ガチャ039回目:鑑定眼鏡
「冒険者ギルドに、アイテムの詳細を視れる魔導具とかはないんですか?」
「あ、あるわ。ちょっと待っていて、道具を持ってくるから」
そう言ってミランダさんは慌ただしく出て行った。あの反応からして、『鑑定』や『真鑑定』のスキルは持ってないのかな? もしくは、この機械はその程度の能力程度なら軽くはじけるような能力を持ってるのか?
まあ何にせよ、ちょっと暇になっちゃったな。
『(プル~)』
「本でも読むかぁ」
『ゴーンゴーン!』
あ、鐘が鳴った。
そろそろ飯の時間だなぁ。
「……そういや、今日は別に汚れてないよな?」
『(プル? プルルル……プル!)』
イリスが全身をくまなく確認して、内側も外側も汚れはない事を確認してくれた。ついでに汗とかも全部吸い取ってくれたようなので、俺が窓を開けるとそこから汚れをプイッと吐き出していた。
いやー、助かる。この世界全体はどうかはしらないけど、あの宿には風呂という概念がないからな。一応裏庭には井戸があるから、それで水浴びはできるだろうけど……。現代日本の文明に慣れた俺じゃ水浴びで精神をもたせるのは多分1回が限度だな。せめて火が自由に扱えれば五右衛門風呂とかできるんだろうけど……。
「火か……」
冒険中も何度か考えはしたが、魔法ってどうやるんだろうな?
スキルとして存在する技術である以上、明確な手段と知識があるはずだが、この世界にはどういう形で存在してるんだろうか。あっちでは普通の魔法を使うにあたって、明確に『知力』がいくつ必要とかあったのは覚えてるけど、レベル1の魔法ではそういうのは特になかったはず。だから今なら覚えようとすれば覚えられる下地は整ってるはずなんだよな。とっかかりが無いだけで。
「やっぱり世界の歴史とかそういう類の書物が無いとなぁ……。いや、探せてないだけでこの街には魔法とか魔導具系のお店とかあるかもしれないし、その線で探ってみるのも有りか?」
『(プルル~?)』
まあでも、そういうのはまた今度で良いだろう。お金も言うほど持っていないし、今は南の森の制圧をするべきだ。
ダンジョンが壊れた影響で、集落にいるゴブリンが何かしらアクションを起こす可能性は低くないだろう。そんな状態で時間を置けば、集落にいるゴブリン連中が森中に散ってしまったり、別の場所に移動したりなんて事にもなりかねない。そうなれば、せっかくの経験値兼お金が得られなくなってしまう。
「それは困る。だから明日も、ゴブリンパーティーは開催しなきゃな」
『(プルル!)』
そうして覚悟を新たに、適当に本を読んでは棚に戻してを繰り返していると、ミランダさんが戻って来た。昨日のお姉さんも連れて。
「あ、おかえりなさい」
「ごめんねショウタくん。これからはこの子……レイチェルも同席していいかしら」
「いいですけど、どうしたんです?」
「この子は魔導具にとても詳しいのよ。だからショウタくんが持ってきたこれにも、何か得るものがあるかと思って」
「ショウタさん、昨日ぶりですね。お疲れ様です!」
「お疲れ様ですー」
うん、レイチェルさんは今日も可愛らしいな。元気いっぱいで明るいし、彼女も人気がありそうだなー。
「それにしても不思議な形状ですね。製作者の刻印は……なしと。魔導具は作り手のこだわりが極端に出るものですけど、これにはそれがないようです。依頼者の意向でしょうか」
「こだわりですか?」
「はい。言うなれば『無駄な部分』ですね。魔導具が稼働する上で、必要最低限のところを除いた装飾部分の事です。これには、それらしい掘り込みも無ければロゴもマークもサインもない。一般で売られているものでないのは間違いなさそうです」
レイチェルさんはそう解説し、続けて虫メガネみたいなものを取り出して機械を覗き込んだ。
「……名称、『魔素転送装置』。格、『遺産』。内容、『周囲の魔素を強制的に増幅させる』……」
『鑑定』用の魔導具かな。
俺が読み取った内容に近い事は書いてあるみたいだけど、色々と情報が不足してるな。けど、今の説明を聞いただけでミランダさんもレイチェルさんも相当深刻そうな顔をしているし、思い当たる節はあったんだろう。
「あのー、魔素ってなんですか?」
「え、ショウタくんは知らない? そうね、簡単に言うとこの世界を取り巻く重要な要素の1つよ。魔素がある事で作物は育つし、水も流れるし、命も育まれて行くの。私達人間も、魔族も、天族も、亜人も、誰もが生きていくのに必要不可欠な物なの」
呼吸するのに必要な酸素とか、そういうレベルで重要な存在ってことね。それを知らない俺って相当変な奴だよな。ミランダさんが優しくて助かったが……。
「つまり、この機械が設置されていた以上ダンジョンは元々その魔素の発生源だったということですね。そして各地にあるダンジョンも、元を正せば魔素の発生源である可能性が出て来た訳ですか。これは既知の情報だったんですか?」
「いえ……少なくともこの国の人間は誰も知らないはずよ。魔素というのはね、特殊な魔導具を使用する事でしか観測することができないと言われている特殊な要素なの。けど、それでも濃度が濃すぎると知覚出来なくなると聞いた事があるわ」
「てことは、その話が通っていない以上、ダンジョンの魔素は高濃度で、それをさらに増幅させ暴走させたのがその機械で、その結果ダンジョンが暴走してモンスターを生み出すようになってしまったというわけですか」
「……そうなってくるわね」
……いや、俺にだけ視えてた説明文からしてみれば、その魔素はどこかに転送されていたはずだ。転送先が何処かは分からないが、モンスターを生み出してしまうようなエネルギーだ。どう考えても悪だくみの香りがプンプンするな。
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