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ガチャ004回目:世界の仕様

『ゲギャ! グギャ!』

「……」


 ゴブリンの攻撃を回避しながら思案を進める。にしても、『思考加速』や『並列処理』のスキルがないとこんなに不便だったのか。回避に集中していないと、ゴブリンの攻撃が当たりそうになってしまう。

 錆びているとはいえゴブリンの武器は刃物だし、ステータス差を考慮すれば俺の身体を傷つける事くらい容易い。更に錆びてるせいで、バイ菌もやばそうだ。普通に新品の武器で斬られるより後遺症が酷そうだよな。

 ……いや、回復手段がない以上どっちもどっちか。


『グ、グギャ……』

「お、体力切れか? まああんなにブンブン振り回してたらな……ふぅ」


 とはいえ、俺も弱くなったせいで残り体力はそう多くはないんだが。考えながらよけ続けるのって、こんなに疲れたっけ。

 ……コイツに逃げられたら厄介だし、そろそろ俺も真面目に戦うか。とはいえ素手で攻撃するのは物理的に厳しい。こんな未知の土地で拳を壊してしまったらと思うと、あとが怖すぎる。

 となれば、やる事はひとつだ。


『ゲ、ゲギャ!』

「そこだ!」


 振り下ろし攻撃を横に避け、短剣を握るゴブリンの指を殴りつけた。


『ギャアッ!?』


 続けて、痛みで手を庇うゴブリンを足払いで転ばす。弱くなって技量が下がっても、これくらいのことはできる!

 最後に世界が一転してパニクるゴブリンの喉元に、奪ったナイフを突き立てた。


『ギャ!?』

「ぐっ!」


 途端に視界が鮮血に染まり、熱い液体が全身を濡らす。そして鮮血の向こうでは、ゴブリンが必死になって暴れており、俺も無我夢中で何度も何度も短剣を突き立てた。

 そうしていると次第に抵抗が弱まり、鮮血も弱まっていく。すると見慣れたメッセージが、鮮血で見えなくなった視界の内側にパッと現れた。


【レベルアップ】

【レベルが1から2に上昇しました】


「お、終わったか? ふぅー……疲れた」


 だけど、レベルアップの瞬間疲労も吹き飛んだな。魔力だけじゃなく体力も回復するのは普通にありがたいところだ。


『プルプル』


 目と鼻の先で、イリスが揺れ動いているのを感じた。今、周囲がどうなっているのか現状を確認したいところだが、視界はいまだに鮮血に染まったままだ。手や腕で拭おうにもそっちにもべったりとついてるし、どうしたものかと思っていると、ぷにっと柔らかいものが顔を覆い尽くした。


「むぐっ!?」

『プル!』


 呼吸ができなくなり何事かと思って慌てたが、すぐにそれがイリスのボディだと分かり落ち着きを取り戻す。そして流れに身を任せていると数秒ほどで鼻と口の部分は元通り解放された。それと同時にべっちょりとした口周りの嫌な感覚は、臭気と共に消えてなくなり、呼吸も楽な状態へと変わっていた。


「おお?」


 そのまま首、頬、目と順に解放されていき、そこでようやく自分の状況を見ることができた。まず、大きく暴れていたゴブリンは目の前でちゃんと死体となっていて、その両手はイリスがしっかりと押さえ込んでいたのだ。


「暴れるコイツに引っ掻かれたりしなかったのは、イリスが押さえ込んでてくれたからか」

『プルー』


 イリスは満足そうに揺れると、ゴブリンの死骸から離れ俺の身体に飛びついてくる。そして顔以外の全身を覆って来た。


「ああ、イリスは血を吸い取ってくれていたのか」

『プルーン』


 彼が何をしてくれているのかを理解した俺は、ゴブリンから少し離れたところに腰を下ろし、されるがままになる。そうして数分もすれば、処置は完了したのかイリスは俺からそっと離れ、体内に取り込んだ赤黒い液体をピューっと体外に排出し始めた。

 綺麗になった全身を改めて見回す。そこには血を浴びた痕跡は一切なく、血油によるベトベト感も臭いも、なんなら俺の汗すらも、何もかも綺麗に取り除かれていた。そういやイリスには、前に蜂蜜で全身ベトベトになった時も取り除いてもらったことがあったっけ。あの時彼は蜂蜜を舐めて喜んでいたけど、さすがにゴブリンの血は飲みたくなかったようだな。

 さっきからビューと吐き出し続けているし、一滴も体内に残すまいと頑張っているようだ。イリスは何でも喰うから、吐き出すシーンは割とレアかもしれんな。


「助かったよイリス。ありがとな」

『プルー』

「しっかしそうか、ここはダンジョンじゃないから、ゴブリンの血は煙にならないし、死体も消えないのか……」


 ダンジョンじゃないと頭でわかってはいても、実際に経験しないと理解できないものってのはあるよな。


「あ、てことは素材の回収も、死体を直接解体しないといけないのか」

『プルプル』

「てか、ゴブリンから取れる素材ってなんかあったか?」

『プルー? プルル』


 イリスが身体の一部を伸ばして、その先端を丸いコブみたいなものにしてみせる。


「あー、魔石か?」

『プル!』

「でも鑑定結果には無かったんだよなぁ。鑑定精度が落ちたのか、それとも本当に魔石を持ってないような個体なのか……」

『プルプル』


 イリスがゴブリンの胸をツンツンした。

 まあ、あるとするならそこだよな。


「仕方ない、解体してみるか。イリス、血が飛び散るかもしれないから、カバー頼む」

『プル!』



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして時間をかけて慣れない解体作業をするが、人間と似たような臓器はあれど、魔石と思しき存在はどこにも無かった。


「無いな」

『プル……』


 となると、鑑定結果は間違っていなかったか。無駄に人型のモンスターを解体するだけの結果になってしまった。

 血みどろの死体は慣れないが、今まで散々倒してきたことのある相手だ。こうすることに対して吐き気や悍ましさはない。ただ、少なからずの忌避感はある。それでも解体は今後も経験する事になるだろうし、この光景にも慣れておかなきゃな。


『プル!』

「お、掃除してくれてたのか。助かる」

『ププルプル』


 解体時に腕に飛び散った血液を吸い取ってくれたようだ。イリスがいてくれて本当によかった。

 にしても、いきなりゴブリンとの遭遇か。これもやっぱり『運』が0による弊害か?


「……あ、そうだ。レベル上がったし『運』を上げなきゃ」


 いつまでも『運』0を維持してたら、次にどんな不幸が飛び込んでくるか分かったもんじゃない。そう思ってステータスを開いてみると……。


*****

名前:天地 翔太

年齢:17

レベル:2

腕力:5

器用:5

頑丈:5

俊敏:5

魔力:3

知力:3

運:2


(ユニーク)スキル】レベルガチャEX、特殊鑑定Lv1、異世界言語理解Lv1

(スペシャル)スキル】次元跳躍


称号:%#$£の###

*****


「あれ? 勝手に増えてる……」

『プルーン?』


 全ステータスの成長値は案の定+1ずつというゴミ仕様なのは良いとして、レベルアップボーナスによる『SP(ステータスポイント)』の割り振り仕様が無くなったのか?

 まあ元々『運』に使う予定だったから手間が省けて良いけど、これがこの世界の()()なのか?

読者の皆様へ


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