ガチャ065回目:ランクアップ
「坊主、お前は本当にとんでもねえな」
「どうも」
そんなあっけらかんとした俺の反応が面白かったのか、おっさんはしばらく唖然とした後爆笑した。
「……はぁ、全く。本当に変なやつだぜ。おいそこの2人。暇ならゴブリンの清算でもしとけ」
「わ、分かってますー!」
「ショウタくん、薬草類は今回も持って帰れた?」
「あ、はい。どうぞ」
「ありがとう。それじゃレイチェルはこっちを先に片付けて。私はゴブリンの方を」
「了解ですー!」
両隣でテキパキと計算する彼女たちを尻目に、おっさんは改めて別方面の処理を進め始めた。
「坊主、まず今回のキングだが、魔石はあったか?」
「はい。コレですね」
「……『中魔石』ときたか。コレを持ってるレベルの相手となると、今回手配した連中の手には負えなかったな」
「あれ、それなりに腕の立つ人たちじゃなかったんですか?」
「それでもホブ相手になら問題はないとする程度だ。そんな連中の3パーティだったんだが、複数のホブに大量の職持ちゴブリンが迫って来たせいで、ほぼ全員がゆっくり後退せざるを得ない結果になっちまったんだ」
「なるほど」
まあでも、10年以上前にダンジョンもなくなり、強力なモンスターも出ないし平和な世界だったらしいし、解決力が一気に落ちるのも仕方ないのかも。
「だが、それも坊主のおかげで連中の総大将と大軍、更には拠点2つが灰になったのなら無事解決だな」
「彼らのダンジョンでの成果はどうでした?」
「ああ、そっちも坊主の報告通りだ。合同パーティは1時間近く奥で篭ってみたそうなんだが、その時も、襲撃部隊との戦闘の最中でも、奥からゴブリンは出て来なかったらしい。ダンジョンは間違いなく停止しているようだ」
「それはよかった」
これで稼働してましたってなったら、俺が虚偽の発言をしていたことになるしな。
「で、坊主。この『中魔石』だが売る気はないか?」
「無いですけど、いくらになるんです?」
「無いのかよ。だがまあ、希少性から考えて……大銀貨3枚は硬いな」
「おお」
ってことは30万Gか。『小魔石』は15万だったし、リスクに見合う値段だな。
「でもその値段って、10年間まともに手に入れる術が無かった場合の値段ですよね? 今回の原因を思えば、他のダンジョンだって……」
「ああ、稼働している可能性が高い。それもこの街だけなのか、他所の街や国でもそうなのかは調査が必要だがな」
「で、どれくらい値下がりするんです?」
「……仮に世界中のダンジョンで同様の事になっていたとしてだ。供給面を思えばいきなり大暴落する事はないだろうが、下がっても大銀貨1枚じゃねえかな」
「おお」
10万Gか。今はイリスのために確保するとしても、いずれ必要なくなった時に売る事を考えれば、その値段ならまあ妥協できるかな。
「で、次に最初の依頼の件についてだ。ミランダから受けた依頼、覚えてるな?」
「えーっと、ダンジョンの調査ですよね」
「ああ。偵察だってのに中にいたジェネラルをぶちのめして、ダンジョンの原因を取り除いて、ダンジョンから溢れ出したボス格や数百のゴブリンを倒すことまでは含めていなかったがな」
「いやー、あはは」
予定に無かったこととはいえ、日々できる事をやったらそうなっただけだ。流石の俺でも、最初からそんな大それたことをするつもりは全くなかったんだし。
「そういう訳で、坊主にはこの街の未曽有の危機から救ってくれた恩がある。今回の事件の顛末は、既にこの街の領主の耳にも届いている。略式だが、報酬の支払いと同時にランクアップをこの場で済ませるぞ」
「領主!?」
居たの!?
と思うが、まあ北側エリアは貴族がいるって話だったよな。こんな狭い街でも、ちゃんとした支配階級の人間はいたのか。
「まず報酬だが、成果が成果だけに魔石よりちょっと計算し辛いところもあるが、モンスター討伐報酬より安いなんてことはあっちゃならねえ。だが、領主の懐もそこまで余裕がある訳じゃないからな。だから、大銀貨1枚でどうだ?」
「良いですよ。最初は最低でも銀貨1枚とかでしたし、100倍なんて十分すぎますよ」
それに、この後もゴブリンや薬草のリザルトもあるしな。冒険者の仕事の大半は領主の懐から出てるんだろうし、釣り上げるつもりはない。っていうか、お金があったところでこの世界での使い道がな……。
そんな事を考えている内に、おっさんは俺の冒険者証を手元の機械でなんやかんやした後、また切符切りのようなものでパチンと挟んだ。そこには今まで『F』と印字されていたものが『D』に切り替わっていた。
「ダンジョン1つ終わらせて、キングすら倒せる奴がD止まりな訳ねえんだが、いかんせん坊主のステータスがな……」
「まあそうですよね」
「あまりにも低すぎるが、それを補って余りある戦果だ。だからといってD以上にしようもんなら、他のギルドに行った時に不正を疑われかねん。なので、この王国内にある他のギルドに連絡を取って、坊主のランクアップは正当な物であると打診するつもりだ。問題は無いか?」
「問題はないですけど、どうしてそこまでしてくれるんです?」
「何言ってやがる。街を救った奴にちゃんと応えるのが俺の仕事だ。ま、好きでこの席にいる訳じゃねえけどよ」
「おお……」
初見はただの飲んだくれのダメな職無しチンピラかと思ったのに、蓋を開けてみれば立派にギルマスやってるじゃん。
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