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ガチャ043回目:失意体前屈

第一章が全開で終わりとなった為、今日から1話ずつに切り替えていきます。

また、投稿時間が本編と被るのもあれなので、12:30~のみに切り替えたいと思います。

「お兄さん、おはよー!」

「ふぁ~……カリンちゃん、おはよう」

「見て見て、今日も良い天気だよー!」

「ん~……そうだねぇ~」

「あはは、お兄さんぼんやりしてるー。顔洗ってくる?」

「そうする~……」


 はあ、今日もぐっすり寝れたなぁ。

 この世界に来て4日目。まだ分からない事は山ほどあるけど、やれることもやりたい事も山ほどある。1つ1つクリアしていこう。


「あ、お兄さん。昨日みたいに4人前を食べられそうなときは言ってね。すぐ準備するから!」

「わかった、ありがとう。とりあえず今朝は3人前で大丈夫だよ」


 昨日は何だかんだお腹もすいてたからぺろりと2人前を食べることはできたけど、この宿の料理ってそれなりに量はあるからな。2人前で満腹を通り越しそうでちょっとやばかった。まあ、本当にやばかったらイリスが食べてくれるだろうけど。


「それと、昨日言ってたお弁当代も今支払っておくね」

「はーい、受け取りました! 朝食の後にお渡しするねー!」


 カリンちゃんはバタバタと部屋を出て行った。支払いは手元のアイテム袋に入っていた小銭で済ませたが、これくらいなら心は痛まないぞ。

 弁当は昨日の夕食時に、俺がいっぱい食べるからと気を利かせてカリンちゃんから提示してもらったのだ。おかげで、今朝は冒険者ギルドに寄らなくても済みそうだな。


『(プル~?)』

「もちろんイリスの分もあるからなー」

『(プルプル)』

「んー? そうだな、どんな弁当か楽しみだな」

『(プル~!)』


 んじゃ、顔洗って飯食って、今日も冒険に行くとしますか!



◇◇◇◇◇◇◇◇



「おう、お前さんか。今日は早いんだな」

「ギルドに寄らずに直接来ましたからね」


 そう言ってちょっと不安になった。

 呼ばれてないし用事もないよな?

 ……うん、呼ばれてはいなかったはず。用事も、思いつかないぞ。うん。


「さて、例のアイテム入れについてだが……お前さん、結局いくら用意出来たんだ」

「そうですね、昨日モンスターの討伐や薬草の採取をこなしたので、残高は41700Gになりましたよ」

「うお、また随分と増やしやがったな。冒険者になりたてとは到底思えねえぞ」

「ベテランの武器屋と頼れる受付嬢がいますから、これくらいは当然ですよ」


 あと、アイテム製造機ことダンジョンの存在のおかげだな。


「ははっ、言ってくれるじゃないか。全額使っちまって良いのか?」

「……あっ。そういえばザインさんに今日返すって言ってたっけ」

「おいおい。……ちなみにうちから引き出しはできないぞ」

「そうだった……!!」


 しまったー!!

 昨日見栄を張らずに直接アイテム袋から渡しておけば……。でも、あれは俺が稼いだ金じゃなくて、落ちてたのを拾った金だからな。それで返すのはやっぱり精神衛生上宜しくないしな。

 昨日銀貨3枚と弁当代を支払ったから、小銭しか残ってないし……。


「……このあとギルドに行って降ろしてきます」

「やれやれ、この時間に行ったところで混んでるのは知ってるだろう。ギルドに寄ってから行くとなると、あの森は騒がしくなるぞ。その理由はお前さんも知っておるだろうに」

「あ~……。もしかして、何か聞いてます?」

「お前さんがダンジョンを潰したって話だろう。まったく、それがどれだけ不可解な事か分かっているのか? それができないから昔の奴らは皆苦労してたんだぞ」

「……すみません。でもできちゃったもんはできちゃったので」

「お前さん、随分と()は良いようだからな。終わりを()()することくらい造作もないんだろうが、()()()()()までわかるのか?」

「それはたまたまですよ。たまたま」

「フッ、そうか。くくっ」


 おじさんは笑うと、足元でなにかゴソゴソとし始めた。だが、よほどおかしかったのか、その後も笑っていて、最後には盛大に「ゴツンッ!」とカウンターに頭をぶつけていた。

 うわー、いたそー。

 カウンターは明らかに金属製だが、おじさんのステータスが高すぎるのかカウンターも変形していた。


「ふんっ」


『ゴガッ!』


 それを上から叩いて治すあたり、普段から割とやらかしてそうではあるが。

 そう思っているとおじさんはカウンターに小さな手提鞄を置いた。


「さて、これが例の物だ。お前さんならこれが何かわかるだろう?」

「もしかして……」


 名称:異次元の手提げ鞄

 品格:≪遺産≫レガシー

 アイテムレベル:21

 説明:異次元の空間にアイテムを収納する魔法の鞄。アイテムレベルに応じて収納量と時間遅延が増減する。


「おお、『魔法の鞄』だ!」

「はっ、やはり分かるか」


 まあ……随分とレベルが低いけど。

 俺が知ってる手提鞄は、確かレベル40台はあったはずだ。それの半分かそれ以下となると、収納スペースも相応に減ってはいそうだな。けど、それでも手が塞がらないというのは大きいし、何よりゴブリン100体程度倒しても武器ならいくらでも入りそうな気がするぞ!


「おじさん、これ、いくらで……!?」

「本来で言えば金貨5枚」

「き、金貨5枚!?」

 

 ってことは、500万G!? 銀貨5000枚分!?


「だが、お前さんも気付いているだろうがこの鞄は失敗作だ。入る容量は二周りほど狭く、劣化を防ぐ能力すらほとんどないと言って良い。そのうえ中古品だ」

「ではそれを考慮して……?」

「大銀貨5枚だな」

「た、たりん……」


 大銀貨1枚は銀貨100枚分に相当する。それが5枚ということは……こいつの価値は50万Gだ。1/10とはいえ、それでも俺にとっては大金だった。しかも、昨日魔石を売っていても届かない距離というのがもどかしい。

 いや、イリスが成長できる可能性を考えれば、これを売るなんて論外だけどな。

 あまりの衝撃的値段にがくっとなり、俺は思わず失意体前屈(orz)をしてしまった。


「だが、お前さんはうちのお得意さんだ。ツケにしておいてやるから、今後の稼ぎで返済するんだな」

「お、おじさん!? 良いんですか!?」

「ああ。お前さんはゴブリンなんぞにやられるようなタマじゃないし、他国のスパイでもなければ恩知らずの不届き者でもない。多少不審な点はあるが、まあ目を瞑っても構わんだろう」

「じゃあ、これでいっぱい稼いできますね!」

「おう、期待してる。それと、ザインへの支払いなんだが、それも立て替えてやろうか? それの分もまとめてツケにしておいてやる」

「ありがとうございます!!」


 そうして俺の財政状況は、以下の物となった。


 残高:41700G+小銭

 借金:505000G


 これはひどい。

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