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ガチャ006回目:森の外へ

 どうして褒められたのかよくわかってないイリスを撫でる。そうしているともう片方の手に、べちゃりと何かが接触した。それを見て俺は、今の状況を思い出した。


「あっ、そうだった! イリス、今すぐにここから離れるぞ!」

『プル?』


 俺は短剣と一緒にイリスを抱え上げ、ゴブリンが来たのとは反対方向へと向かって移動を開始した。


「ほら、さっきまでの俺って不運の申し子みたいな状態だったじゃん。今も似たようなもんだけどさ」

『プル』

「だから真っ先にゴブリンと遭遇したのもそれが原因だと思うんだ。レベル1の装備もない状態でだ。戦闘経験がなければ間違いなくやられてた」

『プルプル』

「続いて、2体同時にやってきただろ? あれはたまたま最初の1体が先行してただけで、本来はスリーマンセルだった可能性が高いわけだ。正直ここに関しては逆に運が良かったかもしれない」

『プルーン』

「でだ、奴らが来た方向にはもっと大勢の仲間がいるかもしれない。あそこには連中の死体と臭気、それから血の匂いが充満しているからな。もっと厄介な連中を呼び込むかもしれないから、離れた方がいいと思う訳だ」

『プル~!』


 イリスも理解してくれたらしい。

 そうしてしばらく森の中を突っ切っていくと、不意に視界が開けた。どうやら森を抜け、街道が見える位置にまでやって来れたようだ。


「おお、道だ! そんで街だ!」

『プル!』


 幸いにも、街道の奥には遠くにはそれらしき街並みも見える。石壁に囲まれた、1000人前後は住んでいそうな大きな街だ。ここを通っていけば、比較的安全に街に辿り着けるはずだ。

 それを確認した俺は、再び森の中へと一歩戻り、街道に背を向ける形で木の裏へと隠れた。


『プル?』


 イリスが俺の行動を不思議そうにしているので、改めて今の現状を説明する事にした。


「なあイリス。さっきの続きだが、俺達はまずこの世界について、まるで知らない訳だ」

『プル』

「元の世界でこんな奇妙な光景があるわけないし、モンスターが消えない以上知らない世界なんだろう。そもそもあんな街道に街並み、現代社会でも滅多に見ないしな」

『プルル』

「そして問題は、知り合いがいない事もそうだが、金が無い事だった。だが、それはイリスのおかげで解決できた可能性が高い」

『プル~?』


 本当に困った状況ではあるが、イリスのおかげで活路が見いだせた。

 俺は3本の短剣を掲げてイリスによーく見せた。


「見てみろよ、この輝かしい剣を。これが元々ゴブリンが持っていた薄汚れた剣だとは誰も思うまい。まあ輝いていること以外はほぼ普通の短剣だけど、それでも普通にそこらの森の中にモンスターがいる世界だ。武器に価値が無いわけがない」

『プルプル』

「だから、1本は俺のメイン武器としてしばらく使うとしても、残り2本を売れば2人分の晩飯代と、一泊する程度の宿代ぐらいは確保できると思うんだ」

『プルー! プルプル!』


 得心が行ったのか、イリスはぴょんぴょんと跳ねた。

 俺も鉄の短剣数本程度じゃ飯のタネにはならないと思っていたが、これならなんとかなるはずだ。


「だがイリス、ここで1つ問題がある」

『プル?』

「この世界にテイムとか、モンスターをペットにする技術が一般的に普及しているのかがわからん。だから、イリスを連れて大通りを歩くわけにはいかないんだ」

『プル!?』


 もし仮に、テイム周りが問題ない世界であったとしても、イリスは世にも珍しい虹色のスライムだ。あっちの世界でも、似たようなものは居てもほとんど存在しない存在だった。そしてここは未知の世界だ。どんな常識があるかもわからないし、治安がいいとも限らない。

 そんな彼を、大手を振って大通りを一緒に連れ歩いて、権力者や無法者なんかに見つかって誘拐されない保証はどこにもない。そして今の俺では、守ってやれる実力も無ければ良い方向に転ぶような『運』も持ち合わせていない。イリスが暴れれば逃げられるかもしれないが、討伐対象として認定されたらお終いなのだ。

 向こうではそれなりの地位にいた俺でも、この世界では無力だ。デカイ権力の前には何もできずに飲み込まれてしまうだろう。

 俺はそんな自身の警戒理由をイリスに説明してやった。


『プル~……』

「まあでも、心配するな。堂々と歩けなくても、お前なら俺の服の内側に隠れるくらい訳ないだろ?」

『プル? プルプル!』

「とりあえずやってみようぜ」

『プル!』


 飛びついて来たイリスが、服の内側へと入り込む。

 ……めちゃくちゃくすぐったい!!


「……くっ。め、面積の関係上、結構内側全体に広がらないといけないかもだが、我慢してくれな」

『プル~!』


 おごご、イリスがいつものように震えるだけで、全身がくすぐられるかのような感覚が……! どちらかというと我慢するのは俺かもしれない……!

 これは、な、なんとか慣れていくしかないよな……。


「……と、とりあえず、見た目上は問題ないな。戻って良いぞ」

『プル!』


 俺が辛いからな。

 イリスがうごうごと服の隙間から出てきたので抱えてあげる。


『プルー』

「そんじゃ街に……と行きたいところだが、一番重要なことを確認していなかったな」

『プルーン?』

『ガチャだ!』

『プル!』


 名前は変わってもガチャはガチャのはず。これが最初からあるのなら、知らない世界でもなんとかやっていけるはずだ。

 そうして俺は、手を前に突き出した。


「『レベルガチャEX』召喚!」


『どすん!』


 馴染み深い真っ白な筐体が出現した。


「さーて、ガチャの仕様はどうなって……んん??」


 正面に書かれている張り紙の内容を上から下まで読むが、咄嗟に理解できずもう1度上から読む。


「な、な……なんだってー!?」

『プル~ン!?』


 俺は頭を抱える事になった。

 これがEXになった変化かよ……!!

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