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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■隊長達の受難編■
30/139

Episode04-1 女らしさと騎士らしさと

 電車が走り出して早30分、未だ襲撃はなく隣で談笑しているレナスに笑顔を向けながら、アルベールはちらりと周囲を見回した。

 騎士を他にすれば出入りをする者もおらず、襲撃の予兆はない。

 ヴィンセントからの報告によれば怪しい客の姿もないとのことだ。

 さすがに時速300キロで走る列車に乗り込むのは難しい。襲撃があるならば列車が止まるタイミングだろうとアルベールは踏み、わずかに緊張を解く。

「そんなに心配されなくても大丈夫ですよ」

 唐突に、レナスがアルベールの手のひらを握る。

 それにほんの少し驚きながらも、彼女の笑顔を見ていると安心できる自分に気づき、アルベールは苦笑した。

いざとなったらレナスを守るのは自分の方なのに、気がつけばいつも、レナスのさりげない言葉や行動に救われている自分がいることを、アルベールはすこし情けなく思う。

 見た目は可憐で清楚。そして常に明るく気だてがよいレナスをアルベールは心の底から愛しく思っている。

 だが時々思うのだ。彼女には自分にはない強さがあると。

「本当に、あなたはお強い」

 レナスが若干息をのむが、アルベールはそれに気づかないようだった。

「今の状況を話しても動揺一つしない」

「それは、アルベール様が側にいてくれるからですわ」

「でも僕は騎士としてはまだまだ半人前です。剣術では友のヴィンセントに勝てず、聖なる力にすら拒まれている」

「でもこれから修行に向かうのでしょう? 立派なことですわ」

「むしろ遅すぎるくらいです」

「でも、あなたはそれに気づいたわ」

 切なげに揺れるアルベールの顔をのぞき込み、レナスは笑う。

「間違いをただし、後悔から前に進むことは正しい者にしかできないことです。そしてそれこそ、騎士として大切なことなのではないでしょうか?」

「あなたはずいぶん、騎士道にお詳しいようだ」

 アルベールの言葉に、レナスは目を泳がせる。

「…ということを、昔教えていただいたんです。そこの彼に」

 そう言った先にいたのは、暇そうな顔で二人の側にたたずんでいるヒューズ。

「執事にですか?」

「い、今は執事ですが以前は騎士だったそうで」

 フォローしろと視線を送られ、ヒューズは「左様でございます」と頭を下げる。

 そのやりとりを見て、アルベールはなぜだか少し複雑な顔をする。

「僕なんかより、立派な騎士が側にいるのですね。それも常に」

「そんな!アルベール様より立派な騎士なんていませんわ!」

 そう言うなり、レナスはアルベールの腕をとる。

「あなたはこんなに素敵で女性に優しくてお強い。それに比べてこの男、情けなくてどうしようもなくてブルースウィリスリーの物まねしかできないんですのよ」

 再び跳んできた視線に、ヒューズが「あちょ」とやる気のない構えをしてみせる。

「こんなのとご自分を比べてはいけません!」

 ね? と顔を近づけられ、アルベールは渋々うなずく。

「すいません。最近ちょっといろいろと自信をなくしていて…。情けないところを見せました」

「かまいませんわ。むしろ私には見せてくださってよいのですよ」

 レナスの言葉にアルベールは堅く首を横に振る。

「男性は女性より強くあらねばなりません。あなただって、強い男性が好きだとおっしゃっていたでしょう?」

「それはそうですけど、私は…」

「僕はあなたにふさわしい男でありたいのです。わかってください」

 そう言って、アルベールは堅く口を閉ざし、窓の方へと視線をそらす。

 自分に向けられ無くなった言葉と視線に、レナスもまた仕方なく黙り込むほか無かった。


※8/3誤字修正致しました。(ご指摘ありがとうございました)

※1/6誤字修正致しました。(ご指摘ありがとうございました)


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