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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
□隊長達の葛藤編□
121/139

ShortEpisode01-0 望んだ言葉と望まぬ説教

『奇跡』

 いつもは着たまま帰る隊服を鞄にしまい、おめかしをして意気揚々と隊室を出て行く部下達を見つめながら、レナスの脳裏をよぎった言葉はそれだった。

 彼女たちの今夜の予定は勿論デート。

 ガリレオ騎士団の余り物と称される第4小隊に春が訪れたのは、1週間ほど前、カルチョ・ストーリコの舞踏会に、警備として参加したのがきっかけだった。

 彼女たちの華麗な戦いぶりを見初めた男達の熱烈なアプローチに一人また一人と相手を見つけ、今では隊の殆どが彼氏持ちという状況である。

 故に就業時間を迎えるやいなや隊室から人は消え、ただ二人残っているのは隊長のレナスと副隊長のキアラだけだ。

「すいません、私もそろそろ」

 そしてその片割れのキアラも、おめかしはしていないがどこかそわそわした顔でレナスを向ける。

「今日は帰りが遅くなると思うので、先に寝てて下さい」

「むしろ、あんたはそろそろ朝帰りをしても良い時期だと思うけど?」

 真っ赤になって慌てるキアラに冗談だと笑って、それからレナスは深く椅子に腰を下ろす。

 そうしてついに一人になり、そこでレナスは自分の薬指を見た。

「っていうか、これおかしくない?」

 恋人を見つけデートに挑む部下達。それを見送る自分の指には、婚約指輪が光っている。

 なのに自分には今夜の予定がない。というか、この1週間何のイベントもなかった。

「あいつ、本当にただ買っただけのつもり何じゃ…」

 思わず腕を組んだそのとき、開くことがないと思っていた隊室の扉が唐突に開いた。

 そこから顔を出したのはレナスの指輪を贈った張本人であるヒューズ。

 彼は人気のない隊室を見回し、それから暇そうに座っているレナスに目を向けた。

「どうしたの?」

 これはもしかしたらと期待を込めて声を上げれば、ヒューズは書類の束を手に隊室に入ってくる。

 その時点で既に嫌な予感がしたが、それでもと身構えればヒューズが怪訝な顔でレナスを見下ろした。

「お前なぁ、いい加減報告書くらいちゃんと書けよ」

 案の定、彼が持ってきたのは仕事の書類らしい。

「そんなことか…」

「そんな事じゃねぇだろ! 支離滅裂だし、字は汚たねぇし、サインはねぇし!」

「字が汚いのは前からでしょ!」

「開き直るな! 自覚してるならちゃんと書けちゃんと!」

 言いつつ目の前に広げられる書類に、レナスはふくれ面である。

「私もう帰るんだけど」

「とりあえず、中身は直したからサインだけしろ」

「こんなに?」

「たかが5枚だろ、すぐやれ」

「なんか、そう言う気分じゃない」

「お前の所為で残業してる俺に、良くそう言うこと言えるな」

「別に直して何て頼んでないし」

「なら自分でやるのか?」

「やんないけど」

 渋々ペンを手に取り、レナスは書類にやる気のない文字でサインをいれていく。

「……ねえ」

「今度は何だ?」

「みんなデートに行っちゃった」

「他の奴らはちゃんと仕事してるからな」

 そう言う意味じゃないと怒鳴り、レナスは乱暴にサインを書き入れる。

「おかしいと思わないの?」

「何が?」

「周り全員デートなのに、私だけここにいるのよ」

「だから仕事を……」

「あんたが誘わないからでしょうが!」

 椅子を倒す勢いで立ち上がり、レナスはヒューズの胸ぐらをつかむ。

「忙しいのは認めるけど、これ貰ったきり一度も恋人っぽい事してない」

 薬指を突き出すレナスに、ヒューズが僅かにたじろぐ。

「あんたも明日休みなんでしょ! なら言うこと言いなさいよ!」

 半ば脅迫じみた物言いで首を絞められ、ヒューズは息苦しさに咳き込む。

「とりあえず、息が出来ない…」

「んなことより!」

 そう怒鳴った直後、ヒューズが言葉を重ねるよりも早く唐突に隊室の扉が開かれる。

「お前等、デートとかする予定ない?」

 開かれた扉の向こうから、記念すべき初デートの誘い文句を横取りしたのは、騎士団長のヴィートだった。

こちらは、本編から少し外れたショートエピソードです。

いつも以上にラブコメ度&糖度が高めになる予定ですので、苦手な方はお気をつけ下さい。

メインストーリーとリンクはしていますが、基本的にラブコメ&ギャグですので(本編もギャグですが)、飛ばして頂いても構いません。

気に入ってくださった方は、引き続きお楽しみ下さい^^

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