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ガチャ013回目:快適な部屋作り

「ここがお部屋だよー!」


 カリンちゃんに案内された部屋は、ちょっとベッド周りが汚いが、それ以外は清掃が行き届いている良い部屋だった。広さとしては4畳くらいはあるかな?


「ここが2日間借りられる部屋なんだな」

「そうだよ! 気に入ってくれたら、いつでも延長できるからね!」

「ああ。飯は美味かったし、頑張って稼ぐよ」

「えへへ、良かった。お父さんに伝えておくね!」


 お父さん……。あの厨房にいた、コワモテの強そうな人で間違いないな。


「お兄さんお兄さん」

「ん?」

「お兄さんって冒険者さんだよね?」

「そうだよ。なりたてだけどね」

「じゃあじゃあ、朝は早いよね。起こした方がいい?」

「良いの? ……あ、有料だったりする?」

「ううん、お父さんのこと褒めてくれたから、タダで良いよ!」

「お、おう」


 金が発生してたのか。と言ってもカリンちゃんの裁量によって決められる以上、この子の小遣い稼ぎのような物なんだろう。となれば、金額としては銅貨1枚とかそんなレベルだったりするかな?

 まあそれでも俺にとってはなけなしの金だ。厚意は甘んじて受けよう。


「じゃあ頼めるかな」

「はーい。じゃあね、お兄さん。おやすみなさーい!」


 カリンちゃんが元気よく部屋を出て行った。あんな可愛い看板娘がいるなら、ここは良い宿で間違いないな。うんうん。


「さて、イリス。もう出て来て良いぞー」

『プル? プルル!』


 首元からニュッと顔を出し、そのままキョロキョロしてから飛び出した。そして部屋を見渡した後、イリスはベッドに飛び乗り全身をアメーバ状に広げた。


「ん?」

『プルルルル……』


 何をしているのかと見守っていると、広げていた身体を収縮し、元の大きさへと戻った。そこから窓辺へと近付くと、器用に触手で鍵を開けて窓を全開にする。そしてそのまま布団の中に僅かに残っていた汚れとか、見えないところにいたダニやらシラミみたいな何かをペッと吐き捨てるのだった。


「おおー。イリス、わざわざありがとな」

『プルプル!』


 てか、異世界でもそういうのっているんだな。

 まあコレからこの部屋が俺たちの拠点になるわけだし、どうせ休むなら綺麗な方がいいよなー。


「ふむ。ここでお世話になる以上、俺も最低限部屋の掃除はするべきかと思ったが……ベッドほど汚れている場所は、この部屋には無さそうだよな」

『プルーン。プルプル』


 イリスが触手を伸ばして、俺のポケットをツンツンした。


「ん? ああ、そうだったな。ほら、俺の冒険者証だ」

『プルー!』


 イリスが興味津々で冒険者証を眺めてる。にしてもステータスFFFかぁ。周りの反応やゴブリンの討伐報酬の金額からしても、ゴブリン程度誰にでも容易く狩れる対象であり、複数倒せるならレベルも上がってもっとステータスは高く上昇していないとおかしい。思い返せば、あれはそういう反応だったように思える。

 となると、地球にいた頃の人間の初期の平均ステータスって、こっちの世界の方が更に高い可能性があるな。なんせ、地球では冒険者同士の子供は初期ステータスが高くなる仕組みだったのだ。そしてこの世界ではステータスシステムが()()()()存在しているはずだ。

 第一世代の人間が、ミルフィーユのように何層も世代を重ねてきた世界の人間に敵う訳がない。FFFが実際どの程度の数値なのかは分からんが、平均ステータス15から20くらいがスタンダードとか、平気でありそうだよな。

 対する俺は、第一世代の最弱代表みたいなステータスなのだ。そんなの敵う訳がないじゃないか。……つまり、純粋なステータスで言えばカリンちゃんの方が俺より上まであるわけだ。


「異世界は怖いなぁ」

『プル?』

「いや、なんでもない。俺達はこの世界について知らなさすぎる。明日になったら、クエストも大事だけど、この世界の事について調べてみようか」

『プル~!』


 さて、さすがに今日は疲れたな。今何時なのかわからないけど、もう寝ちまうか。

 そうして俺は、イリスを枕に眠りに落ちるのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 カリンはパチっと目を覚ますと、ベッドから飛び起きて部屋の窓を開けた。

 外はまだ朝日が顔を出したばかりで、まだまだ薄暗い。


「うん、今日もいいお天気になりそう!」


 カリンの朝は早い。

 『夜のとばり亭』の従業員は一家の3名だけで回している。料理長の父は夜遅くまで仕込みをしている為、朝は遅い。代わりに母が食事の用意をし、カリンと共に祈りを捧げ早めの朝食を済ませる。

 そして母はそのまま宿泊客分の朝食を用意し、カリンは副業で始めたモーニングコールの仕事を開始した。といってもこのモーニングコールは、利益率はよくない。連続宿泊をする客を対象として、銅貨1枚を対価に朝食前に起こしてあげるというものだ。

 そしてこのモーニングコールは、カリンへの支払いを拒んだ者、カリンの家族を悪く言った者、逆にカリンの両親から不合格の烙印を押された者は受けられなかったりする。


「お兄さん、朝だよー!」


 ノックの後に部屋の鍵を開け、中へと入り窓を開け放つ。すると部屋に光が差し込み、優しい陽の光が住人の顔に降り注いだ。

 外からやって来た年上の男の寝顔を、カリンはマジマジと覗き込む。


「昨日は暗くてよく見えなかったけど、綺麗な顔立ちかも……あれ? 枕は?」


 備え付けで置いてあったはずの枕が見当たらなかった。

 それもそのはず。枕代わりに使用していたイリスは、カリンの侵入に気付きショウタの服の中へと隠れ、本来の枕は足元に放り投げられていたからだ。


「まあ良いや。お兄さん、起きて―! 朝だよー!」

「zzz……」

『(プル~)』


 身体を揺すられてもショウタは起きる素振りは見せなかった。

 世界を渡った疲労がたまってるのかもしれない。そう思ったイリスは、このまま自分ももうひと眠りするのも良いかもしれないなどと考え始めていた。


「ご飯の時間過ぎちゃうよー!」

『(プル!? プルプル!)』


 イリスはその言葉に慌てて反応し、カリンとは逆側からショウタの身体を揺さぶった。


「……んぁ?」


 そうしてモーニングコールが2人がかりになったことで、ようやくショウタは意識を取り戻したのだった。

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― 新着の感想 ―
いつもハーレムで起こしてもらってたんやろなぁ
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