Episode06-1 お節介な騎士達
客間のある廊下を駆けていたアルベール。そんな彼を、唐突に引き留めた声があった。
「すいません、少しお話が!」
振り返るとそこにたのはキアラ。どこか思い詰めた表情の彼女にアルベールが歩みを止めると、彼女はそばの階段を指さした。
聖騎士の守護天使であるラファエルの像を望む屋上。キアラがアルベールを連れてきたのはそこだった。
アルベールとともに外へと出たキアラは、素早く周囲を確認する。
敵影はなく、殺気も感じない。あたりまえだが、アルベールがいる建前、確認せねばという義務感があるのだろう。
「ここは安全です」
「ヴィンが言っていた通りだな」
そう言いきる彼女に、アルベールは苦笑する。
「ガリレオの騎士は優秀だって」
その言葉に、キアラの胸は高鳴った。好きだといわれるのはもちろんうれしい。だがそれと同じくらい、彼に認められているのはキアラにとって喜ばしいことだった。
そしてそんな彼女の気持ちに気づいたアルベールは少し哀しそうに笑う。
「君たちは良いな。素のままの自分をみとめあっている」
「わ、私とヴィンセント様はそう言う関係では…」
「でも好きでしょ?」
アルベールのまっすぐな言葉に、キアラは思わずうなずいてしまう。
「どこがすき?」
ヴィンにはいわないからと念を押され、キアラは観念した。
「まっすぐなところです。騎士としても人としても彼は常にまっすぐに生きている。だからこそ間違える時もあるけど、そう言うとき、側で正してあげられたらって、そう思うんです」
キアラの答えに、アルベールは心の底からうれしそうに笑う。
「ヴィンのこと、ちゃんと見てるんだね」
「一緒に剣を振ったからわかるってだけです。言葉よりも剣は多くのことを教えてくれるから」
そういってから、キアラは躊躇いがちな視線をでアルベールを見つめる。
「だから、アルベール様も隊長と向き合って欲しくて…」
たぶん、恋の仲裁などしたことはないのだろう。だがそれでも、アルベールを引き留め彼女は伝えたかったのだ。
「向き合えば隊長の良いところ分かって貰えると思うんです」
「レナスさんは本当に慕われているんだね」
アルベールの言葉に、キアラが大きく頷いた。偽りのないその視線と、ようやく浮かべた彼女の笑顔に、ヴィンセントが惹かれたもう一つの理由が分かった気がした。
「安心して、僕も彼女もそのつもりみたいだから」
そう言うと、アルベールはゆっくり背後を振り返る。
振り返った先、そこに立っていたのはレナスだった。
「まったく、どいつもこいつもお節介ばっかりだ」
その目に涙がないことを確かめてから、キアラはほっと息をつき、彼女に駆け寄った。
「私は、周囲の警備に戻ります」
「うん、たのんだ」
入れ違いにバルコニーに出るレナス。その手には自分の剣とヒューズの剣が握られていた。
それ彼女はまっすぐにアルベールを見て、大きく息を吸う。
「あの子じゃないけど、私もこんなやり方しかわかんないの」
自分の剣をアルベールに投げれば、彼はそれを片腕でキャッチする。
「僕も、確かめたいって思ってたんだ」
そう言って、アルベールは剣を抜いた。
視線の先には、すでに剣を構えたレナスがいた。




