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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■騎士の初恋編■
14/139

Episode04-3 隊長からのアドバイス

 装備と隊服を取りにヴィンセントが出て行った後、キアラもまた着替えのために更衣室に向かった。

 隊員のほとんどは隊室の方に控えているため、更衣室にはキアラの他には誰もいない。

 所々へこんでいる銀のロッカーを開け、隊服を取り出す。

 窮屈なドレスからの開放感に思わずため息をこぼしたとき、笑い声が彼女の背後から響いた。

「似合ってたのにもったいない」

「嫌みですか」

 振り返れば、レナスがキアラに微笑んでいる。

「なかなかいいセンスね、あの男」

「女性とドレスは見慣れているのでしょう」

 返した言葉に、レナスが笑みを濃くする。

「でも、あんたには相当手こずってると見える」

「自分は女の範疇には入らないでしょうからね」

「そう悲観しないの。本当にかわいかったのよ、かわいすぎて一瞬あんただってわからなかった」

 ボートでのことを言っているのだろう。

「で、どうだった? ドレスを着て王子と歩いた感想は?」

 唐突な問いかけに、キアラはロッカーを乱暴に閉めることで答える。

「そう怒んないの。前回のデートよりはだいぶ進歩したじゃない」

「あれはデートではありません」

「でも二人きりだった」

「行きがかり上そうなっただけです」

「でも、二人きりだった」

 にやりと笑われ、キアラはレナスから視線を外す。

「で、ご感想は?」

「…エスコートされるのが、難しかったです」

 仕方なしに答えた直後、響いたのはレナスが吹き出した音だ。

 むっとして彼女を見れば、腹を抱えてしゃがみ込んでいる。

「隊長が聞くから答えたんですよ!」

「いや、予想はしていたが、あんたホントおもしろい!」

「どこかですか!」

「エスコートされるのが、難しいってあんた…」

「な、なれないからです!ドレスとか、ヒールとかはじめてだし、やたらと、手とか差し出されるし……」

「それが普通だっつーの」

「私にとっては普通じゃないんです!」

 思わず怒鳴れば、レナスがまた爆笑した。

「あの男も苦労するだろうなぁ。一から手取り足取りおしえなきゃならないなんて」

「もうありませんから! こういう事案は!」

「事案言うな。それにあんただってまんざらじゃないくせに」

「でもあっちは……」

 言ってしまってから、口を滑らせたことにキアラは気づく。

 だが撤回するまもなく、レナスが彼女を励ますように肩を叩いた。

「安心しなさい。ああいう堅物ほど、あんたみたいな女っ気の無い奴にコロッと落ちるもんよ」

「フォローですかそれは!」

 当たり前だとうなずいてから、レナスは荒ぶる部下の頭をクシャクシャとなでた。

「あんたはもう少し自分の気持ちに素直になりなさい」

「私はいつも自分の心に正直に生きています。だってそれが……」

「あんたの騎士道、だから?」

 うなずけば、レナスは笑みを苦笑に変える。

「それに、いまさら女らしさが身に付くとは思いません」

「女らしさは身に付くものじゃなく、すでにあんたの中にあんのよ。そしてそれは、好きな男と一緒にいれば自然と表に出てくる」

「自然と……」

「ということで、ヴィンセントの逃がさないようにね。あんただって、女らしくなりたいとは思っているんでしょ?」

「でも騎士らしくあることが、自分にとっては一番で」

「女らしくなったところで、騎士としての品格が失われる訳じゃない。私を見なさいよ、女としても一流、騎士としても一流じゃない」

「…そうですね」

「今、間があった」

「いえ、隊長は私の目標です」

「なら恋をしなさい。そして恋に生きなさい」

「でも自分は仕事の方が……」

「安心しなさい、うちの騎士団は恋愛を推奨している」

「それは団長がタラシだからでしょう」

 呆れて言えば、レナスが思い出したようにぽんと手を打つ。

「そういえば、うちの団長とヴィート王子の関係ヴィンセントは知ってんの?」

「知らないみたいでしたよ。伝えておきますか?」

「デリケートな問題だから、私が伝えておく。それよりあんたには、他に伝えることがあるでしょ? 愛とか色々」

「ないです! なんにも!」

「というわけで、はいこれ。恋愛指南書」

 といって、どこからか取り出したのは派手な表紙の本。

『これを読めば、あこがれの殿方からのキスやお姫様だっこも夢じゃない!』とふざけた帯のついそれを半ば押しつけるように渡し、レナスは笑う。

「じゃ、がんばれ」

 笑いながら、更衣室を出て行くレナス。

 その声にいらだち、キアラは手にした本を床に投げつけようとして腕を振り上げた。

 だがそのまま、キアラはしばし動きを止める。

「…でも、上官からもらった物を、捨てるのは騎士道に反するし」

 と振り上げた腕をおろし、今度はきっかり一分、キアラは本と見つめ合う。

「…今度返そう。今度」

 意味のない言い訳を口にした後、結局キアラはロッカーの奥にそれをしまったのだった。


※8/3誤字修正致しました。(ご指摘ありがとうございました)

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