ガチャ079回目:森の最奥
「よいせ、よいせ」
『プルル~!』
『迅速』を覚える事ができてうれしかったのだろう。俺が必死こいて『マーダーラビット』の身体を鞄に仕舞い込んでいる間、イリスは砂煙を上げながら爆速で転がり続けていた。アレでも走ると言えるのか怪しいところではあるが、『迅速』が機能している以上間違いないのかもしれない。そうしている内に――。
『ガコッ!』
『プルッ!?』
イリスは何かに引っかかったようで、盛大に跳ねあがり明後日の方向に飛んで行った。そして綺麗に湧き水の地にダイブし、大量の水飛沫を上げたのだった。
『バシャーン!』
『キィ!?』
『キィキィ!』
「おーいイリス、大丈夫かー?」
『プルリュ~……』
うん、問題なさそうだ。
それにしても、イリスは何に引っかかったんだ? こんな平らな広場で……。
「……おっ?」
直接見に行ってみれば、そこには俺が探し求めていたものが埋められていた。
名前:魔素転送装置
品格:『遺産』
種別:魔導具
説明:周囲の魔素を強制的に増幅させ、特定のポイントへ魔素を移送させる魔導具。
★稼働中。次の魔素の波動まで残り0:0:31
「ほう」
元々ハーブラビット達には、キラーラビット達がどの辺りに出現するのか知っているなら聞いておこうと思っていたんだが、手間が省けたな。
それにしても、残り30秒で次の波動? ここはボスが鎮座してなくてもキラーラビットが湧き続けるのか。どういう風に湧いて出てくるのかちょっと興味あるし、このまま待ってみるか。
そうしてカウントが減っていくのを待っていると、地面から煙が噴き出し、3つの塊となって分離した。そしてその煙たちは小さく纏まり、ウサギの姿へと形を変えていった。
「お、出て来た出て来た」
『キィ?』
『キィ!』
『キィ!!』
キラーラビット3体。なるほど、こうやって出てくるのか。となると、放っておけばボス枠もこんな風に出てくる可能性がある訳だが、流石にそんな悠長な事をするつもりはない。いつになるか分からないし、ダンジョンの最深部で野宿するできるほど俺も強くないしな。
「よっと」
さっとキラーラビット達を片付けた俺は、早速『魔素転送装置』を取り除く。後はこの下にあるであろうダンジョンのコア部分を……あった。やっぱり変な模様が描かれた石板みたいなのがあるな。
名前:識別番号028‐1
品格:『高位伝説』
種別:ダンジョンアンカー
説明:%#$£によって創り上げられた神の遺物。識別番号028に用意された、魔素を安全に世界へ供給させる為の安全弁。異物の存在により本来の機能が失われており、早期復旧が必要。
★ショウタが直接触れる事で修復が開始される。
「ほれ、タッチと」
『ズズズズズ……!』
まるで地震が起きたように大地が揺れ動く。近くで鼻をヒクヒクさせていたハーブラビット達も、驚いたのか頭を押さえて身を低くしている。ほんと知能が高いなぁこいつらは。やっぱり、ステータスの『知力』とはまた別ものみたいだな、これは。
そんな風に考えていると、揺れは収まっていた。
【ダンジョンアンカーが正常に稼働を開始】
【識別番号028‐1の魔素が解き放たれました】
【識別番号028‐1のダンジョンは消失しました】
「よし、通知も来た。これでこの地はもう安全だな」
【付近に%#$£の力を確認】
【利用可能なエネルギーの抽出を開始】
光が紋章から浮かび上がり、俺の中にするりと入って行く。
【レベルガチャエネルギーを1つ獲得しました】
「うん、ガチャエネルギーも無事ゲットと。イリス、彼らに伝言を頼む」
『プル! プルプル~。プルル!』
血抜きをしていたイリスが、ハーブラビット達に情報を伝えた。彼らも、これ以上過剰にキラーラビットが出現しない事を知り喜んでいるようだ。
『キィキィ!』
『キィ~! キィ~!』
『プル? プルル、プルルンプルン』
「ん? どうした?」
『プル。プル~プル~』
イリスが身振り手振りで森の奥の方を指し示し、ハーブラビット達がそちらの方に向かってキィキィ鳴いている。奥に何かあるのか?
「……ついて来いって事?」
『プル!』
「仕方ない。ついてってやるか」
そうして再びハーブラビットについて行く事十数分。ようやくたどり着いた場所は、先程の広場とはまた別の水源がある小さな広場で、ハーブラビットだけでなく様々な動物たちが集まっていた。
「うーん、メルヘン過ぎる光景だな」
『プル~』
何人かの嫁が好きそうな景色だ。
そんな光景が広がる中を、ハーブラビット達に連れられて奥へと進んでいく。その場にいた動物たちを何体かチェックしてみたが、ハーブラビットよりも弱い小動物であったり、『マーダーラビット』級の強そうな奴もいたりしたが……。襲ってこない様子からして、気性の柔らかい奴らが集まってるのかもな。
ここの情報は……ギルドには伏せておいた方が良さそうだ。
『キィ、キィ』
『ギギ』
そうして到着した広場の最奥。そこにはちょっとした雨風くらいなら凌げそうなくらいの、申し訳程度の岩陰があった。そんな岩陰に鎮座していたのは、ダークグリーンの体毛を持つ巨大なウサギだった。角は1本しかなく捻じれてもいないが、その体格は『マーダーラビット』と遜色なかった。これがハーブラビット達の親玉か。
『ギギ。ギィ』
『キィキィ!』
『キィ~!』
『プル~ン?』
『ギギ』
『プルプル』
敵意らしきものは全くないし、なんなら柔らかい雰囲気をしている。どうやら、取って食うつもりはないらしいな。
それはともかくとして、俺だけ蚊帳の外なんだよなぁ。まあ、モンスターと会話なんてできないから、当然なんだけども。
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