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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■騎士の初恋編■
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Episode05-3 騎士団長

 盗賊団とヴィッチーニ家の事件を解決してから数日後、ヴィンセントの元に事件の顛末を報告しに来たのはヴィートだった。

 ご苦労なことにわざわざ屋敷まで押しかけ、

「同じ王子として君と友好を深めたいと思ってね。キアラも来たがったが、ここは男水入らずの方が良いと思って」

 と、わかりやすい嫌みを手みやげにする徹底ぶりだ。

「ヴィッチーニ家の方は、国王直々に処分を下してくださるそうだ。たぶん、国外追放になるだろう。盗賊団の残党が何人か残っているが、それも、私の騎士団が何とかする」

 客間のソファーにふんぞり返りながら、ヴィートは事件の収束を報告した。

「ヴィッチーニ家がつぶれれば、あなたの再婚も白紙ですね」

「もとから再婚なんてするつもりはなかったさ。俺は、死んだ嫁さん一筋だからな」

 ヴィンセントに心配されるのも嫌と言わんばかりの表情のヴィート。これは本格的に嫌われたと悟ったのか、それ以上何も言わない。

「それよりもお前、体どうした?」

 唐突な質問に驚くヴィンセント。そんな彼を、ヴィートがため息混じりに続ける。

「あのワイン。シチリアーノの内戦で死んだ体から抜き取った物だと聞いた。死者の血は、お前みたいな奴の体には毒なんだろ」

「大丈夫ですよ。俺は純血じゃないから」

「だったらなぜ、こんな閉め切った部屋にこもってる」

 ヴィートの指摘に応えられないのは、彼の言葉が図星だからだ。

 本当ならば自分から話を聞きに行きたかったが、今の彼には日の光さえ猛毒だ。体を動かせるようになったのも、昨日今日の話である。

「何だったら、活きのいい女の2、3人。今回の礼に手配してやっても良いぞ」

 ヴィンセントは無言で首を横に振ると、少し悲しげに笑った。

「俺はもう、人の血を吸うのは辞めたんです。ヴァンパイアの王子なんて、流行らないでしょ?」

「俺は別に、そこまで自分を縛ることもないと思うぞ。せっかくの自由が許される時代だぜ? 学問も、思想も、宗教も、民族も、そう言うしがらみのない時代に生まれたんだから、もうちょっと楽しく生きろや」

 ヴィンセントの、心の闇をヴィートは無意識に感じ取っているのかもしれない。

「うちの娘もさ、堅い所はあるが自由に生きてるぜ。いっちょ前に、恋までし始めたみたいだしよ」

 言って、ヴィートは少しためらいがちに続けた。

「やっぱりあれか、ヴァンパイアも腹筋が割れた女の子は興味ない口か」

「どういう意味ですか?」

「いや、第4小隊の奴らがいつも泣いてるからよ。腹筋見られてフられたーって」

 ありありと想像出来るその光景に、ヴィンセントは思わず吹き出した。

「割れてて良いじゃないですか。たるんだおなかで、正義なんて守れません」

「でも、結構死活問題みたいだぜ。その分、男は良いよな。剣持ってると三割り増しでモテるから」

 でも彼女たちは違うのだろう。どんなに騎士として優秀でも、心ない中傷で女としてプライドを傷つけられる事も多いに違いない。

「お前も、中途半端に付き合うんならあいつらにはだけは手を出すなよ。肉体が強い分、意外と中身はもろいからよ」

「でももし本気だったら、良いんですか?」

 まっすぐに向けられたヴィンセントの視線に、ヴィートは少しだけ悩んだのち、口を開いた。

「かまわねぇが、うちの団員泣かしたら、団長の俺が黙っているとは思うなよ」


※6月16日 誤字修正しました(ご指摘ありがとうございます)

12月20日 誤字修正しました(ご指摘ありがとうございます)

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