27
街の中心部にある時計塔がけたたましく鐘を鳴らした。
時刻を告げるはずの鐘は、今やこの異常事態の訪れを街中へ叩きつけるように鳴り響いている。
「……空に浮かぶ、乗り物…」
悲鳴を上げ逃げ惑う生徒達の波の中で、リオルはただ青ざめた顔で飛空挺を見上げていた。
その間にも飛空挺からはいくつもの爆弾が投下され、シルヴァンが間一髪でそれを空へと受け流す。
「……クソっ、まだ増えやがんのか……!」
割れたままの結界の外から新たに三隻が姿を現し、そのままゆっくり街の方へと舵を切る。
その動きに一瞬気を取られたシルヴァンの風が僅かに揺らいだ。
「しまっ……!」
制御を失ったいくつかの爆弾がこぼれ落ち、そのうちのひとつが足を止めるリオルに向かって降ってくる。
周囲の生徒達が逃げ出していくのを視界の端に捉えながら、リオルの目は自身へと迫る爆弾のみを追っていた。
リオルの瞳に映る世界の全てが、まるで時間を引き伸ばされているかのようにゆっくりと流れる。
「……間に、合わねぇっ……!」
シルヴァンのジルコンが虚しく光り、風が宙を切った。
その時──澄んだ青が辺りを包む。
尻もちをついたリオルの目の前に、水の玉に閉じ込められた爆弾がただ静かに浮いていた。
リオルの身体中から汗が吹き出す。
逸る鼓動を落ち着けるように胸を押さえ、肩で激しく酸素を取り込む彼の頬で、サファイアが濡れたように輝いていた。
「……まだやれんなぁ?」
突風がリオルの髪を巻き上げ、爆弾を閉じ込めていた水の玉が空へと高く舞い上がる。
リオルは震える手を固く握り締め、呼吸を整えるように一度大きく息を吐いた。