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EP.38  大蛇と黒豹

 

 ―――へ、蛇、蛇なのに羽がある!!


 周りにある木々の中でも一際大きな巨木でさえその存在をかき消されてしまいそうになるほど、その蛇のようなモンスターは巨大だった。背中部分には何故か大きな羽が生えていたが、蛇の羽であるためか、それは醜い灰色で鋭さを持っている。まるで腕を広げるように羽を広げ威嚇を始めたそのモンスターの鋭い瞳は、紗和にではなく、彼女の腕の中に居る三匹に向けられていた。 


 ―――ちょ、あの目明らかにこの子達狙ってる目よね!?


 確実に親が子供を心配する目ではない。


 何も知らずに暢気に眠る三匹を隠すように紗和は体を斜めに動かした。

 そこで羽の生えた大蛇は黄色とオレンジという奇抜な色の体をくねらせ始めた。標的を紗和に変えようとしているらしい。


 体が妙な緊張感に包まれ、体から汗が流れ出す。


 一食触発の雰囲気が、一人と一匹を包み込んだ。敵の出現に気づかず、眠りの世界から戻ってこようとすらしない三匹のことはあえて数字には入れないで、紗和は息をつめた。

 紗和を探るように見下ろしてくる大蛇と、その瞳を見つめながら助けを呼ぶかどうか迷う少女。

 どちらにしろ、腕を使えず、そして蛇より明らかに小柄な人間の少女の方が不利なのは明白だ。どちらかが最初に行動に移しても、確実紗和の死は決定したようなもの。


 蛇が長い舌を出し入れして威嚇を始めた。

 鼻息が荒くなり、蛇が息を吐き出すたびに紗和の髪が後方に流れた。

 心臓がバンバンとうるさい。自分の耳にまで響いてくるその音を間近で聞いているにも関わらず、まったく目を覚まそうとしない三匹を見て、意外にそんなに大きく鳴っているわけでもないのかと、おかしな考えさえ持ちそうになった時、大蛇が動いた。

 一直線にその体を紗和の方に伸ばしてくる。


 「だれかぁぁぁぁぁぁ」


 助けを呼んでも間に合わないと思いつつも、紗和の喉から、高い叫び声が飛び出した。

 もうだめだと思ったとき、再びなにか大きなものが紗和の前に現れ、そしてもう少しで紗和に触れそうになった大蛇の頭に飛びかかる。


 「へっ?」


 目の前でいきなり始まった大乱闘に、毒気を抜かれた紗和は、思わず地面に座り込んでしまった。体中の力が抜けてしまったというのに、腕の三匹だけはきっちり抱きかかえている。


 いきなり現れた、大蛇と引けをとらない巨大な生き物。


 蛇と戦うその姿はまるで紗和を庇っているようにも見え、そこで気がついた。

 その巨大な黒豹のような生き物の肌は全体を鱗で覆われていたのだ。その背には大きなドラゴンのような羽が生えており、そしてその尻尾は長くて鋭い。


 ―――お、親?


 迷子の幼い三匹の特徴をそれぞれ持つその生き物は、大蛇の首に喰らいついては鋭い爪を立てる。けれど大蛇も負けては居ない。

 長い体型を生かして、敵を羽交い絞めにしていた。

 こんなに大きな生き物達が自分の前で取っ組み合いをしている。

 

 こんなの、映画でしか知らない。知りたくなかった。

 逃げなければいけないのに、体が動かない。


 「ギャンッ!!」


 不意に親らしき黒豹が紗和のすぐ前の地面に叩きつけられるように飛ばされてきた。


 「!」


 体が黒いため気がつかなかったが、その体は傷だらけで、まるでこの大蛇と戦う前にもどこかで誰かと争ってきたような形跡がある。

 黄色のその瞳が紗和を見た。

 一つは血が流れて使えないらしい。ただ一つあるその瞳と、紗和の瞳が出会った。


 『……子供達……を』


 大蛇が飛んでくる。


 力を振り絞って自分の頭上を通過しようとした敵に噛み付いた黒豹のような生き物は、思いっきりその巨体を横倒しになぎ倒した。


 「「サワ様!?」」


 エドガーとアーヴィンの声が聞こえた。続いて聞こえる息を呑むような音。

 後ろを振り返れば、目の前で行われるモンスター達の戦闘に瞬くことすら忘れたような三人の側近達の姿があった。

 フランがいち早く我に返って紗和の目の前に守るように立った。

 剣を抜き、身構える。仮面が邪魔であろうはずなのに、それを取ろうとしないのは、すぐ後ろに居る紗和のことを考慮しての事だろうか。


 再び、黒豹の体が空を舞った。


 大蛇の狙いは紗和の腕の中に居る三匹であるのは明白で、その瞳は彼らに向けられている。それを拒むように、親であるそのモンスターはよろけながら、何度も何度も大蛇の目の前に立っては大蛇に投げ飛ばされ宙を舞う。


 「一体なにが?」


 いまだ状況がわかっていないエドガーは、剣を構えながらそれでもどうにか状況を掴もうと必死だった。

 アーヴィンは紗和を抱きかかえるようにその肩に腕を回し、それでも銃口をモンスター達に向けたまま警戒の雰囲気は緩めない。


 いつ何が起こるかわからない。今は羽のある大蛇と対等に渡り合える黒豹のような生き物が居るから良いものを、その巨大な黒豹でさえ、いつ力尽きてもいいような状況だ。

 迫力に飲まれてしまっている人間達に、果たして黒豹と同じような真似が出来るかどうか怪しいところである。


 そしてその時は訪れた。


 「「「「!!」」」」


 黒豹が投げ出され、そしてそのまま動かなくなった。




 目の前を遮るものがなくなった大蛇の充血した恐ろしい目が、ギラリと紗和達を射抜いた。



登場人物の一人、エドガーをオリバーと表記していたのを訂正いたしました。読者の皆様を混乱させてしまい、申し訳ありませんでした。

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