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その51 合わせ鏡の死神

 怪異や幽霊って、"信じる人のところにやってくる"って言いますよね。


 こんにちは。私の番ですね。名前は……別にいいですか。小学6年生です。上手く語れるかわかりませんが、よろしくお願いします。


 これは私の友達が死ぬ直前の話です。


 その友達、すごく怖がりな子で。図書室にある『学校の怪談』の本とかも読めないような子だったんです。


 なんていうか……人を疑うことを知らない子だったんですね。


 それはそれで良いことだったのかも知れないけれど、そこにつけこんで意地悪なことをする男子とかも多くて。


 よく、"机の中にゴキブリが潜んでるぞ〜!"とか、"階段の13段めを踏むと死んじゃうんだぞ〜!"とか、あることないこと吹きこまれて、困っているところを見ました。


 普段は、そういう男子のイタズラに私達もウンザリしてましたから、その子に対して"そんなのウソだよ"とか、そういう言葉をかけてあげてたんですけど。


 でも、ずっとそれだと飽きちゃうじゃないですか。


 だからあのときだけは………"本当だよ"って言ってしまったんです。


 それは、いつものようにクラスの男子がその子に対してウソを吹きこんでいたときでした。


 "合わせ鏡の真ん中に立つと、鏡の向こうから死神がやってきて殺されちゃうんだぞ〜!"って。


 多分、またどこかネットか本か……くだらないところからそういうネタを仕入れてきたんだと思います。


 でもその子、その話を聞いて震え上がってしまいまして。


 青ざめた顔で泣きそうになりながら、私に助けを求めてくるんです。


 でも私、いい加減そういうのに飽き飽きしてまして。


 だから、"たまにはノッてみるか"と思ったんです。


 "そうだよ〜。だから合わせ鏡の真ん中に立つと殺されちゃうんだよ〜"って私が言うと、男子のほうも意外そうな顔をしていましたが、すぐにニヤリとしてうなずきました。


 その男子、"その死神は大きな鎌で、おまえの喉笛を切り裂いちゃうんだぞ〜!"って言って、指で喉をかききる仕草をしたりして………。


 ………そうしたら、ウザいことにその子、泣き出しちゃったんです。


 それで、私もその男子も先生に怒られたし……やっぱやめたほうがいいですね、こういうのは。


 それで、その日の学校が終わって………私は普通に家に帰って……………。


 翌朝登校したら、朝の会で先生が、"あの子が亡くなった"ってみんなに伝えてきたんです。


 私、びっくりしまして………直後の臨時全校集会のあいだも、ずっとうわの空だったと思います。


 あの子がどうして死んだのか……先生たちはなにも教えてくれませんでしたが、クラスの女子のひとりが、人づてに聞いたのを教えてくれました。


 あの子、喉を刃物で切り裂かれて死んだんですって。


 たくさんの血を喉から溢れさせて………長い間、自分の血の海の中で苦しんで………泣きながら死んだんですって。


 犯人は見つかっていないそうで……………。


 私、ゾッとしました。だってそれ、昨日私が男子と一緒にあの子に教えた怪談の死に方そのままでしたから…………。


 でも、同時に不思議に思ったんです。


 もしもあの怪談が原因であの子が死んだのなら、あの子はきっと"合わせ鏡"をやったってことですよね。


 合わせ鏡って、意識してやらないとまず成立しないと思うんですけど…………。


 でも…………。


 あの子がどこで死んだのかを聞いたら、私、"なるほど"と納得しました。


 あの子、電車通学だったんですよ。


 それで、電車内で死んだんですよ。


 ホラ、電車って、左右の壁に窓がずらりと並んでいるじゃないですか。


 窓ガラスって光を反射してるじゃないですか。


 それって実質、合わせ鏡じゃないですか。


 だから彼女は殺されたんです。合わせ鏡の真ん中に立ってしまいましたから…………。


 ………それで、そこで問題なのはですね。


 私、この結論にたどりついて『納得』してしまったわけです。


 つまり、『完全に信じてしまった』わけです。


 ………幽霊や怪異って、"信じる人のところにやってくる"って言いますよね。


 私、ここまでずっと二枚のガラスの中間に立たないよう、壁に貼りついて歩いてきたんですよ。


 この先の人生、ずっとこんな感じで生きなきゃならなくなっちゃったんですよ。


 誰か助けてください。


 もしくは、全てウソだと………私に信じさせてください。

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