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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
□隊長達の葛藤編□
122/139

ShortEpisode01-1 初デートには裏がある

「カップルばかりを狙う通り魔ねぇ」

 ヴィートから渡された新聞を読みながら、レナスは不満そうな顔で団長室のソファーに身を沈める。

「ここ2日で8件も被害が出てる上に、どうも様子がおかしくてな。だからここは、うちの最強カップルに囮になって貰おうって思った訳よ」

「色々突っ込みたいところはあるが、とりあえず話だけは聞いてやる」

 ヴィートの説明に、呆れつつもそう告げるのは勿論ヒューズだ。

「どの事案も基本的には女性側が小型のナイフで斬りつけられている。傷自体はかすり傷みたいなもんだが、何故だか傷つけられた女性達は皆昏睡状態らしい」

「全員か?」

「ああ。命に別状はないらしいが、意識がないまま眠り続けてる」

 まるで眠り姫みたいだとこぼしたのはレナス。彼女は持っていた新聞を畳むと、不満そうな顔でヴィートを見上げる。

「その状況を知っておきながら、あえて私を囮に使うつもり?」

「お前は眠り姫って柄じゃないだろう? それにお前等がくっついたことは街中の噂になってるし、まさか囮捜査でイチャイチャしているとは思うまい」

 それでも決めかねていると、ヴィートがさらりと賄賂をちらつかせる。

「引き受けてくれるなら。明日からの休み、3連休にしてやってもいい」

 そしてその賄賂に、見事に食いついたのはレナスである。

「明日、正午に指輪買った店の前に集合ね」

「勝手に決めるなよ!」

「ちなみに、デート中の費用は経費で落ちる?」

「飯代くらいはだしてやる」

「聞けよ俺の話!」

「じゃあ明日!」

 そういうと、レナスは意気揚々と部屋を出て行く。

「だから聞けって……」

「良いじゃないか、急がしくてデート出来てなかったんだろう?」

 むしろ空気の読める俺を褒めろと胸を張るヴィートに、ヒューズは顔をしかめるばかりだ。

「っていうか、今更どうやってデートに誘えばわからないって顔してたじゃないかお前」

「否定はしねぇけど」

「もしかして、自分で誘いたかったとか?」

 ヒューズの顔をのぞき込むヴィートに苛つきつつも、ここで感情的になったら負けなのはわかっている。

「得体の知れない奴とかち合わせたくねぇだけだ。あいつはまだ、片目になれてない」

 ヒューズのつぶやきに、ようやくヴィートが真面目な表情に戻る。

「傷、あんまり良くないのか?」

「痛みも長引いてるし、それに視界が悪い生活に相当疲れてるみたいだ。だから今はデートより、ゆっくりさせてやりたかった」

「相変わらず、無駄に気づかい屋だなぁお前は」

「無駄は余計だ」

「けどお前が側にいて、レナスが傷つくようなことがあるのか?」

「ない」

 言い切るヒューズに、ヴィートは感動したと笑いながら彼の肩を抱く。

「いやー、恋の自覚って甘酸っぱくていいね!」

「お前のそう言うところ、殺したいくらい腹立つ」

「ともかく頼むな! デートのついでで良いからさ」

 ついでで出来る仕事とは思えなかったが、レナス同様この男もまた話を聞かない人間だ。

「善処する」

 肩に置かれたままの腕を引きはがし、ヒューズはため息を重ねた。

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