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ガチャ049回目:いっぱしの武器庫

「ちわーっす」

「よお坊主」

「おう、帰ったか」


 武器屋に入ると、そこにはおじさんとおっさんがいた。


「おっさん、またいるのかよ」

「なんだよ、いちゃ悪いか?」

「冒険者なら仕事しろよ」

「明日にはする予定だぜ? なにせ、デカい仕事が舞い込んで来そうだしよ」


 デカい仕事……? まさか……。


「集落のボスは俺が狩りたいんだけど?」

「お、坊主。まさかもう集落に乗り込んだのか!?」

「おいおい、初っ端から随分と動くじゃねえか」

「乗り込んでない。外から覗き込んだだけだ」

「「ほぉ……?」」


 2人して同じ反応をしてる。そんなに俺の行動が気になるのか……?

 まあ良いや。こんな事に時間を割いてる場合じゃない。お腹の魔王が暴れる前に、さっさと会計を済まさねば。


「それよりもおじさん、これ頼むよ」


 俺は『異次元の手提げ鞄』をカウンターに乗せた。するとおっさんが先程以上に色めき立った。


「おいおい爺、こいつを譲ったのか!? 俺がいくら説得しても手放さなかったくせに!」

「ふん、お前さんとは期待値が違うんだよ」


 俺、そんなに期待されてたのか。まあでも、おじさんの目には俺が、錆びのない鉄の素材を山ほど取って帰ってくる鉱夫に見えているのかもしれない。


「だが当然ただではないぞ。破格の大銀貨5枚で譲ってやったのよ」

「『魔法の鞄』の相場からしてみれば多少は格安ではあるが、新米にその値段は高すぎんだろ……。って、大銀貨5枚!? 坊主、そんなに金を持ってたのか!?」

「借金しただけだよ。利子は無しだけど」

「ハハッ、そういうことだ」

「ガハハッ! 爺がそこまで気に入るとはな。やるじゃねえか坊主!」

「で、どうだお前さん。使い心地は」

「最高ですね。ただ、いっくらでも入るせいで、遠慮がなくなってしまうのが困りものです」


 そのせいでイリスの疲労を度外視して討伐してしまった。けど、集落の規模からして明日も同じくらいのゴブリンを倒すことになるかもだけど。

 おじさんは俺の言葉に笑いながら、『異次元の手提げ鞄』に手を突っ込む。そうする事で当人にだけ見える形で、中に入っているアイテムがリスト化されるのだ。


「どれどれ……な、なんだこりゃあ!? お前さん、一体どこの武器庫を襲撃してきたんだ!?」

「そりゃ、南の森という金のなる木からですよ」


 おじさんの驚きようにおっさんも興味津々だが、あんたに見せる気はないぞ?


「おい爺、なんだってんだ? 俺にも見せてくれよ」

「……ふん、これは駄目だ。客との信頼を裏切るつもりはない。そんなに知りたきゃ、あとで受付嬢にでも聞くんだな」

「ちっ、しゃあねえ。邪魔者は退散しますよと」


 そう言ってグレインのおっさんは出て行った。こういう時は物分かり良いんだな、あのおっさん。


「……さて」

「はい」

「本当に、南の森で、これだけの数を?」

「冒険者証の裏、見ます?」


 おじさんに冒険者証を渡す。そうして裏面をタップした彼は頭を抱えた。


「マジかよ……。お前さん、『戦神マルス』の使徒とかじゃねえよな?」

「いやだなあ。俺が()()()()の使徒な訳ないじゃないですか。失礼しちゃうな」

()()()()ってお前……。あの国の連中に聞かれたら殺されるぞ」

「あ~……。じゃあ聞かなかった事にしてもらえると……」

「はっ、下手に詮索したこっちも悪かった。何も聞いちゃいねえよ」


 助かるー。


「にしても凄い数だな……。しかし磨き上げた奴はシャベル1本だけか?」

「触れれば錆が落とせる訳でもないんで、ちゃんと疲れるんですよ。なのでこれが限界です」

「ハッ、そうかい。ちと待ってろ、計算するからよ」


 おじさんはカウンターの奥へと入って行った。そして金属が床を叩く音が店の中に鳴り響く。

 こうして音として聞くと持ち込んだ総数の多さを改めて実感するなぁ。

 今回持ち込んだアイテムの総数は以下だ。


・鉄の短剣:46本。

・鉄の剣:19本。

・鉄の槍:45本。

・鉄の伐採斧:2本。

・磨かれた鉄のシャベル:1本。

・鉄のシャベル:1本。

・レザーアーマー:69個。

・鉄の防具一式:22個。

・ウッドスモールシールド:22個。


 うん、買取価格を数えるのも億劫なくらいあるぞ。


「おじさん、支払いは明日でも良いけどー?」

「あのな! お前さんはどうせ明日も持って来るんだろうが! 今の内に処理しとかねえと後が大変なんだよ!」


 怒鳴られてしまった。

 まあそうだよな、後回しにするとこういうのは大変かつ面倒になっていくものだ。

 俺も経験した記憶しかない。


『(プル~?)』

「(もうちょっと待っててくれな~)」


 お腹の上のイリスを撫でつつその時を待つ。外では鐘の音が鳴り響いていた。


「おう、待たせたな」

「あ、はい。お疲れ様です」

「今回の集計だが、値段はいつも通りだ。数は多いのにきっちりと錆が落とされてるし、価値としても申し分ない。こいつらはこっちで打ち直すなり鋳潰すから、値崩れする心配はいらん」

「ありがとうございます」

「これが買い取り票だ。確認してくれ」


 そうして提示されたメモを見る。


・鉄の短剣:46本×300G=13800G

・鉄の剣:19本×400G=7600G

・鉄の槍:45本×600G=27000G

・鉄の伐採斧:2本×2000G=4000G

・磨かれた鉄のシャベル:1本×3500G=3500G

・鉄のシャベル:1本×1800G=1800G

・レザーアーマー:69個×100G=6900G

・鉄の防具一式:22個×1200G=26400G

・ウッドスモールシールド:22個×200G=4400G


 しめて、95400G。

 ここに残高の分を含めると、137100G

 うーん、中々稼げたんじゃないか!?

読者の皆様へ


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