ShortEpisode02-1 変わらぬ二人
昨日レナスの言葉に思わず言い返したのは、別にデートが嫌だったわけではない。
ただ、こうなることがわかっていたからだ。
「……目覚ましくらいかけろよ」
13時の鐘の音を聞きながら、ヒューズが眺めていたのは寝室で爆睡するレナスである。
集合時間になっても来る気配を見せず、電話にもでない彼女を心配して家まで来れば、予想通り彼女はまだ寝ていた。
お互い、カルチョ・ストーリコの事件以来休みもなく、特にレナスは怪我もあり疲れがたまっている様子だった。
そんな彼女がお昼に起きるなんてあり得ない。いつもなら夕方まで寝ているのが普通だ。
それでも仕事が絡んでいるので淡い期待を抱いていたのだが、案の定彼女は爆睡である。
呆れつつレナスに近づいたヒューズは、彼女の側に膝をつきその頬を軽くつねる。
「おい、今何時だと思ってる」
「…あと5分」
「もう1時だぞ」
ヒューズのつぶやきにようやくレナスが目を開け、そして間近に迫るヒューズの顔を殴り飛ばした。
「何でいるのよ!」
「昨日のことも覚えてないのかお前は!」
「しまった、デート!」
寝癖のついた頭をかきながら、レナスは体を小さくする。
「まあ、予想はしてたから良いけどな」
「ごめん、目覚ましかけたんだけど」
「そこで大破してるのが、もしかして目覚ましか?」
レナスがはたき落としてと思われる時計の残骸を枕元に起き、それからヒューズは髪と共に乱れている顔の包帯に触れる。
「それ直すから、とりあえず着替えろ」
「実はその、昨日お風呂に入る前に寝ちゃって…」
「そんなことだろうと思ってお湯張ってあるから」
「あ、まずい! 服!」
「床に落ちてる奴は洗濯機に放り込んだ。渇くまではとりあえず隊服でもきてろ」
「……なんか、ごめん」
「いつものことだろう」
シーツをかぶったまま、ズルズルとベッドから立ち上がるレナス。
体を隠しながら風呂場に向かったところ、あられのない格好で寝ている自覚はでてきたようだ。
それに一安心しつつ、ヒューズは荒れ放題の部屋をぐるりと見回す。
とりあえず人の住める部屋にしておかないとまずかろう。
主にレナスが散らかしているのを知っているヒューズは、彼女のいぬ間にと袖をまくった。