ガチャ044回目:進撃開始
「おかしいなぁ。銀貨5枚……5000Gの借金返済ができると喜んでたら、50万5000Gの借金ができちゃったぞ?」
『(プルプル!)』
「そうだな。ここは、大量に武器を持ち帰って、おじさんの腰を抜かしてやるしかないか」
『(プルルー!)』
「お、少年。何やら楽しそうだな」
イリスと話していると、いつの間にやら門までやって来てしまっていたようだ。
「ザインさん、おはようございます!」
「ああ、おはよう。これからまた南の森か?」
「そうですけど、その前にコレを」
彼の手に銀貨5枚を乗せた。
そして心から頭を下げる。ほぼ直角に。
「先日はどうもありがとうございました!」
「どういたしまして。だが、こんなに早く支払ってくれるとは思いもしなかったよ。自分で言うのもなんだが、冒険初心者に7日は結構ハードなんだぞ?」
「まあ……薄々そんな気はしてましたね」
ゴブリン1体討伐しただけじゃ30G前後。そして聞くところによると、『錆びた短剣』はたったの10Gでしかないらしい。俺は戦闘慣れしているからステータスがゴミ同然だろうとゴブリン程度恐れて怯むことなどないが、本当の初心者なら厳しいだろう。
けど、正直な話、これは街に馴染むための一種の試練の様なものだとも思う。だって、普通に考えて一文なしで街の外から見ず知らずの人間がやってくること自体イレギュラーなのだ。戦争が起きてたわけでもないのに。
でもだからって、本当に困っている人間を見捨てるわけにはいかないから、何かと理由をつけて街に呼び込み、本当に問題ないのか見極める目的もあったんだと思う。犯罪歴はちゃんとチェックされるから、そこも安心要素ではあるんだろうな。
「実際問題、7日でクリアできなかった場合どうなるんです?」
「そうだな……。君になら言っても良いだろう。まずは滞在期間中から当人の返済意識の強さを確認して、しっかり行動している様なら延長してあげたりもするかな。働く気がなかったり、そもそも冒険者に向いていない様ならちゃんとした別の仕事を紹介して、斡旋するのも我々の仕事だ」
「おおー」
正にお役所って感じだ。ちゃんと働くタイプの。
「だが、君は3日目には装備を整え、返済するまでに至った。この手の形で街に入った者達の中では、君の返済速度は随一だね」
「あはは、喜んで良いとこですかね?」
「モンスターに襲われて金銭まで失ってしまったのは難儀ではあったが、少年よ。もう2度と借金なんてするんじゃないぞ」
「あ、ソウデスネ」
俺は今、あなたに支払った金額の100倍の借金があります。なんて、口が裂けても言えないな。
「じゃ、行ってきます。今日は話によると、この門を通る冒険者が多いそうですよ」
「そうなのか。気をつけてな」
「はい、それじゃ!」
そうして街道を駆け足で駆け抜け、いつもの入口へと到着する。イリスももぞもぞと服の中から出て来て、肩に乗った。
「さて、イリス。街中じゃできなかった事を試そうか?」
『プル?』
イリスは何のことか分からないといった反応をした。
「魔石だよ魔石。これが吸収出来れば、イリスも滅茶苦茶強くなれるだろ?」
『プル~! プルプル!』
イリスも思い出したらしい。はしゃぐイリスに、さっそく『小魔石』を与えてみる。彼はゆっくりと飲み込んでいくが……。
「どうだ?」
『プル? ……プル??』
彼の中で魔石が徐々に消化されていくのが見えるが、何も感じないらしい。その様子を俺もじっと眺めてはいたが、完全に消化し終わってもイリスの身体にもステータスにも、異常も変化もを感じられなかった。
魔石は姿を消していたし、吸収はできたはずなんだが……。成長するためには、何か条件があるのかもな。
『プル~ン……』
「そう落ち込むな。魔石なんてまた取ればいいんだしな」
『プル!』
「そんじゃ、気を取り直して進もう。目的地は、ここからは南東方向だ」
『プル!』
「今回は薬草類を見つけたら、10個ずつまでは優先的に回収して、それ以上は高価な解毒草だけにしておこうか」
『プル~!』
そうして目的地に向かって踏破を開始した。といっても、見せて貰った地図がどこまで正確かも不明だし、なによりも途中で薬草を発見したらぐねぐねと経路がブレるので、真っ直ぐに向かえていたのは開始1分程度だった。
そんな中、最初のエンカウントが起きたのは、踏破開始後30分が経過した頃だった。
『ゲギャ!』
『ゲギャギャ!』
『グギャギャ!!』
「おーおー、威勢がいい連中だな。」
遭遇したのは5体のゴブリン。
・ゴブリンレベル3
・ゴブリンレベル4
・ファイターゴブリンレベル5
・レンジャーゴブリンレベル5
・ナイトゴブリンレベル6
昨日のダンジョントラブルを受けて、スリーマンセルをやめてファイブマンセルに変更したのか? それなら随分と行動が早いが、そこんとこどうなんだろうか。
集落に近い連中は元々5人1組だった可能性もないわけでもないが、前者だった場合そんな風に簡単にチームの組み換えができるくらいには、集落に大規模な数と、それを指揮できる存在がいるという訳で……。
「ジェネラルより上がいる可能性、出てきたな」
『プル~』
そんな風に雑談をしつつ、ゴブリンは全て斬り伏せる。今更こいつらに後れを取る事も無ければ、怪我を負わされる事など万に一つもない。
剥ぎ取りをし終えた後も、薬草を採取しつつ森を進んでいくと、ゴブリンの集団と3回遭遇したが、3回とも5人1組でチームを組んで行動していた。やはり、数もそうだが指揮できる指揮官がいるのは間違いなさそうだな。
「けど、役職名持ちのゴブリンはいても、ホブは出てこないんだな」
『プル~』
「やっぱり格としては、ホブの方が役職持ちより上という事なのかもな。図体もデカいし膂力もあるし」
『プルル~』
なんてことを話しながら採取を進めていると、地響きと怒号が聞こえて来た。
『『グオオオ……!』』
「ああ、噂をすれば……」
『プル~ン』
2体のホブと、ファイター、レンジャー、スピアのファイブマンセルを見つけた。今回は採取をするために身をかがめていた為に即座に発見される事はなかったが、奴らの進行ルート上、間違いなく俺達が倒したゴブリンの死体を見つける事だろう。そうなれば騒ぎになるし、あいつらが暴れ出したら面倒な事になる。
「ここは、不意打ちするべきだな」
『プル!』
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