表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/69

その41 幽霊を見たことがある人はいても、あの世を見たことがある人はいない。

 私、幽霊ってなにが怖いかよくわからないんですよね……。


 いやホラ、世の中には昔からたくさんのホラーコンテンツがあって、様々な幽霊が描かれているわけじゃないですか。


 それでそういったものにはやっぱり、ちゃんと『視える人』も居て、そういう人にきっちり取材して作ったものとかも当然あるわけですよね?


 と、いうことは、幽霊は『いる』と考えたほうが自然なわけじゃないですか。たんに実在するものだったら、別に怖いとかなくないですか?


 で、もし幽霊が存在すると仮定して。


 それが怖いのってなんでだと思うかって話ですよ。


 やっぱり『加害してくるから怖い』『物理的にありえない挙動をしてくるから怖い』あたりが強いんじゃないかと思いますよね。


 でも『幽霊が実在する』と考えたとき、『物理法則に則ってない』ってのはないと思うんですよ。


 だって無制限に壁や床をすり抜けたり、念力などが使えるんなら、目をつけた人間をさっさと殺せばいいじゃないですか。いちいち物陰に立って怖がらせたり、周囲の物に干渉して怪奇現象起こしたりせずに。


 『殺人犯に殺されたから幽霊になった』ならその殺人犯をまっさきに殺さないとおかしいですし、『その後も強い恨みで残り続けてる』とかなら、ますます目をつけた人間をいたぶらずにさっさと殺すような挙動しなきゃ理屈が通らないじゃないですか。そんなに恨んでいるなら、凶暴さも伴っているでしょう。生きてる人間がそうなんだから。


 だからやっぱり幽霊が実在するとしたら、ちゃんと物理法則に縛られていて、その制約のなかで動いていると考えるほうが自然なんです。


 んじゃあいわゆる『成仏』ってなに? って話になるわけですよ。


 ほら、幽霊が物質として存在するなら、その成仏ってやつも一種の物理現象であるわけですよね。幽霊が未練を果たして、ふわーって消えるやつ。これがないと地上は幽霊で溢れちゃいますよね?


 幽霊はまぁ、視える人には『視える』わけですから? 実体があると考えるのが自然でしょう。こう、がっしりとした感じでなくても、光とかも実体に含まれますからね。


 実際、普通の人間には視えないものが視える人っていうのは実在しますし………紫外線が見える人とか、まれにいるんですよ、本当に。


 だから恐らく幽霊もそういった波長を放っているものだと思うんです。


 それで………その、人間の目に見えていたものが見えない状態になるっていうのは、ごくごくありふれた物理現象で。


 水の蒸発とか。


 でも、蒸発した水って別にこの世から消えたわけじゃないんですよね。かたちが変わって人間の目に捉えられなくなっただけで。


 じゃあさ。


 今まで『成仏』した無数の幽霊たちも、実はかたちを変えただけでそのへんに山ほどいるんじゃないですか。


 例えるなら………水中の微生物が寿命を終えたとき、水中に体が溶けだしてあとかたもなくなるように。


 そんな感じで、薄く拡散してしまった幽霊たちの混じり合った大気を、我々は吸っているんじゃないですか。


 だって、そう考えたほうが………。


 スジが通りますよね?


 ………あともうひとつ。


 もし、『成仏』っていうのが、そういうことだとしたら…………。


 『あの世』っていうのは実在しないってことですよね。


 私達って、死んでもこの世から逃れられないんですね。


 幽霊になって抵抗しても……絶対にこの世界から逃れられないんですね。


 長い時間が経っても………国が滅んでも、地球が滅んでも、宇宙がエネルギーを使い果たして、完全に何もかも静止する遠い未来の果てでも。


 私達ってこの世から逃れられないんですね。


 だって、幽霊を見た人はいても、あの世を見た人はいないんですから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ