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その67 ちんちんの幽霊

 いわゆる心霊写真ってあるじゃないですか。


 あれ、どれも写り込んでる幽霊って、いつも手とか足とか顔とかばかりじゃないですか。


 まぁ……言っちゃえば『公共の場に出せる部位』しか公共の場に出てきてないわけですよ。


 じゃあ幽霊にもTPOの概念とかあるの? っていうとべつに全然そんなことなくて。


 実際、そのへんにいる幽霊とかには公共の場に出しちゃいけないところがもろ出しなやつもそこそこいるわけです。


 ………まぁ、おっぱいとか、ちんとか、まんとかですよ。


 私、昔からちょっと『見える人』なんですよ。霊感があるっていうのか………。


 子供の頃からずっとなので、いちいち騒いだりしませんけどね。


 見えるときもボンヤリ影みたいに見えるときもあれば、くっきりはっきり実体があるように見えるときもあります。


 で、あのとき見えたのは後者でした。


 いつ見えたのかっていうと………高校の修学旅行のときですね。3年のときの………。


 場所は沖縄でした。市内のホテルに学年全員で泊まっていたんです。3泊4日の、3泊目の夜のできごとでした。


 大きなL字型の建物でした。エントランスホールがそのL字の角のところにあって、自動販売機のコーナーもそこに隣接していたんです。


 夜中の8時くらいだったでしょうか……夜の自由時間のときでした。


 私、大浴場で風呂を浴びた帰りで、ホールのソファに腰かけて、友達を待っていました。自販機で買った冷たいコーラが、湯上がりの熱っぽい体に心地よかったのを覚えてます。


 それでぼーっと、ときどきホールを横切る他のお客とかを眺めてたんですが………ふと、気づきました。それがいるのに。


 それはエントランスホールの自動ドアのすぐそばの床にいました。


 ちんちんです。


 はい、ちんちんです。男のアレです。


 私の股間にもついてるような、見慣れたちんちんがホテルの床にいました。まぁ……いわゆる竿の部分と、根元の袋の部分まであって、それが一匹の大きな芋虫のように、全体を伸び縮みさせながら床を這っているんです。


 竿の先端を頭のように持ち上げて、思いっきり伸ばして、それを床にくっつける。そしたら残りの部分を引っ張り上げるようにして前進する。そういう動きをしていました………。


 これまでにもなんども似たような幽霊は見たことありましたから、べつに驚きはしませんでしたね。"ああ、なんかいるなぁ"って感じで。


 それで呑気に"あのちんちん、動きかわいいな……"とか思いながら、そのちんちんの幽霊がえっちらおっちらホールを横切っていくのを眺めていました。


 ちんちんのほうは私には気づかなかったみたいで、座ってる私から数メートル先の床をのたのた進んでいきまして………。


 それでちんちんがやがてホールから出て、ホテルの奥の方にいくのが見えました。


 そのころ、私が待っていた友人もちょうど帰ってきまして。私もすぐに部屋に戻ることになったんです。


 幽霊の話はしませんでした。こういう話、他人に話して信じてもらえたことはないので…………。


 それで……翌日が修学旅行の最終日で、午前中はちょっとだけ観光があって、それから空港で飛行機に乗り、夕方には関東に戻って………その次の日は祝日で休みでした。


 で、休み明けに登校すると………不思議なことがあって。


 なんか、教室がいやにガラリとしてるんですよね。


 私、いつもそんな朝早く登校するほうではないし、その日も始業10分前くらいに教室についたんですけど………全然クラスメイトが登校していないんですよ。いつもの半分くらいしか。


 おまけに、登校してるのは男子生徒ばかりで………。


 女子が。


 女生徒たちがみんな休んでいるんですよね。


 担任の先生も、その日はなんだかひどく落ち着かない様子で………。女子たちがみんな休んでいる理由を訊いても、はぐらかされて。


 それで……私、気になって。色々調べたんです。友達のツテとか使って。


 それで分かったんですけど。


 私と同じ学年の女生徒。それに女性教員。


 そのとき、みんな妊娠してたんですって。


 みんな何が起こったのかわからなくて………誰も何もはっきりしたことは言えなくって…………。


 結局、女生徒たちがまた登校できるようになったのは数ヶ月後で。


 そのころ、婦人科の近くでウチの学校の生徒を見なかった日はないくらいだったんです。


 何があったのか……誰も原因はわからないみたいでしたが………。


 私だけは………。


 あの修学旅行の夜、ホテルに入り込むあの幽霊を見ていたから…………。


 なんとなく想像がついてしまいました。


 あの幽霊…………。


 あの、男性器の幽霊は………。


 ホテルの、女子がまとめて泊まっていた棟の方向へ消えていっていたんですから。


 …………これ、止めなかった私が悪いんでしょうか?

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