Dieser Satz ist erst der Anfang.
エピソードタイトルであるDieser Satz ist erst der Anfang.の日本語訳は「この文章はただの始まりに過ぎない」という意味を持ちます。
25.9.1 加筆修正しております。
一本の動画が、某動画投稿サイトにアップされた。投稿者は匿名のアカウント。
撮影は深夜、人気のない路地裏。
スマートフォンを握る手は震えてしまうのか映像の手ぶれはひどく、撮影者の息を呑むような荒い呼吸が混じっていた。
画面には、街灯に照らされた狭い歩道が映っている。
そこに歩いてくるのは、ひとりの男性。酒に酔っているのか、ふらふらと足元は覚束ない。
撮影者は物陰からそっと覗き込むようにしてカメラを携えているのだが、指先の震えがレンズを通して伝わってくる。
その時――。視界の端に、奇妙な「影」が滲むように現れた。
人型をしていることはわかるのだが、カメラは焦点を合わせられず、影の輪郭だけがノイズのように乱れはっきりと映らない。
そして男の肩に影の腕が触れた次の瞬間――。
男の身体は液体のように崩れ、肉や骨、血液も、一瞬でどろりと溶けおちていく。
残ったものは、衣服や靴、アクセサリーやコンタクトレンズといった装着品。手に持っていたであろう、スマートフォンや鞄といった手持ち品がその場に散乱する。
崩れた肉体はアスファルトに広がる間もなく、湯気のような白い煙と共に気化していく。
数秒後には、跡形も残らず男の存在だけが忽然と姿を消した。
映像はそこで途切れる――。
動画は投稿からものの数時間で、再生数を何十万と伸ばしていく。
「映像の作り雑すぎ」
「逆にどうやって作ったんだよこれ」
「低予算ホラーの宣伝か?」
「いやいやこれマジだろ……。やばくね?」
「服だけ残るとか草」
「再現VTRにしてもクオリティ高すぎ」
「まあ俺には関係ないし、次の動画いこ」
コメント欄は嘲笑と興奮で溢れかえり、人々は競い合うようにして拡散していった。不気味さを指摘する声すら「怖いけれど面白い」という軽薄なものにかき消されてしまう。
一時、SNSの海を騒がせたその動画を誰も本気で恐れはしない。自分には関係ないと高を括り、画面越しにそれを消費するだけ。
SNSとはソーシャルネットワーキングサービスの略で、インターネット上で人々が交流し、情報を共有するためのプラットフォームのことである。
だがこれらの普及により、誤報やデマといった流言飛語も飛び交うようになった。
そしてそれと同時に生成的人工知能が発展した現代において、巧妙な所謂フェイク動画というものは世に横行している。
自らで情報を精査し、取捨選択を行うことが当たり前の時代――。
この動画もその類に漏れず、さながら映画を観ているような感覚に近いのかもしれない。
それくらい、この世界は娯楽にあふれている。
誰かの死は「ネタ」であり、悲劇すら楽しみに変えられてしまう。
恐怖を笑い飛ばし、無関係を装う。画面を閉じてしまえば、忘れてしまえる。
この映像は正真正銘、本物であるが、画面の向こう側の人々がそれに気付くことはない。
現実に起こる惨劇すら数秒で「コンテンツ」へと変換されてしまい、自分に関係のない世界のどこかで起こっている悲劇を知ることもない。
膨大な数の情報の中に埋もれてしまう、一握りの真実。
――この世界には、特殊な力を持つものが存在する。
炎や、氷を操るもの。
ゼロの状態から、物質を創り出せるもの。
どんな怪我でも、忽ち治してしまうもの。
人を、幻覚の世界へと誘うもの。
彼らの出現には、一切の規則性がない――。
今から百年ほど前に突如として、世界各地で同時多発的に現れた能力者、通称「ギフト」
血筋や遺伝などは関係なく、能力は無作為に付与され、選ばれたものは、ある日突然ギフトとして覚醒する。
国内で最初に確認された覚醒者は、九十年前にまで遡り「雨を操る」ことができる男性だったと言われている。
大気と水分を支配し、小雨から――時に都市を覆うほどの豪雨を呼び寄せることができたといい、当時その能力は「神の使い」と崇められていた。
――だが、能力は決して万全の贈り物ではなかった。
ギフトには強い力がある反面、「サクリファイス」と呼ばれる代償が必要になる。
サクリファイスは小さなものから命に関わるものまで様々で、能力が強ければ強いほどに大きなものが必要になると言われている。
多少の使用では体に大きな影響を及ぼすことはないというが、長時間や高頻度の使用など、加減を間違えると重篤な状態に陥ることもある。
そしてそれは能力者ごとに異なり、時にその存在を呪いへと変えてしまう。
国内最初のギフトも日が経つにつれて、能力の制御は不安定になりやがて一度の暴走で街を水没させたと言われている。
彼の亡骸や能力の痕跡は一切確認されておらず、湖に沈んだ街が彼の眠る場所と伝えられ、彼はサクリファイスに苦しんだ末に「雨に溶けて消えた」と記録には残されていた。
だが稀に、サクリファイスの必要のないギフトも存在するという。
代償を支払うことなく力を振るい肉体も、精神も消費することはない。
だがそれは、本当に「代償が必要ない」のかあるいは、まだ代償が表に現れていないだけなのか。
現代の科学をもってしても、ギフトのサクリファイスについては解明されていない点が多く、その答えは判明していない。
人知を超えた能力を使用するのに、全く代償が必要ないというのは考えにくい。
その力がどこから来るのか、なぜ代償を伴うのか。
――誰一人としてその答えを知らず、ギフトにとってその能力は必ずしも救いになるわけではない。
世間ではギフトは稀な存在――。
表向きでは、ギフト保護の取り組みが進んでいると言われている。
だが実情はまだまだ仄暗い部分も多く、自身がギフトという事実を隠して生活しているものも少なくはない。そのため、実際の人数は報告されている一割以上多い可能性がある。
そして、そんな状況を利用しようとする者たちがいた。
表向きは医療研究機関であったり、社会的な支援団体を装いながら人体実験を繰り返し、より能力値の高いギフトを生み出そうとする組織「オメガ」
一部の失踪事件や未解決の行方不明などは、オメガに結び付けられているという説も存在する。
彼らの真の目的は「世界掌握」
ギフトを兵器として量産し、秩序を崩壊させ、この世界を混沌へと陥れること。
能力を付与する、ディナミス実験。
もともと持つ能力を強化する、エニスキシ実験。
捕らえられた人間に、薬剤を投与し非人道的な処置を施す。
これらの実験により、その多くは肉体の破壊や精神の崩壊をもたらし、成功例は極めて少ないとされる。
何も分からない小さな子を洗脳し、人工的に能力を与え感情を持たない人間兵器へと育て上げる。
実験には失敗も多く、後遺症を抱え失敗作と見做されれば廃棄される。
稀に生き残ることが出来たとしても、人工的に付与、強化された能力は扱いが難しく、苛烈な代償を伴うという。
その野望へ抗うために発足したのが「リヒト」である。
能力を持つギフトと彼らを支えようとする人々が集う、国家直属の秘密機関――。
正式な法制度の中では存在が隠蔽されていて、議事録にも残ることはない。
能力者の人権を守るため、秘密裏に任務を行い人体実験の被害者を一人でも多く救うために研鑽を積み、日々努力を重ねている。
リヒトには「光」「希望」などの意味が存在し、その言葉の通り彼らは希望の光を託された。
オメガは至る所に研究施設を持っていると言われているが、巧妙に偽装され病院や製薬会社などの姿で今も人々を欺き続けている。
リヒトが幾度も突き止めてきたものはあくまでその一部に過ぎず、組織の心臓とも呼べる場所へは、未だに誰一人として辿り着いたことはない――。
地下深くにあるという者や、海底に隠されているという者もいるが、それらはすべて憶測に過ぎず、真実を掴むことは出来ていない。
にも関わらず、オメガの思想に賛同する輩は後を絶たない。掲げる理想に惹かれた者たちは、自ら進んでオメガへと協力し、その闇をさらに深く肥大化させていった。
醜悪なのが幼いギフトや、能力覚醒をするかも分からない子供たちを金で売り買いする者たちだ。
人身売買や誘拐といった犯罪も横行し、子供の価値は「将来性」という名の札束で測られる。
近頃は、そのような非道な行いを生業にするような奴らまで出て来てしまった。
そしてそういったものに、一部の児童養護施設の人間も関与している可能性があるという。親がいない子は、実験体に向きやすい。
様々な理由により保護された子供の中から、適応しそうな条件の子供を見繕い、研究施設へと売り捌いて金を得る。
表向きは健全な児童養護施設を装っている事が多く、実情は簡単にはわからない。
保護と救済を謳いながら、その実態は未来を奪う檻でしかない。
世界を操ろうとする黒幕の影は未だにみえないが、必ずそこにあるはず――。
誰かが立ち上がらなければ、ギフトは永遠に危険に晒され続けることになる。だからこそリヒトはオメガの黒幕を暴き出し、必ず終わらせる。
ギフトが苦しむことのない世界をつくるために――。
「登場人物」
綴 所持能力は、物質形成。
ディナミス実験の被験体だった過去を持ち、数多の実験により能力を覚醒させられた。
かつては冷たい水槽の中で繰り返される壮絶な人体実験のために酷使され続け、肉体も精神も深く傷つけられていた。
その影響により軽度の洗脳状態にあり、自我を曖昧にしたまま命令に従うだけの存在になりかけていた。
そんな時、彼の世界に調という存在が現れる――。
それをきっかけにして、少しずつ自分という存在を取り戻していった。
「人を傷付ける」ことへ強い抵抗があり、それがたとえ自分を酷い目に合わせてきた者だとしても、それが変わることはない。
「人を傷付けるくらいなら、自分が傷付くほうがいい」といつも思っている。
能力によって創り出すものは、すべて強靭なチタンで構成される。
銃や剣など武器を創り出し、戦闘を行う。
サクリファイスは判明していないが、能力を使いすぎれば吐血、鼻血など体に大きな負荷が掛かり、命を削るような兆候が現れる。
全体的な運動能力は高いが、細身。
ふとした瞬間に捕まえていないと消えてなくなってしまいそうな儚げな雰囲気を漂わせながらも、人との関りを苦にせず柔らかな言葉で周りを包み込んでしまう。
一方で、どこか飄々とした態度の裏には、他者を守るために自分を犠牲にしてしまう危うさを抱えている。
人の感情への共感能力が常人以上に強く、その優しさゆえに仲間たちをときに心配させる存在。
だが彼の純粋さと優しさこそが、仲間を結びつける大きな支柱となっている。
調 所持能力は、氷結。
最年長にして、綴とは同い年。基礎体温は低め。
強力な能力を持ちながらも両親からは愛されず、ただ「力」だけに価値を見出されて育った。
やがて彼は両親の手によって施設へと売り渡され、人体実験の候補被験者となる。
そんな中で孤独を抱えていた彼は綴と出会い、その優しさや強さにふれることによって、凍りついた心にわずかな温度が戻り始め、少しずつ変化が生まれていく。
冷たさの裏には、愛されたいと願う純粋な心が隠されており、綴にとって必要不可欠な存在。
能力発動には対象物に触れておく必要があるが、手や足など体の部位に制限はない。
サクリファイスは、体温。
能力を酷使すると震え、手足の冷え、皮膚感覚の麻痺などの低体温症をおこす。
その為、夏場でもカイロなどの発熱体は必須。
その才能は「歴代でも指折りの逸材」と評されてきたが、本人はその言葉を嫌っていて、能力で評価されることを望まない。
厳格で完璧主義な性格。近寄りがたい雰囲気を放っているが、実際には情に厚く、年下の仲間たちを気にかける面倒見の良さを持つ。
仲間に料理を作り続けるうちに、いつしか大抵のものを作れるようになった。
その在り方は、年下の仲間たちにとって「安心できる兄」のような存在となっている。
桜 所持能力は、血花操術。
綴より十一歳年下。
彼にとって綴は親代わりで、人生における絶対的な存在。
血を媒介にし花びらとして、顕現させられる。硬度、サイズ共に変幻自在でその赤い花弁はとても幻想的であるが、その美しさからは想像もできないほどの鋭利さをもつ。
サクリファイスは、血液。
強力な能力であるが加減を間違えると、動悸やめまいといった貧血を起こしてしまう。
理論的には自分以外の血でも、一度自らの体に摂取すれば操作できるようになるのだが、潔癖の気質があるために殆どその手を使うことはない。
性格は甘えん坊で少し我儘。だがその愛嬌から、周囲に可愛がられることが多い。
純粋がゆえに無邪気な発言や行動が多く、周りに誤解を与えることも多いが、仲間たちにおいては憎めない可愛い子である。
綴を「親」として慕いながらも、いつか彼の背に並び立ちたいと願う、その姿は危うくも眩しい――。
燎 所持能力は、操炎。
リヒトの主戦力を担う。
炎を操ることができる。爆破を起こしたり、火球を飛ばす、炎の結界を張るなど炎の能力は汎用性も高いため、重宝されている。
だが、本人曰く炎の加減を制御するのが物凄く難しいとのことで、常に無自覚な緊張と自制を強いられている。
体格に恵まれ、リヒトの中で二番目に強いフィジカルを誇る。
サクリファイスは、酸素。
能力を行使しすぎれば体内の酸素濃度が下がり、頭痛や吐き気などの酸欠症状を引き起こし、自らを死地へと追い込む危うさを孕む。
幼い頃、体調不良をきっかけにしてギフトとして覚醒したが、その暴走により母を失うという深い傷を負った。
その際に綴と調により救われたことが、彼にとって大きな転機となる――。
当初は、自分の能力を使用することに強い抵抗があったが、仲間たちと過ごす中で少しずつ受け入れていき、今では欠かせない主戦力となっている。
強面な印象が強いが、実際は物静かで落ち着いた性格の持ち主。調が作ってくれる甘い物が好きという意外な一面もあり、そのギャップが親しみやすさに繋がっている。
表に出すことは少ないが、その胸の奥底には燃え盛るような情熱と仲間を守り抜く強い決意を秘めている。
葵 所持能力は、引力操作。
希少なサクリファイスのないタイプのギフト。
空間の歪みを生み出し、対象を引き寄せたり押し潰すだけでなく、歪んだ重力場を利用してテレポートやワープさえ可能とする。
まさに戦術の要ともいえる能力であるが、その強大さ故に制御は難しい。
幼い頃、育児放棄の末に捨てられ、施設へと引き取られる。だがその施設はオメガの息がかかったもので、人体実験の対象となる寸前だった。
絶望と虚無に支配され、感情を失いかけていたが本能的に本を手に取り、独学で文字や言葉を覚えることで辛うじて心を保っていた。
リヒト加入時の当初は生きることすら諦めていたが、仲間と過ごすことでその気持ちは少しずつなくなり、生きることへの希望を見つけていく。
性格は気が強く、少しひねくれた物言いはするが、困っている人を放ってはおけない優しさを隠し持つ。
小説を好み、一冊は必ず持ち歩いていて、言葉に救われてきた背景から表現力は豊か。
洋服にも興味を持ち、よく弥と一緒に買い物へ出かけているところを見かける。
和 所持能力は、治癒。
ギフトの中でも一二を争う程に珍しく、稀な治癒能力保持者。貴重な能力が知られてしまえば、命を狙われかねない。
そのためリヒトの司令塔でありながら、彼自身が戦闘に立つことは殆どない。
サクリファイスは、糖分。
能力を使いすぎれば急激な低血糖に見舞われるため、常に甘いものを持ち歩いている。(チョコレート、飴、ラムネ)
幼い頃から病弱で、十二歳の時に覚醒したことにより体調が安定した。だが同時に、その力を守ろうとした両親により家へと閉じ込められてしまう。
ある日抑えきれない思いによって家から逃げ出し、その先で綴と出会う。
その出会いによって、前を向いた彼は両親と向き合い「自由に生きる」道を選ぶ。
戦場で戦うことは少ないが、しっかりと訓練は積んでいる影の努力家。
空間識別能力に優れ、戦闘中は司令塔として仲間へ冷静な指示を送る。
また「知識は一生の財産」と信じ、常にタブレットデバイスを片手に学び続けている。
医学や数学、語学など、かつて病室で読みふけった数々の本が、今の彼を作っている。
基本的には真面目で落ち着いた性格をしているが、時折口が悪くなり、仲間を驚かせることもある。
几帳面さと気まぐれさを併せ持つ、少し不思議な人物。
悠 所持能力は、幻覚。
最年少、桜とは誕生日が十日違い。
美しい銀髪と神秘的な紫色の瞳を持ち、その姿は絵画の中から抜け出したかのように幻想的――。
だが同時にその髪と瞳は彼のサクリファイスでもある。両者ともに先天的なものではあるが、覚醒したのはリヒトに加入する少し前。
瞳の色素が薄い為に光や紫外線の影響を受けやすく、カラーレンズの眼鏡を常にかけている。
体の一部をブロックのように分解し、しゃぼん玉のように光を帯びた欠片を飛散させて、それへ触れたものに幻視や幻聴、幻臭といった幻覚を見せる。
その幻想的な能力は敵のみならず見る者を魅了するが、覚醒当初は五分しか維持できなかった。
しかし心身の成長と日々の訓練により今では五時間ほど持続させることが可能になった。
能力は非戦闘向きのために潜入調査任務を担当することが多いが、湊と燎の戦闘訓練へと参加するようになってからフィジカル面が大きく向上し、現在では前線に立つこともある。
小柄な体格を活かした小回りの利く動きと、綴が創り出した武器を手に戦うこともある。
かつては大人しい性格だったが、仲間と共に時を重ねるうちに元々の素直さもあって、徐々に天真爛漫な一面をみせるようになった。
幼少期の暗い過去から、人を信じることに今も少し苦手意識を抱いている。
ある日、調が任務先から連れ帰ってきたことにより仲間に加わった。そのときに貰ったマドレーヌの甘さを今も忘れられない。
湊 所持能力は、植物操生。
植物を自在に操り、急成長させることが出来る。足元から草木を生やしたり、種子から発芽させることも可能だが、体から生み出すわけではなく「成長」させるというものなので0を1には出来ない。
花の香りを使い相手を眠りへと誘ったり、毒草を体内で芽吹かせるような苛烈な戦法も取ることが出来る。
投げたり、エアガン(綴に頼んで作ってもらった特注品)に込めた種子を打って発芽させれば、即席のネットや拘束具としても使用でき、蔦による捕縛や移動に使ったりと応用範囲は広い。
サクリファイスは、水分。
無理をすればめまい、頭痛、吐き気などの水分不足による症状に襲われる。
ある施設で奴隷のように扱われ、酷使され続けていた。そこから逃げ出し、衰弱して倒れていたところを燎と悠に助けられたことがきっかけで、今に至っている。
本来は非戦闘向きな能力だが、真面目な性格と血の滲むような特訓によって、第一線で活躍できるほどの戦い方を身につけた努力家。
その端正な顔立ちに似合わぬフィジカルを誇り、リヒトの中でも随一の肉体強度を持っている。
男気に溢れ、さっぱりとした性格で仲間からの信頼も厚い。自由気ままに見えるが、誰よりも仲間思いで守る為なら体を張ることも厭わない。
眠ることが好きで、アジトの中庭で昼寝をしている姿をよく目撃されている。また子供や犬など小さくて愛らしいものに目がなく、そんな無邪気な一面が彼の人柄をよりいっそうに引き立てている。
弥 所持能力は、石化。
空気中にある水分を集積して、石化できる。
集めた石化物は爆破させることも、棘のように尖らせて放つことも、隕石のように叩きつけることも可能で、その使い方は多岐にわたる。
湿度の高い環境下であればあるほどに戦闘は有利になり、その潜在能力はリヒト随一と言っても過言ではない。
だがその強さとは裏腹に彼の心はとても繊細で、そのメンタルの弱さから思うように力を使いこなせないことも多い。
サクリファイスは、睡眠。
能力を使うほどに「眠れなくなる」という矛盾を抱えており、程度にもよるが数日間は眠ることができなくなってしまい、もともと持つ本人の気質も加わり慢性的な寝不足に悩まされている。
エニスキシ実験の元被験体で、綴と湊が向かった任務先で発見した時には廃人寸前で、当初は綴以外の人に触られることを拒んでいた。
しかしリヒトに迎え入れられてからは、少しずつ心を開き、今では仲間たちへ人一倍甘えるようになった。
一番最後にリヒトへと加わった。実験による影響なのか、年齢の割に言動が幼く、精神的に未熟な部分を抱えている。
寂しがり屋な性格で感受性が強く、人混みや大きな音が苦手。実験の後遺症により薬が効かず、環境変化への体制も著しく低い。
体調を比較的崩しやすく、体には実験による痕がたくさん残っている為、年中長袖を着て肌を隠している。