ガチャ038回目:報告
「おっさん。話は終わったぞ」
「おう坊主。随分すっきりしたじゃないか」
グレインのおっさんがガハハと笑った。
まあ確かに、荷物が無くなってスッキリはしたかな。あのデカイ袋も処分してもらったし、手元にあるのは薬草用の小袋と、ジェネラルからゲットしたアイテム袋だけだ。
おっさんにはハンドサインで十分かと思い、無言で立ち去ろうとしたが、呼び止められてしまった。
「しっかし坊主、お前結構な活躍をしてるみたいじゃないか。本当にFFFなのか?」
話しかけられたからにはちゃんと答えないとな。おっさんには、そこまで悪感情ないし。
「ステータスはゴミ以下でも、戦闘経験なら誰にも負けないからな。おじさんにも言ったけど、当たらなければどうということはない」
「それが実践できれば文句はねえけどよ……。それでもステータスの格差はどうしようもなく存在するだろ」
「確かにそれはあるけど、圧倒的格差が付いてない限りダメージが通らないなんてこともないだろ。だから、一縷でも望みがあるなら、勝ち筋はある」
相手の攻撃は全て避け、こちらはちまちまと有効打を叩き続ける。イリスがフリーで動ける限り武器の強化は永続だし、疲労しても相手もその分疲れるだろうし、もし戦闘中にレベルアップすればその瞬間体力も傷も全快する。負ける要素があるとすれば、10倍以上のステータス差を持ってる相手か、未知の能力を持っている相手だけだ。それも、『特殊鑑定』が機能している限り初見殺しは通用しないはず。
10倍となると、今のステータスで言うと大体200前後くらいからダメージはほぼ通らないと見て良いな。けど、この辺にそんなステータスを持ってる奴はいなさそうだし、いたとしても魔石持ちだろう。となると、この世界の情勢的に考えて別のダンジョン周辺やその内部にでも行かないと遭遇なんて滅多にしないんじゃないかな?
うん、野生のボスがうろついてなきゃ、詰む事は無さそうだな。
「……坊主、本当にお前何者だ?」
「流れ者だろ? 他所から来た奴の事はそう言うそうじゃないか。街の人達が言ってた」
「まあそうだがよ……」
「じゃ、そういうことで。そろそろ鐘が鳴っちまう」
なおも何か言いたげなおっさんを無視して、俺は冒険者ギルドへと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
冒険者ギルドに到着すると案の定人でごった返していたが、カウンターの奥で事務処理をしていた男性職員が、俺を発見するやいなや一目散にやって来た。
「ショウタさんでいらっしゃいますね?」
「あ、はい。そうです」
「お待ちしておりました。先日同様3番の部屋にお願い出来ますか」
「わかりました」
そういや俺が受けたクエストって、掲示板から引っぺがしたものじゃなくて、ある意味俺への指名依頼というか、秘匿性の高い依頼ではあったか。さすがにこんな人の目がある中で報告するわけにはいかないよな。
そうして言われた通り3番の部屋へと入り込むと、ミランダさんが待っていてくれてた。
「おかえりなさいショウタくん」
「あ、ただいまです」
「さ、どうぞ。そこに座って」
ぺこりと頭を下げ、彼女の正面のソファに腰掛ける。
「噂で聞いたわよ。結構な数の武器を背負って門を通って来たんでしょ?」
「み、耳が早いですね」
寄り道したとはいえ、まっすぐやって来たのに。
「ふふ、冒険者ギルドは情報を扱う集団だもの。拠点のある街の情報くらいは容易いわ」
「はぇー」
「ところで、初日の偵察としてはどうだったかしら。本来は普通にカウンターでざっと聞く予定だったんだけど、あんなに大量の武器を持って帰って来たんだもの。相当数のモンスターを倒したんじゃないかしら」
「あー……。とりあえずコレ見て貰えます?」
何て言おうか迷ったが、手っ取り早いので冒険者証を裏返し、テーブルの上に置いた。
「見せてもらうわねー。……え!!?」
冒険者証をタップしたミランダさんがフリーズした。
改めて俺も見ておくか。
*****
【討伐モンスター】
ゴブリンLv2:2体
ゴブリンLv3:5体
ゴブリンLv4:3体
レンジャーゴブリンLv5:1体
レンジャーゴブリンLv6:1体
ファイターゴブリンLv4:1体
ファイターゴブリンLv5:2体
ファイターゴブリンLv6:1体
スピアゴブリンLv5:2体
スピアゴブリンLv7:1体
ナイトゴブリンLv6:1体
ホブゴブリンLv8:1体
ジェネラルゴブリンLv12:1体
【精算済みモンスター】
ゴブリンLv2:8体
ゴブリンLv3:6体
ホブゴブリンLv8:1体
*****
こうみると、3日目にして沢山倒したよなぁ。
1日目に3体、2日目に12体、3日目に22体と。
明日はゴブリンの集落を襲撃する予定だけど、どれくらい遭遇するだろうか。今からちょっと楽しみだ。
「ショウタくん」
「はい」
「上位種のゴブリン2体に、職持ちゴブリンも10体。こんなのもうダンジョンがあるとみて間違いないでしょうけど、一体どこでこれだけ倒して来たのかしら……?」
「ダンジョンに乗り込んで全部倒してきました。もう復活はしないと思います」
どや顔で決め込むと、ミランダさんはぽかーんとした後に柔らかく笑って見せた。
「色々と言いたいことはあるけど、これだけは言っておくわね。残念だけど、ダンジョンの完全破壊は不可能よ。先人達が発生原因を探ろうと努力を重ねて来たけど、ついに一時的に機能が停止した理由さえ突き止められなかったのよ。だから――」
その先を告げようとするミランダさんだったが、例の機械を俺が取り出すと、不思議そうな顔をして困惑していた。この反応を見るに、ミランダさんは白だな。
「これがダンジョンが再起動した理由だと思います。詳しくは俺も分かりませんが、これが悪さをしてたのは間違いありません」
「な、なんですって!?」
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