ガチャ054回目:ご満悦
「あー……理解したわ。坊やはかなり特殊な子みたいね」
「どうもです」
「……」
エルフのお姉さんから冒険者証を受け取り、懐に仕舞い込むが、彼女は俺をじっと見つめていた。そんな彼女の両目からは、慣れ親しんだ波動を感じた。
「冒険者証があるのに、直接覗き見るのは失礼では?」
「あら、分かっちゃった?」
「そういう視線には慣れてるので」
「ご、ごめんなさいね。つい視ちゃったわ。お詫びにお店の中にあるもの、何でも好きなものを奢ってあげるわ」
「良いんですか? 高くつきそうですけど」
「良いのよ。勝手に覗き込んじゃったお詫びだから」
「どこまで見えたのかは知りませんけど、それで手を打ってくれるというのであれば、その申し出を呑みましょう」
さて、そうは言ったが何をもらおうかな。『特殊鑑定』で視れば、その物の価値がある程度は分かる。さーて、良いものはーっと。
名前:回復のポーション レベル1
品格:『希少』
種別:ポーション
説明:傷の治療ができる薬品。飲む事で身体全体の傷と疲労を少し癒す。また、傷口に直接かける事で高い効果が得られる。
アイテム袋に入ってたやつのレベル1版か。価格は……銀貨1枚。傷薬と思えばそれなりの値段だが、即座に治療を始めてくれることを思えば納得できなくも無いそんな値段だな。
まあ、使ったことないからどの程度の効果が得られるのか分からんけども。
名前:マザーラムの頭骨(角付き)
品格:『希少』
種別:素材
説明:大型の巨大ラムから取れる素材の1つ。角付きの頭骨は希少であり、黒魔術の素材として優秀。
お値段は銀貨5枚と。結構なお値段だな。
こういう呪具になりそうな素材は、ここで買取とかもしてくれるんだろうか。それは中々良い情報だな。
名前:炎の教本 入門編
品格:『最高』
種別:魔導書
説明:炎魔法の初級を学ぶために有用な知識が詰め込まれている魔導書の一種。レベル3魔法までの扱い方が記されている。
お値段は大銀貨2枚……!?
たっけえ!! たっけえけど、これを読んだところで今すぐ魔法が使えるようになるとは到底思えないんだよな。入門以前の、もっと基礎的なやつが欲しい。
となれば、この店内に並んでいる棚ではなく、お姉さんの後ろにある……。
「その青いカバーの本をください」
「え、コレ!?」
名前:マナと魔素の真髄
品格:『固有』
種別:教本
説明:マナと魔素について分かりやすく解説された教本。エルフ族に伝わる門外不出の一品。これを理解すればマナを操り自在に魔力を動かすことは可能となる。
どうやらそれを選択されるのは想定外だったようだ。でも言っちゃってたもんね。『お店の中にあるもの、何でも好きなもの』って。
広義的意味で言えばお姉さんも入っていそうな気がするけど、流石にそこまではね。そう思っていると、お姉さんは慌てて他の物をオススメし出した。
「こ、こんな本よりあの棚にある物の方が高いわよ。ほら、これなんて王都でも滅多に並ばない上級魔法の――」
「即座に力には結びつかない物に興味はありません。そんな物より、今俺に必要なものが欲しいです。それも、値段がつけられない代物なら尚のこと。ですので、その青い本でお願いします」
「ぐむむ……」
「……」
お姉さんは悔しそうに見つめてくるが、俺に『威圧』は効かんぞ。まあでも、その圧力の上がり幅はおっさんの比じゃないな。多分このお姉さんなら、昨日のキング程度指先一つで片付けられそうな気配さえある。
「はぁ、分かったよ。合格よ合格。この本はあなたにあげるわ」
「ありがとうございます。理解し終えたらお返ししますね」
彼女から本を受け取り、鞄へと仕舞い込む。これはあとでゆっくり読もう。
そうしていると、お姉さんは更に頭を抱えた。
「もう、何て子よ。こちらの読みを全て看破して、返却までしてくれるですって? 満点の答えを出してくるなんて、あなた本当に人族なの?」
「人間ですよ。正真正銘の。視た情報の中に記されてませんでした?」
「視えたわよ! だけど信じられないのよ。この私ですら見破れないスキルもあったし、何より……」
彼女の視線が俺の身体へと向けられる。その視線の意味は、彼女の表情から察することができた。
「一応こっちの方が、俺としては秘密度が上なんですけど」
「でしょうね。この私ですら、そんな知性的なモンスター、知らないわ」
やっぱりイリスの存在に気付いていたか。圧倒的格上の人物みたいだし、隠したままにするより友好関係を築いた方が良いだろう。
「イリス、出て来て良いぞ。挨拶するんだ」
『プル? プルルー』
首元からにゅっと顔を出して、イリスはぺこりと頭を下げるように動いた。
「キャー、カワイイー!」
「キャー?」
お姉さん、そんなキャラだったのか?
そう訝しむと、失態に気付いたのかすぐに咳払いをした。
「ごほんっ。……ね、ねえ坊や。この子触っても良いかしら?」
「イリス、良いか?」
『プルーン。プルル、プルル』
「今度美味しい食事を奢ってくれるなら、良いって言ってます」
『プル!? プル~』
言ってない! けど、ご飯は欲しい。
そんな感じの反応である。
「食事ね! 任せて、腕によりをかけるわ! もちろん坊やも一緒にね」
『プルーン!』
イリスは懐から飛び出しカウンターの上に乗った。そしてエルフのお姉さんに抱きしめられたり、撫でられたりしてご満悦の様子だった。
ちょっと羨ましいぞこの野郎。
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