Episode06-1 異変と相談
何かがおかしい。
明らかにおかしい。
けれどそれを、なぜおかしいと感じるのかがわからない。
そんな奇妙な異変に、最初に気付いたのはキアラであった。
異変が始まったのは5日前。
しかしその異変はとても形容しがたい物で、それに気付いたきっかけも非常におかしなものだった。
でも異変は何か悪いことが起きる前触れのようで、異変に気付いてから5日目の今日、キアラの不安は限界に達した。
もはや一人で背負うには限界だと感じたのだキアラが、相談に相手に選んだのは恋人。
カルチョ・ストーリコの決勝を明後日に控えた恋人は、騎士団の仕事など色々と忙しいようだったが、彼女の電話にむしろ喜び、すぐさま会ってくれると言う。
だが外に出ると色々と面倒なそうなので、彼が会う場所に選んだのはアルベールの部屋だった。
「何でアルベール様の部屋なんですか?」
「俺の家は嫌かと思って」
「どこでも気にしませんよ」
「でも使用人も、誰もいないんだぞ」
「別にお茶とかはいりません」
「そう言う問題じゃない」
「あ、別にお菓子もいりませんよ。相談したらすぐ帰るつもりですし」
お構いなくと言い切れば、受話器の向こうでヴィンセントが大きく息を吐く。
「君は俺を悩ませる天才だな」
「だからお気遣い無くと言ってるじゃありませんか」
「君はアレだろう。キスしたら子どもが出来るとか思ってる口だろう」
「失敬ですね。性交渉で出来ることくらい知っています」
「些細なことで恥じらうくせに、意外とそう言うところは男らしいんだな」
意味がわかりませんと唸れば、ヴィンセントはため息を苦笑に変えた。
「俺の言葉の意味に気付くまでは、俺の家には上げられないな」
だからアルベールの部屋でとつげられ、キアラは渋々受話器を置いた。