ガチャ048回目:疲労困憊
「ようやく終わったなー」
『……』
イリスが萎んで動かない。どうやら喋る気力すら無い様だ。まあ、こんだけの数の武器を捌いたらそうなるよな。今回は磨き上げはせず、全て錆び落としだけに留めておいたのだが、それでもイリスの気力をぶっ壊すには十分だったらしい。
大量のアイテムの処理に追われ、疲れ果てる姿を見ると、昔の自分を思い出すなぁ。あの頃は運が普通の人の数百倍になった影響で、ドロップアイテムで溢れ返り、1000個以上のスキルを処理するために虚な目で処理してたっけ。
あ、思い出すだけで眩暈がしてきた。思い出すのはやめよう。アレは、個人的なトラウマランキングの上位に位置する記憶だしな。
「イリス、帰りに冒険者ギルドによるけど、その時持ち帰りできる食事をいくつか買ってあげようか」
『……プル!? プルプル!!』
「急に元気になったなぁ」
『ププルプルプル』
言ったよね? 言質取ったからね?
と言わんばかりの勢いでプルプルしている。
「分かってる、約束は守る。けど、食べるのは夕食が終わった後、自室に戻ってからな。アイテム用の大袋は手放しちゃったし、イリスは生物だから『魔法の鞄』には入れないしな」
『プルーン!』
そうして元気になったイリスを抱え上げ、森の外へと向かう。すると、イリスは突然服の中に入り込んでしまった。
なんだなんだと思っていると、どうやら森の外にそれなりの数の人間がいるらしい。それなりに緊迫した声が聞こえてくる。彼らはギルドが正式に依頼した、ダンジョンの調査に来た人たちなのだろうか?
聞き耳を立てるのも悪いし、そのまま外に出るか。
『ガサガサガサッ』
「うわっ!?」
「きゃっ!」
「え、誰だ?」
「こっちの台詞だよねそれ」
そこにいたのは2人の男と1人の女性だった。格好からして冒険者で間違いないんだろうけど、全身泥だらけだ。血の跡もあるが、怪我をしているわけではなさそうだし、きっと返り血なんだろう。
「ここにいるって事はあっちに用があるんだろ? ここで何してるんだ?」
俺がダンジョンの方を指し示すと、彼らも察したらしい。すぐに警戒心を解いた。
正直ちょっとチョロすぎると思うけど。
「ああ、あんたはクエストを知ってるのか!」
「私達は他の連中と一緒に向かったんだけど、途中でゴブリンの軍団に遭遇したのよ。大変だったんだから!」
「集団って、何体くらいいたんだ?」
「13体よ。しかもホブゴブリンが2体もいたのよ!」
13かー。一度に相手するのは面倒だけど、ホブを引き離せばなんとかならないこともないかな。
「そいつらは倒したのか?」
「ホブを1体と、ゴブリンを何体か倒してから撤退したのよ。奴らも深追いしてくる様子はなかったんだけど……」
「他の連中は街に援軍を要請しに向かったんだ。俺達は奴らが追いかけてこないか、見張りをしてるところだ」
「なるほど」
じゃあもうちょっと西側を通ってから帰れば、戦闘後のちょっとボロボロになったゴブリン達が居たのかな。それは、漁夫れたかもしれないけど……これ以上武器を増やしたらイリスが泣いちゃうかもだし、遭遇しなくて良かったかもな。
「あなたは、全然汚れていないけど、ゴブリンと遭遇しなかったの?」
「ラッキーだったな。奥に行けば、もっと大軍がいる気がするぜ。多分100体はいるんじゃないか」
「さあな、もっといるかもしれないぞ? じゃあ俺は帰るな。見張り頑張れよー」
そう言って手を振って別れる。彼らはまだ何か喋りたそうにしてたけど、俺も疲れてるんだよな。話し相手になれるほど余裕はないのだ。
腹の上でウゴウゴしている暴食王が急かしてるしている今は、特にな。
「もうすぐ街だからなー」
『(プルプル)』
そうしてイリスを撫でながら帰路につく。流石に疲労が溜まっている今、小走りする元気すらない。そうしてのんびりと歩いていると、日が暮れ始めた。
「今日もお互い頑張ったなー」
『(プルー)』
お互いに励まし合っていると、ようやく南門へと辿り着いた。
どうやら、ザインさん達は俺の無事を心から喜んでくれている様だった。
「ザインさん、ただいまです」
「おかえり少年、無事で何よりだ!」
「なんでも、南の森で組織だって動く連中が見つかったそうじゃないか。よく無事で居たな」
「遭遇はしなかったのか?」
「まあそこはギルドに聞いていただければと。言いふらすわけにもいきませんし」
ここで話していい内容かも分からないしな。なんだかんだで、人通りも一応あるし。
「はは、それもそうだな」
「けど、たった13体で大群は言い過ぎだと思うんですよね。誇張表現も程々にするべきだと思いますよ」
「はは……。普通はその数と遭遇すれば、命の危険を考えるんだぞ?」
「確かに君は昨日、それくらいは言ってのけるほどの数を、抱えて持って帰ってきていたな」
「普通なら見栄を張るなと言ってやるところなんだがな……。やれやれ、とんだ新人がいたものだ」
「はは、それじゃ報告に行ってきます!」
さーて、まずは武器屋だな!
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!