ガチャ047回目:敵情視察
「ふぅー。やっと巡回が来なくなったぞ」
『プリュー……』
流石のイリスも疲れた様で、気が抜けた様に萎んでいる。
肉体の疲労はレベルアップで消えてなくなるけど、精神的な疲労はどうしようもない。この世界は明確な命のやり取りをしてるのだ。地球の時と同じと言うわけにもいかない。
だが、疲れはしたけどこのまま帰るわけにはいかない。せっかく来た以上、集落の規模くらいは確認してやらないとな。
「次からは水筒を用意しようか。流石に、喉が渇いた」
『プルー』
「……よし、行くかイリス」
『プル!』
獣道を跨ぎ、斜面を登る。どうやら連中の集落は、高台に設立されているようだ。
そして坂道を登り切った場所は、木々は全て切り拓かれただだっ広い空間の中、見たことのある様式の建造物が木の柵の中に出来上がっていた。
「『上級ダンジョン』で見たゴブリンの集落と、同種かな」
『プルーン』
外壁は木材を荒縄でまとめ上げた物を使用し、集落を囲い込む様に円形に設置されている。そしてこの木の柵だが、作りが荒く侵入を防ぐ役割は果たしていそうだが、中身が丸見えだった。
「流石ゴブリン作」
出来栄えの悪さを鼻で笑いつつ、中を覗き込む。
内側ではゴブリン用の家と思われる木と皮と藁で組み立てられた住居が20以上存在した。そして集落の中央には、ゴブリンの顔で作られた10段のトーテムポール。
そのトーテムポールの直下には玉座があり、そこには見栄の塊のような王冠を着けた者が座っていて……。
「やはりキングがいたか……!」
『プルルルル……!』
ここから『特殊鑑定』は届くかな……。
とりあえずやってみるか。
*****
名前:キングゴブリン
レベル:19
腕力:132
器用:110
頑丈:88
俊敏:57
魔力:186
知力:92
運:なし
【Pスキル】剛力、怪力
【PBスキル】リーダーシップLv2
装備:魔鉄剣、魔鉄鎧、ゴブリンキングの王冠
魔石:中
*****
あー……うん。ありゃ勝つのは難しいわ。
本来のキングに比べればやっぱり弱体化はされているものの、3桁台のステータスに、剛力と怪力があると来たもんだ。それに対して俺達はと言えば……。
*****
名前:天地 翔太
年齢:17
レベル:16
腕力:19
器用:19
頑丈:19
俊敏:19
魔力:17
知力:17
運:30
【Uスキル】レベルガチャEX、特殊鑑定Lv1、異世界言語理解Lv2
【Pスキル】体術Lv1、剣の心得Lv1、投擲Lv2、暗殺術Lv1
【Aスキル】暗視
【Sスキル】次元跳躍
称号:%#$£の###、ダンジョンの解放者
*****
名前:イリス
存在位格:『普通』
コア:極小魔石
レベル:16
腕力:105
器用:105
頑丈:105
俊敏:105
魔力:105
知力:105
運:なし
【Pスキル】暗殺術Lv2
【Aスキル】暗視、チャージアタック、悪食Lv1
【Mスキル】魔力回復Lv1
【Sスキル】形状変化Lv3
*****
これだもんな~。全体的に見て1/4くらいか?
ジェネラル戦でも格差としては同じくらいだったけど、結局あれはイリスが絞殺したんだよなぁ。俺はホブの相手で手いっぱいだったし。けど、このキングの『頑丈』はあの時のジェネラルの倍はある。イリスで絞殺すことは難しいだろうし、何よりサイズの問題がある。
通常のゴブリンや役職持ちは大体1メートルとちょっとの子供くらいのサイズだが、ホブは3メートル、そしてキングは目算3.5メートルから4メートルくらいはある。見た目で言えば完全にホブの上位互換で、奴を更にゴツくしたような感じだ。
「……ひとまず奴の顔は拝めたし、ここは帰るか」
『プル』
イリスを肩に乗せ、来た道を慎重に戻る。
イリスならステータスで言えばほぼ全てにおいて奴に勝ってはいるが、まだ自分のステータスを完全に発揮できるスキルを取得できていないんだよな。身体を膨らませて、触手を拳代わりに殴りまくる事ができれば強いんだが、いかんせんそれをするには魔石のサイズが小さすぎる。
『小魔石』を吸収できなかった理由も不明だし、イリスに圧倒してもらうことは不可能と見て良い。逆に俺はどうなのかというと、正直あいつはデカイし強敵ではあるが、1対1なら多分なんとかなると思う。1度戦った事はあるし、これくらいのステータスなら結局当たらなければどうということはない戦法で勝てる気がする。
ただ問題は、周囲の雑魚なんだよな。あいつらさえなんとかなれば……ううん。
そんな事を考えつつ、道中では薬草を見つければしっかりと採取し、ゴブリンと遭遇すれば1匹たりとも逃がさず殲滅する。その過程でまたシャベルと斧を持ったホブ連中がいたので討伐したが、流石にそこから先は帰り道だったので、落とし穴トラップを見つけることはできなかった。
「うん、見慣れたポイントまで来たな。ここからなら、後数分歩けば森の外だろう」
『プル~?』
そう言いつつ立ち止まると、イリスが不思議そうな声色でプルプル震えた。
「悪いなイリス、最後の仕事……錆び取りだ」
『プリュ~ン』
「ごめんなぁ。代わりに明日の昼食は2人前ほど多く買ってあげるから」
『プル!? プルル!』
その言葉にすっかり元気になったイリスは、張り切って錆び取りを開始した。
だが問題は、錆びた武器が100本以上あることなんだが……。頑張れイリス。俺は応援することしかできない……!
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