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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■隊長達の受難編■
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Episode03-3 執事騎士の正しい使い方

 列車の発車音に、アルベールはまどろみから意識を覚醒させた。

 側にいたはずのヴィンセントの姿はなく、変わりになじみのない制服に身を包んだ騎士が他の乗客の中に紛れていた。

 ガラハド騎士団の純白の制服とは違う、抑えめの赤を基調にした制服はガリレオ騎士団の証。

 デザイン的にもスタイリッシュなガラハドの制服と比べると、とにかくガリレオの制服は渋い。そしてそれは、高速鉄道の近代的で小綺麗な車内にはとても浮いていた。

 彼が乗る高速鉄道列車フレッチャ・ロッサは昨年南ローマで開発された最新鋭の列車である。故に座席や窓はもちろん通路や天井の装飾に至るまで、近代的なデザインが徹底されている。

 その速度もそれまでの鉄道とは桁違いで、それまでの在来線とならび、イタリア半島の国々を結ぶ足として期待されている。

 フロレンティアから南ローマまでの所要時間は2時間たらず。とにかく速い。

 しかし正直、アルベールはこの速い乗り物が苦手だった。

 フロレンティアは機械の乗り物がないが、他国に行けばこのような乗り物は多く見かけることができるし、海の向こうの英国やステイツなどはさらに科学技術が進んでいる。

 だがそうした最先端の技術や機械とフロレンティアはとにかく縁がない。そんな国で育ってきたせいか、近代的な作りのこの列車にもなかなかなじめず、ヴィンセントがいない今、年甲斐もなく心細さを感じている。


 そんなとき、前方の車両とを結ぶ扉が開いた。

 ヴィンセントが戻ってきたのを期待して顔を上げるアルベール。その表情が、凍り付いた。

「あら、奇遇ですわね!」

 そう言ってアルベールの前で微笑んだのは、ドレスに身を包んだレナスだったからだ。

「ど、どうしてレナスさんがここに!」

「私のおじさまが急病だというので、お見舞いに行きますの」

 いつもの男らしい口調からは想像もできない女の子口調でそう告げるレナス。そんな彼女に駆け寄ったアルベールは、側の座席にレナスを無理矢理座らせる。

「この列車に乗ってはいけません。キケンなんです」

「でも、この列車ローマまで停車しませんのよ」

 今更のように車窓に目を向ければすでにフロレンティアの町並みは遠くに過ぎ去っている。

 さすが最新車両、加速度も半端ではない。

「とにかく、危険なんです。特に僕の側は」

「もしかして、私がお嫌いになりましたの?はっ、まさかローマに他の恋人が?」

 わざとらしくハンカチで目元を押さえるレナスに、アルベールはあわてふためく。

「ちがいます、ただ僕は今不特定多数の者達に狙われています。だからあなたを危険にさらしたくなくて…」

「それなら安心してください。私には、護衛もいますので」

 そう言ってレナスが手を打つと、前方の車両から1人の執事が現れる。

「執事のヒューズです。彼、ステイツの俳優であの有名なブルースウィルスリーの物まねが得意なんですよ」

 レナスがそう告げたとたん、執事…もといヒューズはどこからともなく木の板を取り出すと、それを放り投げ

「ほあたー」

 やる気のないかけ声とともに蹴りでそれを真っ二つにしようとし、見事に失敗した。

「まあ、たまには失敗しますけど」

 レナスの笑顔に、アルベールは決意する。

 彼女のことは、自分が守らねばと。



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