若さを保つ薬
若さを保つ薬、お売りします。
その看板の前で私はかれこれ10分ほど、迷っている。
若さを保つ?
それは永遠の美をそのままにってこと?
私は自分の容姿を大変気に入っている。
私は自分の良いところは顔やスタイルしかないと思っているほどだ。
私はそこそこの人間。
運動も勉強もそこそこだった。
人に良いと言われるのは容姿だけ。
迷ったが、若さを保つという言葉に惹かれて私は看板の奥に入った。
そして私は若さを保つ薬を得て、今持っている全ての物を失った。
よくわからないが本当に全ての物。
車やバックや財布や…私の所有物が消えた。
今、体に身につけている物(服や靴や指輪)以外は私のもとからなくなっていた。
どういうシステムなのだろう?理解できないが、若さを保つ薬の代償は大きいと思った。
私は催眠術や呪いにかかっていたのかもしれない。
どうしても若さを保つ薬を手に入れる!ということで頭がいっぱいになって他のことが考えられなかった。
その日の出来事は全て一瞬で夢のような出来事だった。
手の中にあるのは若さを保つ薬だけ。
私は迷わず薬を飲んだ。
薬を飲んで数時間経ったが何も変わらない。
即効性のある薬ではないのかも…
その後、35年。
私は普通の人生を生きている。
結婚して、子どもが2人、幸せだ。
幸せだけど、60歳の私は若さを保つ薬を飲んだ25歳の容姿のまま、違和感はある。
旦那も、子どもも歳をとるから。
部屋に飾ってある家族写真の私に私が違和感を感じている。
そもそも若さを保つとはなんだろう?
若さとは年齢なのか?
保つとはずっと変わらないことなのか?
私の体の細胞は老化しないということなのか?
それは良いことなのだろうか…
その後さらに40年が経った。
私は100歳だけど多分、容姿は25歳のまま。
ここ数年いろいろあった。
孫の面倒をみて、旦那を看取って、今は子どもの介護をしている。
もう若さはいらないな。
そう思っても私は25歳のまま。
私が今欲しいのは少しずつ老いること。
この世でずっと変わらないでいることは苦しいことなのかもしれない。
おまけ。
散歩していたら…老いるオイルが売っていた。
オイルは2種類。
顔&髪用と食用。塗って、食べたらあら不思議100歳の私の出来上がり。
という夢をみた。
起きたら100歳の私が鏡の中にいた。




