ガチャ095回目:洞窟の奥に潜むもの
「ふぅー。ご馳走様」
『プルーン』
数時間ほど狩りをして、昼食休憩を取った俺たちは地図を広げる。現在地は牧草地帯の東にある森の中だ。この辺りにはラムはいないため、のんびり休憩するにはうってつけだった。
そしてこの場所からまっすぐ西に行った先に、目的のダンジョンがあると思われる森がある。
「何もなかった時のためのラムは確保できたし、このまま件の森に乗り込むとするか」
『プル!』
しかし、何体かラムを倒してから気が付いたんだが、イリスの『性質変化』のスキルレベルがまた上がっており、新しく特殊な粘液を吐き出せるようになっていたのは驚いた。それはトリモチのような効果を持ったベトベトの粘液で、上手く使えば相手の足を絡めて動けなくすることも可能だった。問題があるとすれば、他の液体のように大量の粘液をぶちまけて使用するのではなく、自分の身体の周囲に纏う形でないと上手く相手の動きを制限できない所か。
けど、一度ハマればその効力は絶大で、突撃してくるラムがそのトリモチ状態のイリスに脚をひっかけると、そのまますっころんで起き上がる事すら出来なくなったのだ。これは、強敵のレアモンスター戦でも使えそうだな。
そうして出会うラムを何体か蹴散らしていると、目的の森へと辿り着く。そしてそのまま突き進んでいくと、それらしきものがそこにはあった。
「洞窟、か?」
『プル』
「ギルドの連中も、こんな露骨に分かりやすい洞窟を見逃すとは思えないんだがな……。活性化するまでは隠れていたのか?」
『プルーン』
それとも調査のやる気がなかったのか。まあ、世界中のダンジョンが稼働しなくなった事と、モンスターの数が減少傾向にあるところから、自分のところもそうだろうと判断して、調べなかった可能性は大いにあるよな。強者を抱えていないギルドには、周囲のダンジョン跡地の情報を隅々まで調べたりする余裕はなかったというわけだ。
そういう意味でも、特別報酬は別途貰っても良い気がするな?
「お」
なんて考えていると、10体前後のラムの群れが洞窟からゾロゾロと出てきた。牧草を食べるラムがあんな洞窟に用があるとは思えない。となれば、あそこは確定だな。
ここで倒してしまっても良いんだが……ダンジョン内部にいる存在を刺激する可能性がある以上、連中は見逃すか。それに、一度に戦うには10体はちょっと多すぎるし。
「……行ったな」
『プル』
「んじゃ、ここからは慎重に行こう。今なら『炎魔法』で覚えたトーチが使えるからな」
『プルル!』
魔法で明かりを灯しながら、俺達は洞窟へと入っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
さて、ここのダンジョンは何番かなーっと。
名前:識別番号038‐3
品格:なし
種別:ダンジョンの壁
説明:不明
「038‐3か……」
今までの傾向からして、番号の手前側がダンジョンNo.で、後ろ側が階層だとしたら、ここは『038ダンジョン』の3階層を意味するはずだ。
てことは、それだけ強い奴が待ち構えている可能性があるわけだ。
「あまりに強すぎる相手だと、撤退するのもアリだよな」
『プル』
イリスは鞄からゴソゴソと紙を取り出した。それは俺が作ったウィジャボード。いわゆる平仮名で作ったこっくりさんの様なものだ。
日本語の平仮名なんてこの世界では使われていないだろうし、誰かに見られても暗号文の様に思われるだけだから問題はないはず。
そんなウィジャボードを使って、イリスは文字を順番にタッチしていく。
「むりは、げんきん。だな」
『プル!』
「しかし撤退したとなると、今度は誰かに手伝ってもらう必要がある訳だけど……誰が良いかな?」
『プルプル』
現状俺の秘密を知ってて、戦力として頼りになりそうなのはルミア姉さんか。もしくは、俺を追っているとされているあの見習い天使ちゃんくらいか。まあでも、天使ちゃんはあまりにもリスキーすぎるから、姉さんに断られた際の予備策にでも留めておくか。
「逃げる時だけど、飴を舐めながら『次元跳躍』で頑張って逃げるのが一番良いか?」
『プル!』
さーて、この洞窟はどこまで続いているかなっと。
そうして何度か道を曲がりくねりながら進んでいくと、通路のど真ん中に一際でかいモンスターが居座っていた。息を潜め、鑑定が届く距離にまで接近して注視する。
*****
名前:ミノス
レベル:27
腕力:230
器用:210
頑丈:180
俊敏:115
魔力:60
知力:40
運:なし
【Bスキル】剛力、怪力
【Pスキル】身体強化Lv2、体術Lv1、斧術Lv2、盾術Lv1
装備:バトルブルアックス、牛人の盾
魔石:中
*****
……あ、コレ勝つのが難しい奴だ。
俺と奴との実力差は絶望的なのもそうだが、今まで敵対したモンスターは、高くても腕力が130、頑丈が100前後だった。だというのに奴はどちらも倍近くあるし、レベルも驚異の27。
この世界にやってきて過去一の強敵を前に、俺は即時撤退を選択。イリスにハンドサインで撤退を伝えると、了解を示す様にプルプル震えた。
『……』
だが、来た道へと振り返ろうとした矢先、奴はおもむろに立ち上がり、武器を手にした。
『ヴモオオッ!』
「くそ、バレたのか!?」
奴は明確に俺を意識し、敵意を飛ばしてくる。
感知範囲広すぎるだろ!!
『ヴモオオッ!!』
奴は想像以上に素早く、一瞬で距離を縮めてきた。この速度は、『次元跳躍』でも逃げ切れない!
こうなっては仕方がない。撤退は即座に諦め、討伐を優先する。
「くっ……ファイアーボール!!」
『プルル!!』
『ヴモッ!?』
奴の顔面に向けて、2人で火球を発射する。すると魔法を嫌がったのか、奴は突撃を中断してその分厚い腕と盾で防いできた。
俺の火球は盾を軽く焦がし、イリスの火球が奴の腕を焦がした。魔法に対する防御力は頑丈なのか、それとも知力や魔力が参照されるのか未だにわかっていない部分があるが、見た感じイリスの攻撃はしっかり通っている感じがするな。
「イリス、このまま魔法中心で攻撃してくれ。俺はなんとか接近戦で耐える!」
『プルル!!』
そうして俺達とミノスの激闘は始まった。
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