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ガチャ001回目:洞窟の中で

。狭い洞窟の中を、獣の咆哮と金属のぶつかり合う音が響き渡る。()()にもこのモンスターとエンカウントしてかれこれ十数分。相手に細かい傷はあるが、こちらはノーダメージ。戦況で言えば優勢だが、体力的には劣勢だった。


『ヴモオオッ!』

「くっ!」


 その巨体から振り下ろされる斧をなんとかバックステップで回避し、モンスターの死角に潜り込んだ仲間に合図を送る。


「イリス、軸足!」

『プル!』


 地面に虹色の粘液が広がり、それを踏んだモンスターは足を取られバランスを崩した。イリスが作り出す粘液は超強力なとりもちになる。一度踏んでしまうと、しばらく自由には動けなくなるので便利な技だ。


『ヴモッ!? ヴモッ!!』


 ただ問題があって、連発ができないから手足の内どれか1つしか封じられないんだよな。そこは、今後の課題だな。


『ヴモモッ!』

『プルン、プルーン』


 自由に動けないまでも、両手と片足が無事であるため、斧や盾、ストンピングを使って足元にいるイリスを必死に攻撃していた。その一撃一撃が致命的な威力を秘めており、俺の身体よりも大きい斧や盾なんて食らえば、小型のイリスではひとたまりもないだろう。

 だが、こと戦闘においては相手よりもイリスの方が歴戦の戦士だ。彼はとりもち部分と本体を素早く分離し、攻撃を全て見切りながらこちらへと転がってきた。


『プルプル』

「ご苦労様、イリス。あとは任せてくれ」

『プル~!』


 液体にも個体にもなれる便利なスライムボディを使って、イリスがその場で何度も跳ねた。どうやら応援をしてくれているらしい。相棒が頑張ったんだ、今度は俺が決める番だな。

 改めて相手のステータスを見ておくか。


*****

名前:ミノス

レベル:27

腕力:230

器用:210

頑丈:180

俊敏:115

魔力:60

知力:40

運:なし


(ブースト)スキル】剛力、怪力

(パッシブ)スキル】身体強化Lv2、体術Lv1、斧術Lv2、盾術Lv1


装備:バトルブルアックス、牛人の盾

魔石:中

*****


「ちまちました攻撃じゃ、削り切るのも一苦労だな」

『ヴモォ……!』


 俺が剣を構えたのを確認し、ミノスが盾を地面に突き立て斧を構えた。とりもちの粘性が弱まるまで、防御姿勢で時間稼ぎをするつもりか。『賢さ』が低いくせに理性的じゃないか。

 このままじゃジリ貧だし、出し惜しみをしている場合じゃないな。とりもちが効果をなくす前に、とっととケリをつけるか。


「うおおお!」


 俺は地面に突き立てられた盾にあえて真っ向から突撃した。ミノスはそれを迎え撃つため、絶好のタイミングで斧を振り下ろす。


『ヴモオオッ!』


 盾の真正面に到着した俺は、そのままもう一歩盾に向けて踏み込んだ。


「……『次元跳躍』!」


 その瞬間、俺は盾の内側……奴の死角へと瞬間移動した。


『ドガッッ!!』


 背後から斧が地面に激突した音が聞こえるが、俺は気にせず直上へと跳躍。俺を見失い盾の向こうを覗き込んでいるミノスの首元に向かって、真下から強襲した。


「オオオオッ!」


『斬ッ!!』


 不意打ちが決まり、相手の首筋がぱっくりと開く。即座に熱湯のような高温の血液が傷口から溢れ出し、視界を埋め尽くした。


「うあっつ!?」


 奴の身体を蹴って鮮血の空間から抜け出すも、腕に思いっきりかかってしまった。


『プル!』

「うおぉ……サンキューイリス」


 火傷しそうな痛みも、イリスが腕に巻き付いてくれたことですぐに消え去った。どうやら付着した血をすぐに飲み込んでくれたらしい。


「美味いか?」

『プルー』


 微妙って言ってる気がする。でも吐き出さない辺り、ゴブリンの血よりはマシみたいだな。


【レベルアップ】

【レベルが26から31に上昇しました】


「おお! ついに31になったぞ!」

『プルーン! プルプル!』


 突然あんなのと出くわして、俺の不運もいい加減にしろよとは思ったが、災い転じてって奴だな。

 倒したモンスターを見てみれば、まだ喉元から血がドクドクと溢れている。捌くなら新鮮な方が良いんだろうけど、血抜きが最優先か。イリスも好き好んで飲みたくはないだろうし、ある程度血が出なくなるまではこのまま放置だな。


「ふぅ……」


 目標のレベルに到達したことで気が抜けたようで、全身からどっと疲労感が押し寄せてくる。仕方なくモンスターの亡骸のそばで腰を下ろし、イリスを膝に抱えた。


「にしても、ここまで来るのにめちゃくちゃ苦労したよなー」

『プルプル』

「ガチャを回す前に、ちょっと思い出すくらいは良いよな」

『プル~ン!』


 イリスを撫でていると心が安らいだ。

 そのまま俺は、あの日のことを思い浮かべ始めた。

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