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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
□隊長達の葛藤編□
123/139

ShortEpisode02-1 変わらぬ二人

 昨日レナスの言葉に思わず言い返したのは、別にデートが嫌だったわけではない。

 ただ、こうなることがわかっていたからだ。

「……目覚ましくらいかけろよ」

 13時の鐘の音を聞きながら、ヒューズが眺めていたのは寝室で爆睡するレナスである。

 集合時間になっても来る気配を見せず、電話にもでない彼女を心配して家まで来れば、予想通り彼女はまだ寝ていた。

 お互い、カルチョ・ストーリコの事件以来休みもなく、特にレナスは怪我もあり疲れがたまっている様子だった。

 そんな彼女がお昼に起きるなんてあり得ない。いつもなら夕方まで寝ているのが普通だ。

 それでも仕事が絡んでいるので淡い期待を抱いていたのだが、案の定彼女は爆睡である。

 呆れつつレナスに近づいたヒューズは、彼女の側に膝をつきその頬を軽くつねる。

「おい、今何時だと思ってる」

「…あと5分」

「もう1時だぞ」

 ヒューズのつぶやきにようやくレナスが目を開け、そして間近に迫るヒューズの顔を殴り飛ばした。

「何でいるのよ!」

「昨日のことも覚えてないのかお前は!」

「しまった、デート!」

 寝癖のついた頭をかきながら、レナスは体を小さくする。

「まあ、予想はしてたから良いけどな」

「ごめん、目覚ましかけたんだけど」

「そこで大破してるのが、もしかして目覚ましか?」

 レナスがはたき落としてと思われる時計の残骸を枕元に起き、それからヒューズは髪と共に乱れている顔の包帯に触れる。

「それ直すから、とりあえず着替えろ」

「実はその、昨日お風呂に入る前に寝ちゃって…」

「そんなことだろうと思ってお湯張ってあるから」

「あ、まずい! 服!」

「床に落ちてる奴は洗濯機に放り込んだ。渇くまではとりあえず隊服でもきてろ」

「……なんか、ごめん」

「いつものことだろう」

 シーツをかぶったまま、ズルズルとベッドから立ち上がるレナス。

 体を隠しながら風呂場に向かったところ、あられのない格好で寝ている自覚はでてきたようだ。

 それに一安心しつつ、ヒューズは荒れ放題の部屋をぐるりと見回す。

 とりあえず人の住める部屋にしておかないとまずかろう。

 主にレナスが散らかしているのを知っているヒューズは、彼女のいぬ間にと袖をまくった。

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