ガチャ031回目:ダンジョン内部へ
「さて、どうするか」
『プル?』
アイテムの回収も、証拠の隠蔽も、全身の血の拭き取りも終わった。証拠になり得ると判断してファイターを倒せたし、高スパンで出現するゴブリンも確認できた。ならここは真っ直ぐ帰っても良いところではあるんだが……。
「やっぱ、気になるよなー。この世界のダンジョン」
『プル~!』
「よし、イリス。突撃しよう。そんで危なくなったら撤退しよう」
『プルップルプル!』
イリスも探検したいのかノリノリだった。
さっきは不意打ちだったが、剣の威力も一応確認できた。弱い方の『磨かれた鋼鉄の剣』でも、容易く『頑丈』が16のファイターゴブリンの喉を容易く掻っ斬る事ができたのだ。これなら、またホブと交戦しても正面からやり合える気がする。キングがでたらいの一番に撤退するけど。
「昨日の戦いでイリスも成長したし、囲まれるようなことがあったら頼むぞ」
『プル!』
「よし、行くか!」
俺達はダンジョンと思しき洞窟の前に立ち、その穴を見下ろす。真っ暗で何も見えないのではと思いきや、意外とその天井は隙間が無数にあるようで、そこかしこから陽の光が入って来ており、それなりに明るかった。
「……ランタンとかその手の類のアイテムがいるかと思ったが、そうでもなさそうだな」
『プル』
でもまあ、油断はしない。
まず不可解なのがダンジョンで出現したモンスターは、本当に出現後すぐに移動をし始めるのかという点だ。それならダンジョンは安全になるのだが、もし仮に内部で許容量が設けられていて、溢れた分だけが外の集落に移動するというパターンであれば、内部はモンスターハウスになっている可能性が高い訳だ。
そうなったら、いくらゴブリンといえど今の俺では多勢に無勢だ。それを見越して、慎重に行動せねばなるまい。
「……」
そう考え斜面を慎重に降りて行き、最初の曲がり角で一度立ち止まる。そうしてゆっくりと壁越し向こう側を覗き視てみる。しかしその先は大部屋ではあったものの、ゴブリンの存在は確認できず、伽藍洞になっていた。それでも警戒は続けて再三確認の上で部屋へと侵入する。
突然の襲撃を警戒して馬鹿みたいに部屋の中央へのこのこと歩いて行ったりはしないが、やはり壁にも天井にもゴブリンの姿はなく、何かがいた形跡すら感じられなかった。あ、でも何かの動物の骨らしきものが散乱している。もしかして、ここは連中にとっての食事処なのだろうか。
幸いにも、人間関係の骨はなさそうではあったが。
……あ、そういえば――。
「ここはダンジョンなんだよな? だとすれば……」
『プル?』
俺は洞窟の壁を『特殊鑑定』で見てみる事にした。もしここがダンジョンとして機能しているというのであれば……。
名前:識別番号022‐1
品格:なし
種別:ダンジョンの壁
説明:不明
おお、一応ダンジョンなのか。
向こうでもダンジョンの壁を『鑑定』した時は似たようなものが出てきた記憶がある。思えば、調べたのは本当に最初の時だけで、それ以降は壁を『鑑定』しようなぞ思いもしなかったよな。
だがそれは、些か仕方なくも思える。なにせ、地球のダンジョンでは新しく潜るたびに全く別の問題やら新展開が俺を待っていたのだ。些細な事は記憶の端に放り捨てられていても致し方あるまい。うむ。
「しかし識別番号か……。俺の思った通りの意味が込められてるなら、ちょっと厄介だな」
『プル? プルプル』
「そうだな。俺が記憶する限りでは、地球の『No.022ダンジョン』には入場したことはない。だからここが本当に向こうの『No.022ダンジョン』と同一のものか、判断がつかないんだよな」
あとは、聞いている情報では3部屋しかないということも問題だ。次層への階段もなくたった3部屋で終わりとなると、また別の問題が出てくるが……。
「まあここでいくら考えても埒はあかんか。よし、次に行くぞイリス」
『プル!』
そうして新調に進む事数分。数回の曲がり角を超えた先で、それは鎮座していた。
*****
名前:ジェネラルゴブリン
レベル:12
腕力:72
器用:58
頑丈:42
俊敏:78
魔力:12
知力:20
運:なし
【Pスキル】剣術Lv1
【PBスキル】リーダーシップLv1
装備:鋼鉄の剣、鋼鉄の防具一式
魔石:小
*****
ジェネラルゴブリン……。ゴブリン系モンスターのリーダー格。
リーダー格の中では一番弱いが、このステータス……。ホブゴブリンとは比べ物にならないぞ。一応全体的に見ればイリスの方が格上だが、何より今までのモンスターと一番違うのは、魔石の存在だ。レベルで言えばホブより少し高い程度なのにステータスが全体的に2倍近く増強されているのは、もしかして魔石があるからだろうか?
地球では魔石はエネルギー源として買い取りをされていたが、モンスターも魔石のサイズによって強さの土台が変わってくるのも見て来た。だから、魔石そのものがあるとなしでは倍近く変わってくるというのも、分からなくもない。
そして本来俺が知っているジェネラルは、魔石のサイズも小などではなく、最大で大魔石まで持っていた存在だ。そのクラスになって来るとステータスも平均200を超えてくるし、今戦ってもまず勝ち目はない。けど、今のこいつなら……。
『(プル~?)』
「(……そうだな。相手は1体だけ。『リーダーシップ』のスキルは、結局『統率』の廉価版であることは分かっているし、仲間無しでは本領は発揮できない。なら、追加の雑魚が湧いてくる前に戦えば勝機は見いだせるはず。行くぞ!)」
『(プル!)』
よし、やってやるか!
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