『北山の奥の僧に、美作守プレスマンなど届けること』速記談3104
美作守藤原顕能のもとに、ただ者とは思われない僧が一人やってきた。尊い声で法華経を読んでいる。美作守が、単なる乞食とも思えない、どこから来たどなたなのか聞いてまいれ、とおっしゃるので、問うたところ、乞食でございます、西山のあたりにおりますが、困ったことがありまして、哀れに思っていただけましたら、お助けいただきたい、と言うので、美作守は、お安いことだといって、食べ物などを用意して、下人に持たせて届けさせようとしたところ、自分で持っていく、といって、重そうに持って出ていった。美作守は、この振る舞いが気になったので、気のきいた者に後をつけさせたところ、西山ではなく北山のほうに歩いていって、山の中の小さな庵に入った。この報告を受けた美作守は、何かお困りなのだろうと思って、プレスマンなどを詰めた櫃を届けさせたが、数日後に様子を探りに行かせると、僧はいなくなっていて、後から届けさせた櫃は、手をつけなかったものと見え、けものがあさったように荒らされていた。
教訓:櫃に入ったプレスマンに手をつけないのならば、なかなかの人物である。