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ガチャ091回目:共同戦線

 こっちのフォボスが遠吠えをしたことで、敵陣営に動きがあった。相手側のボスが面倒臭そうに顔を上げ、それに反応してか周囲の森にて巡回をしていた子分達が一斉に駆け出した。目標は、先ほどまで俺達がいた場所だろう。遠吠えもそっちから聞こえたしな。

 向かうウルフの数は総勢30ちょっと。さっき俺が倒した一団と同じくらいだった。となれば、ここのウルフは1つの群れに付き30前後で行動するって事かな。

 それならまあ、ボスを倒した後でも困らないかな。一度に襲われたら面倒だけど、ボスが居座ってる岩場を背にして戦えば何とかなりそうではあるな。


「……よし、ウルフは全部通り過ぎた。行くぞイリス!」

『プル!』


 森から飛び出し、岩山に真っ直ぐに向かう。そうするとボスも俺達に気が付いたのか、ゆっくりと起き上がった。


*****

名前:フォレストボスウルフ

レベル:20

腕力:132

器用:100

頑丈:92

俊敏:134

魔力:80

知力:80

運:なし


(ブースト)スキル】迅速

PB(パッシブブースト)スキル】統率


装備:なし

魔石:中

*****


 なるほど、確かに強いな。

 全体的にマーダーをちょっと強化した感じか。『統率』があるのは厄介ポイントではあるが、それはこちらのフォボスも同じ事だ。それに、『統率』スキルは付近の仲間を一定数、ステータスの1割を強化するもの。付近に仲間がいない今、死にスキルと化している。やるなら今がチャンスだ!


「イリス、槍形態!」

『プル!』


 相手はもう立ち上がり臨戦体制だ。恐らくこの攻撃は避けられるだろうが構わない。ひとまず、目を惹くイリスを奴の死角に潜り込ませることが重要なのだ。


「どおりゃっ!!」


 投擲した虹の槍は真っ直ぐに向かうが、相手はここら一帯のボス。さっと避けられてしまう。

 ボスは回避したばかりの虹の槍に意識が逸れていたが、駆けてきた俺にすぐさま意識を戻した。


「ファイアーボール!」

『グル……!』


 手を前に突き出し、炎の球を出現させる。モンスターとはいえ、相手は獣型のモンスターだ。獣である以上、炎にはある程度の忌避感は持っているはず。それを利用して、更にイリスから意識を逸らす。

 それだけでこのトラップは十分に作用した。


『プルッ!』

『ギャンッ!?』


 槍の形態を解除したイリスが、可燃性の液体を奴の身体へと大量に付着させた。

 奴はそれが何かは理解できなかっただろう。だが、可燃性の液体は非常に臭う。燃やす前の時点でも鼻の利く奴にとっては絶大な足枷となるはずだ。


「イリス、そのまま拡散しろ!」

『プルルー!』


 イリスが『性質変化』のスキルを使って特殊な液体を使用するには、体内に蓄えた水分か、周囲の水源で代用する必要がある。一発だけなら蓄えでなんとかなるが、連発となればすぐに枯渇してしまうようだ。

 その為、俺はイリスに解決策を提示していた。


『プルプルプル』


 イリスは『土魔法』で岩の一部を削り、そこに『水魔法』を行使して水を貯め始めた。魔法行使中に『性質変化』のスキルが使えないなら、最初に用意してれば良いじゃん戦法だ。


「さあ、いつまで避けられるかな!」

『プルルー!!』


 結果的に、俺は槍と『炎魔法』で近距離から中距離で戦い、ボスは避ける事に必死になり、その背後からイリスの可燃性の臭い液体が飛んでくる事態となった。そして避ければ避けるほど周囲は可燃性の悪臭に覆われていき、奴にとっては地獄のようなフィールドが出来上がっていく。

 まあ、この臭いは俺としてもちょっとキツイところがあるが、あいつ程ではないだろう。そして、可燃性の液体にボスが足を取られたことで決着はついた。


『ゴオオオオッ!』


『ガアアッ!?』


 ボスは火だるまとなりのたうち回る。そこへすかさず槍で喉元を突き刺してやった。


【レベルアップ】

【レベルが24から26に上昇しました】


 よしっ!


「イリス、風で消火だ!」

『プル!』


 2人でありったけのウィンドボールをぶつけ、燃えている部分を削り取る。水を掛けたら爆発しかねんからな。最悪皮や肉がダメになっても、中の魔石だけはなんとか確保したい。

 そうして懸命の消化活動の末、なんとかボスを纏っていた炎は消え去ったが、ところどころ焼けこげた無惨な死体が残った。これでは素材としての価値はほとんどないかもしれんな。

 まあ素材は惜しかったが、この戦いは長引かせるわけにはいかなかったからな。なんせ――。


『グルル……』

『ガァ!』

『ワォーン!』


 味方の方に向かっていたウルフの一部が、先程の戦闘音を聞いて、戻ってきたんだからな。まああれだけ派手にやれば当然だが。


「イリス、行くぞ!」

『プルーン!』



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして10体、20体と討伐しているうちに骸となったウルフの数は膨れ上がり、途中途中で鞄に回収していたら2つ分の群れを倒す羽目にまで至っていた。全く、ここら一帯にはどれだけ配下がいたんだか。最初の動きで見えていたのはほんの一部だったらしい。

 フォボスがそれなりに惹きつけてくれていたのは間違いないが、やっぱ敵方のボスがやられたのが原因なのかね。ここら一帯にいたほとんどのウルフがこっちに来たんじゃないか?


『プルー。プルプル!!』


 イリスが何かを叫ぶと、森の中から一体のウルフが顔を出し、遠吠えをして応えてみせた。


『ワォーン!』

『ワォーン!』

『ワオーーン!!』


 その遠吠えは森全体に広がっているかのように伝播していく。もしかしたら、彼らの勝利の雄叫びなのかもしれないな。さて、俺もここに来た最初の目的を果たすか。

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