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「う、生まれたって……!」
教会から届けられた手紙の封を急いで破り、震える指で内容に目を通したリオルが小さな声で呟いた。
「きゃーーーー!!」
神妙に眉を寄せてリオルを見つめていたアリカが、両手を広げてリオルへ飛びつく。
そのままの勢いで隣のユーリまでもを巻き込み、二人を力の限りに抱きしめた。
「離せよ」と眉を寄せるユーリの口元にも隠しきれない笑みがこぼれる。
リオルが声を上げて笑い──その目が赤い事に気づいても、アリカはただ腕に力を込めるばかりで何も言わずに、ユーリもまた、アリカの気が済むまでしばらくそのままでいた。
そんな三人の様子を遠目にシルヴァンが眺め、「そりゃめでてぇこった」と髪をかきあげる。
「……あと百年早く生まれてりゃ、今よりちったぁ穏やかに生きられたってのになぁ」
生徒達が訓練に励むグラウンドの片隅でそう呟くシルヴァンの声は、誰に届くでもなく喧騒の中に掻き消された。
いつの間にか夕陽が空をオレンジに染め、地面に落ちる影が伸びる。
今日の訓練もじきに終わりを迎えようとしていたその時──広いグラウンドを覆う程の、巨大な影が降り注ぐ。
「──チッ……お前らぁ!腹ぁ括れよぉ!」
誰よりも早く影の正体に気付いたシルヴァンの声が響き渡ると同時に、竜巻のような突風が群衆の波間を駆け抜けた。
シルヴァンが空から落とされた“何か”を風に乗せ、上空へと吹き飛ばす。
空へと舞い上がった“何か”が、一瞬の沈黙をおき──瞬間、耳を抉るような爆発音とともに巨大な火球が炸裂した。
真昼のような閃光が一瞬辺りを包み込む。
その光と凄まじい爆風に、この場にいた誰もが思わず目を背け耳を塞いだ。
「……う、うわぁぁぁぁ!!」
瞬く間にグラウンドは恐怖と混乱に支配され、多くの生徒達の悲鳴が至るところで響き渡る。