そんな期待させることを言わないでほしいとキアラは思うが、ヴィンセントの評判はキアラも良く耳にする。

 他の王子と違い、ヴィンセントは特殊な事情で王子の位を得た人物だ。

 そしてこの特殊な事情は、この国の歴史に関係する。

 フロレンティアの歴史は浅く、建国されたのも300年ほど前のことだ。元々は畜産と商業の街として栄えていたフィレンティエという街に、5人の賢者がそれぞれ学舎を興したのが始まりだという。5人の賢者はそれぞれ魔法術、妖精術、医学術、魔科学、そして騎士術にたけた者達で、彼らの学舎には多く人が集まり、次第にそれぞれの学舎は規模を大きくしていった。それが結果的に学舎を囲む街をも発展させ、ついには国になったという。

 建国当初は国王はおらず。国政の任につくのは、賢者の学舎を卒業した者達の中でも、取り分けて優秀だった5人の生徒だったという。

 現在は、5賢者の中でもきわめて優秀だった魔術師グリモアの血を引く一族が国王の位を有しているが、血筋だけで国の統治者を決めるべきではないと説いた賢者の意思を尊重し、国王は自分の息子の他に5人、血の繋がらぬ子供を王子として迎え入れるしきたりがある。

 そうはいっても、跡を継ぐのは大抵血を分けた子供であるのだが、王子となった者達は例外なく国政に関わる重大な任につく。

 そしてその5人のうちの1人に選ばれたのがヴィンセントだ。

 元はフロレンティアから北西に下った産業国「シチリアーノ」出身の彼は、元マフィアの幹部という異例の過去を持つ。5年ほど前、観光でシチリアーノ国を訪れたフロレンティアの国王との息子がマフィアに襲われるという騒ぎがあった。そのとき二人の命を助け、騒ぎを静めたのがヴィンセントだったのである。当時の働きにいたく感動した王は、彼をフロレンティアに連れ帰り、空いていた最後の王子の座を与えた。

 当初はマフィア上がりの若者など以ての外だと、貴族達からの風当たりは強かった。しかし持ち前の剣の腕と礼儀正しさは次第に民の心をつかみ、貴族達の評価を改めさせ、最近ではガラハド騎士団の隊長にも任命された。

 年齢は他の王子より少し上だが、王自身も自分の後継者としてではなく、王子として側に置いておきたいようだ。それを彼自身も理解しているのか、淡々と国王の任務や騎士としての活動に従事している。

 王子という立場を利用して遊びほうけている他のお坊ちゃん方と比べれば、なかなかに立派な人物だとキアラも前々から思っていた。

 そんな王子が合コンに参加していたのは驚きだが、昨日の様子ではキアラ同様、無理矢理参加させられた線が濃厚で。他の貴族と比べて女性の話題が少ない事を考えると、そろそろ身を固めろとか何とか言われて、無理矢理引っ張ってこられた口だろう。

 でも、よりにもよって、そこでどうして自分に目をつけたのかと、キアラは思わずにはいられない。人より誇れるのは剣の腕くらいだし、美しさよりも気の強さが目立つ目鼻立ちに、女らしさはあまり無い。

 遊牧の民の血を引く母から授かったエメラルド色の瞳だけは自慢だったが、日頃の訓練で日焼けした肌の所為で、それも宝の持ち腐れだと自分では思っている。

 見た目に寄らず相当趣味が悪いか、硬派といわれつつ本当は女に手が早いのか、そのどちらかなんだろうなと、キアラはため息をついた。

 週末まではあと3日。「あれは冗談だった」という文がいつ届くものかと、キアラは本気で思っていた。

初の長編です。舞台はイタリア!ファンタジー!恋愛! と少女漫画的な要素をいれようと意気込んだのに、予想以上におなご達がたくましくなってしまいました。 こんなノリでもいいよ!といってくださるかたは、今後もおつきあい頂ければと思います。

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