ガチャ050回目:ギルマスへの挨拶
武器の処理に頭を悩ますおじさんから、武器を抜いた鞄と小切手を受け取り、俺達はそのまま冒険者ギルドへと向かった。
夕方の書き入れ時だからか、ギルドは案の定混雑していたが、若干の混乱が見られた。耳を澄ませてみれば、聞こえてくるのはゴブリンや南の森、ダンジョンといった単語だ。
まあ十中八九、ダンジョンを調査しに行ったが、中断を余儀なくされたチームからもたらされた情報で騒ぎが起きてるんだろう。ダンジョンから溢れたモンスターがいずれはこの街に来るかもしれないと考えれば、恐怖する理由もわからないではないが、今はまだその規模にまで達してはいないはずだ。だからまあ、彼らが騒ぐのは少し時期尚早というか、気が早すぎる気がするんだよな。
「さて、ミランダさんは……」
ギルド内は冒険者だけでなく、受付嬢や職員も浮ついていた。まあ、ダンジョンなんて十数年稼働していなかった遺物だしな。それが動き出したとなれば慌てるのもわからんでもないが……。
「お、いた」
クエストボードの所で何やらクエストの張り出し作業をしているようだった。こんな時間に張り出すなんて、一体どんな内容なんだ?
彼女の後ろへと回り込み、その内容を覗き見る。
依頼書:南の森の探索
依頼人:冒険者ギルド(ガラナの街)
報酬:最低銀貨1枚
内容:南の森にダンジョンが出現した可能性が高いが、現在も稼働しているのか確認が必要。詳細は受付嬢から説明を受けられる。
注釈1:ゴブリンの上位種が出現している報告もあり、ソロでの行動は非推奨。
注釈2:最大5チームまで受けられる。
注釈3:南東のゴブリン集落への接近は禁ずる。
「おー、情報が刷新されてるなぁ」
「え? ショウタくん!?」
感心していると、ミランダさんが驚いたように振り向いたので、軽く手を振った。
「どうも。ただいまです」
「おかえりなさい、無事でよかったわ! 報告よね、こっちに来て!」
振っていた手はミランダさんにがっしりと掴まれ、そのままいつもの部屋……を通り過ぎる。そしてそのまま奥まったところで両開きの扉があり、彼女は懐から取り出した鍵で開錠。中に入ると階段で、後ろ手に鍵を閉めた彼女に連れられ、2階のさらに奥への部屋へと連れてこられた。
この部屋はなんだ? 随分と立派な造りな上に、ここに来るまでの管理も厳重だったな。
そう思っているとミランダさんは扉を3回ノックした。
「支部長、ミランダです。ショウタくんをお連れしました」
「入れ」
聞き覚えのある声に導かれ部屋へと入ると、そこはまるで支部長室というよりは、武人の部屋と言えるような部屋だった。所狭しと壁に飾りたてられた武具の数々に、ドデカイモンスターの頭蓋骨。その頭蓋骨の下では、こちらに背を向けるように窓の外を見ている男が1人。
その後ろ姿は見覚えしかなく、先程の声もそうだがこの分かりやすい気配。間違えようがない。
「……」
「……」
「……」
誰も何も喋らない。たぶん向こうはかっこつけたいだけなのかもしれないが、こっちは急いでるんだよな。夕食に遅れたらどうしてくれるんだ。
「俺は今日ここに報告に来たんだ。この後も用事があるし、急いでるんだよ。だからおっさん、遊ぶんなら帰るぞ」
「なにっ!?」
グレインのおっさんは慌ててこちらへと振り返った。さっきまでカッコつけてたのに、その驚きっぷりでは効果半減、いや、マイナスまであるな。
「ミランダ、お前……」
「私は教えてませんよ!」
「おっさんは存在感あり過ぎるんだよ。あんたと同じくらい存在感ある奴はこのギルドで見かけてないからな。だから半分くらいは当てずっぽうだよ」
「マジかよ……。けっ、せっかく驚かせてやろうと思ったのに」
「あと、この街でそれなりに権力持ってそうな武器屋のおじさんとよく話してるじゃないか。冒険にも行ってないのに武器屋の主人と雑談できるってなると、自ずとな」
隣でミランダさんが小さく拍手してくれている。ちょっと照れくさい。
「あー、しまったな。確かにその通りだ」
「それを思うと、最初のFFFのくだりもあんたの立場を思えば、ああいう行動に出るのも分からなくもないしな」
「そこまでバレてんのかよ! っておいミランダ、もう1回坊主の冒険者証の更新してくれ。あれだけ大量の武器を持ってきたんだ、絶対FFFじゃねえだろ」
「はいはい、分かりましたよ。ショウタくん、ちょっと借りるわね」
ミランダさんに中央のテーブルへと連れて行かれ、装置に冒険者証と手を置かされる。内心ミランダさんも気になっている様でソワソワしているのか、やたらと密着して来ている。
良い匂いがするなぁ……。
「はい、更新終わりました! ……スキルは増えている様ですけど、ステータスは変わりませんね」
「どれどれ……」
*****
名前:ショウタ
腕力:FFF
器用:FFF
頑丈:FFF
俊敏:FFF
魔力:FFF
知力:FFF
スキル:体術Lv1、剣の心得Lv1、投擲Lv2、暗殺術Lv1、暗視
*****
「うお、マジか。これだけできてまだFFFなのかよ! けどまあ、結構重要なスキルが増えて来てるじゃないか。誰かに教わるでもなくこの辺の基礎的なスキルを修められる辺り、才能があるんだろうな」
「そうですよ。ショウタくんは才能が溢れてるんです!」
「才能ね……」
俺の場合は可能な限り覚えた全スキルの果てを知ってるからこそ、今あるステータスでできる最高のパフォーマンスを発揮している事で、スキルとして形になってくれてるだけだと思うんだよな。
やっぱり経験ってのは何事も大事だよな。言い方はアレだけど、嫁達のおかげで女性への耐性が付いてるから、隣から美人のお姉さんに密着されてても鼻の下伸ばしたりしない訳だし。……伸ばしてないよな?
『(プルーン)』
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!









