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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■隊長達の絆編■
103/139

Episode05-2 割に合わない団長命令

「10時から取材。12時から写真撮影。そのあと5時までサッカーの練習で、そこでもまた取材だから」

「…は?」

「だから10時から…」

「新しい暗号か? それとも内密な指令?」

 ガリレオ騎士団の事務室前で、唐突にヒューズを呼び止めたのだヴィートだ。

 それだけで十分面倒なのに、彼がつげた言葉の意味がまったくわからず、ヒューズは不安そうに眉を寄せる。

 直後、違うと声が飛んできたのは事務室の中からだった。

「…ヒューズちゃんの取材をしたいって、新聞社や雑誌社から電話が沢山来てるのよ」

 そう言ったのは事務のおばちゃん達。その手の話題が好きな彼女たちは事務室を飛び出し、ヒューズの肩をねぎらうように叩く。

「待ってくれ、取材って言うのは…そういう取材なのか?」

「他に何がある」

 ヴィートの言葉に思わず、ヒューズは目の前が真っ白になった。

「勿論全てうけたからな! これは、うちの騎士団を広く知らしめる良いチャンスだ! 主に金持ちに!」

「俺はやらない!」

「やれ、団長命令だ」

 それでも食い下がれば、ヴィートはヒューズの肩を掴み、人気のない廊下の隅に引きずってくる。

「うちの資金繰りが危ないの知ってるだろう! あの手の雑誌は貴族のお嬢さんたちに人気だし、そこに火がつけば、親ばかなパーパさんたちが、ウチに出資してくれるかもしれない!」

「そんなうまい話が…」

「実際ガラハド騎士団は、ヴィンセントが入団してから貴族たちからの融資が20%アップした」

「俺にそんな効果があるわけ無いだろう」

「大丈夫、散髪代はだしてやる」

「それだけでどうにかなるか!」

「なる。安心しろ、なる!」

 反論する隙も与えず、ヴィートは命令だと繰り返した。

 もはやこちらの話を聞く気がないのは明白で、仕方なくヒューズは交換条件があると譲歩した。

「来月から、一人騎士を雇って欲しい」

「お前からの紹介なんて珍しいな」

 つまり訳ありかと尋ねられ、ヒューズは頷く。

「俺の…昔の同業者だと言えばわかるか」

「確かに訳ありだな」

「…国王失踪事件の際に戦ったあの魔法使い、どうやら世界的な指名手配班らしくてな」

「その調査で来るって事か……」

「ああ」

「やばい奴なのか?」

「妙な収集癖があるらしくてな」

 悪趣味な物だろうと言い当てるヴィートにヒューズは頷く。

「あいつが訪れた国では、特異種族が次々と消えているらしい」

「そう言えば先月、行方不明者の捜索願がいくつか出ていたな」

「結局見つかってない奴だろう? たぶんあいつが関係してる」

「あの魔法使い、ここにまた戻ってくるのか?」

「今はヴェネチア共和国の方で忙しくしてるみたいだが、時間の問題だろう」

「この夏も忙しくなりそうだな」

「そのためにも奴が欲しい。性格は少々難があるが、腕は立つからな」

「いいだろう。お前が信頼してる男なら、俺も信頼する」

「繰り返すが、性格は難がある」

「難がない騎士がここにいるか?」

「……いない」

「なら問題ないだろう」

 違う意味では問題有りだと持ったが、その筆頭がヴィートなので指摘する気もおきない。

「じゃあ変わりに、体張って頑張ってきてくれよ」

「取材だけだよな?」

「…カルチョ・ストーリコが荒れるのはこれからが本番だろう?」

 ヴィートの不敵な笑みに、ヒューズは彼が抱くもう一つのねらいに気がついた。

「割にあわねぇなぁ」

「その分昨日奢ってやっただろう」

 主にお前のお姫様にとつげられて、ヒューズはもう一つの問題に気がついた。

「本当に割にあわねぇ」

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