Episode05-1 勝利の恩恵は困惑の始まり
「みてよほら、僕が一面!」
自分が一面を飾る新聞を手に、アルベールがレナスの元へとやってきたのは試合の翌日のことであった。
「…聞こえてるから、もう少し小さな声でお願い」
無駄に元気なアルベールとは対照的に、レナスの顔色は悪い。原因は勿論二日酔いだ。
ヴィートのおごりだというので調子に乗り、昨日はいつもの3倍も飲んでしまった。
案の定昨晩の記憶はほとんど無く、気がついたらよりにもよって騎士団の仮眠室で爆睡していた。
お陰で頭痛はいつもより酷く、アルベールの声は酷くこたえる。
「あとこの雑誌と、これとこれにも写真が載ってるんだ」
さあ僕を見て!と、子犬のようにまとわりつくアルベールに根負けし、レナスは彼が手にする雑誌を受け取る。
彼が持っているのは若者向けのゴシップ誌だ。
ステイツや英国の映画スターを主に取り扱うが、見てくれの良い王子などが紙面を飾る事も多い。
特にヴィンセントはウケが良いらしく、アルベール以上に取り上げられる事が多かった。
今回もアルベール以上に紙面を割いているのはヴィンセント。キアラが見たらまたいじけるなと苦笑しつつ眺めていたが、とある写真の前でレナスは唐突に息をのむ。
理由は、ヴィンセントの写真の横に、最も加わって欲しくない男の姿が写っていたからだ。
「…なんでヒューズがいるのよ」
「それより僕の…」
「なんでだってきいてんの!」
思わずアルベールを締め上げれば、僕にわかるわけ無いだろうと泣き言が帰ってくる。
「…でもたかだか1ページだしさ。ちょっとした気まぐれみたいなもんだよ」
昨日は3人の連係プレイで勝ったような物だしとアルベールがつげれば、レナスは渋々彼を放す。
「あ、でも誤解しないでよ! この雑誌の所為で僕の所に女の子が沢山来ても、僕の心はレナスさんの物だから」
「…女の子、くるんだ」
その一言をアルベールは自分への嫉妬だと受け取り上機嫌になる。
だが彼女が見ていたのは、もちろん彼の写真ではなかった。