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その28 グラビアアイドルのポスター

 はじめに注意なんですけど、ちょっとこの話下ネタがつよめです。苦手な人はまぁ、俺の話は飛ばしてくれてもオーケーですよ。


 じゃあはじめます……(咳払い)


 えー、高校のときひとり暮らししてたんすよ、自分。


 まぁ家庭の事情とか色々あって、高校入学のときに親元を離れて、安アパートで暮らしてたんですね。


 んでまあ、バイトしーの、友達つれこみーのの、優雅な男子高校生ソロ暮らしライフをエンジョイしてたわけです。


 でですね、やっぱ思春期男子の関心ごとなんて9割エロなわけじゃないですか(笑)


 今はネットとかでいくらでもそういうの歳ごまかして見れますけど、当時はまだまだそういうのなかったんでね。レンタルビデオ屋のピンクののれんの向こう側に、悶々と思いを馳せていたりしていたわけです。


 そんな夢追う若者が合法的に手に入れられるデカめのスケベコンテンツといえば、グラビアアイドルのポスターでした。


 当時俺、あるグラビアアイドルのファンだったんですよ。なんかの雑誌の表紙で最初見かけましてね。その……正味なハナシ、一目惚れってカンジでした。


 その娘が青空をバックにオレンジのビキニで、満面の笑顔のプール遊びをしてる写真に、俺、心わしづかみにされたんです。その雑誌は『保存用』『観賞用』『実用』と3冊も買いましたし、発売される写真集とかの情報も頑張って集めて、少ない小遣いをほとんどつぎ込んでたと思います。


 東京の本屋で握手会イベントがあったら学校サボって前泊してましたし、少しだけど会話した言葉を何度も頭の中で繰り返して、ひとりでニヤけたりしてました。


 でもその娘、売れてなくてですね……。


 さっき言ったイベントなんかも、お客が自分含めて10人いるかいないかくらいのときも珍しくありませんでした。


 写真集も田舎の小さな本屋で入荷されるようなことはまずなくって、いちいち店主のおじさんに言って注文しなきゃいけませんでしたし………。


 やっぱり、胸がデカいだけじゃ厳しい世界なんですかねえ………。


 でもそれを実感するたび、"俺がこの娘を支えてあげるんだ!"とか思っちゃったりしてました。


 ……それくらい好きだったんですよ。


 だから当然、アパートの部屋にそのグラビアアイドルのポスターなんかも貼ってたんですね。賃貸なので四隅をテープでとめて。


 A1判の、でっかいサイズのポスターでした。写真集を買った人だけが応募できる懸賞の企画で当たったんです。


 ハワイの白い砂浜に、同じ小さめ白ビキニのその娘が、ふり乱した長い髪を太陽に透かして、同じくらいの眩しい笑顔を浮かべていました。少し前かがみの、両腕で胸の谷間を強調するような姿勢で……本当、見ているだけで明るい気分になるような………。


 家に帰るたびにそのポスターを見て、元気をもらっていました。


 それで、その……ほぼ毎晩『お世話』になっていたんです。


 だから彼女とかも全然欲しいと思わなくって。友達からは"サビシーやつだな"とか、"おシコり侍"とか、よくからかわれました(笑)


 で、そんな感じで時間が過ぎてって……高校3年の夏ごろだったかな。


 高卒で就職するつもりでしたし、それもツテで上手くいきそうな感じが出てたんで、夏休みのあいだもバイト以外は家でダラダラしてました。夜ふかしもよくしてて、その日の夜も深夜まで起きてました。


 その夜はひどい熱帯夜で……湿度も高くてムシムシするし、汗ばむしで………とても寝てられなかったんです。だからもう"いっそ朝まで起きてよう"と思って、同じ漫画を何度も読み返したり、ビデオに録りためてた映画を見まくってたりしてたんですね。


 でもそれもさすがに飽きてきて。どうすっかなーって思ってたときに壁のポスターが目に入って。


 でまぁ、"そういや今日はお世話になってないな"と………。


 そう思ったらもう猛烈にムラムラしてきまして……布団から立ち上がって、壁のポスターに全身をこすりつけるように…………その、『した』んです。


 いや(苦笑)、普段はそんな感じじゃないですよっ!?


 こんなやり方したのはこのときが最初で最後でしたよっ!?


 でもそのときは深夜で変なテンションだったし、少し頭おかしかったんですよっ!!


 …………い、いやまぁその話はもうよくって。んで、その、終わったらですね。俺の身体から出た『アレ』がですね………そのポスターの女の子の顔と体にべったりかかってしまったんですね。


 で、なんだかそれを見たら…………"うわ、汚え"って思ってしまいまして…………。


 急に冷めちゃったんですよね。


 その娘に飽きたんです。いきなり。


 さっきまであんなに好きだったのに、壁のポスターが急になにかしょーもないものに見えました。


 よく見たらポスター自体もなんかヨレてるし、窓からの日光で少し色あせてるのも気になりまして。


 "もういらないなコレ、捨てよう"って思ったんです。


 それでポスターを壁から剥がして………。


 そのままじゃゴミ箱に入らないから、細かく千切ろうとポスターの長辺の半ば辺りに力を入れて。


 ふたつに裂いたんです。


 そしたら、


 "ぎゃああああああ!!!!!"って絶叫が手元からあがってきて。


 避けたポスターの断面から真っ赤な血みたいな液体がドバドバ溢れてきて、俺の足と床をめちゃくちゃに濡らしたんです。


 俺、驚いてその場ですっ転びました。それで床に頭を打って……痛みにギュッと目をつぶり、涙を拭いました。


 で、混乱しつつポスターを見たんですけど、そしたらもうさっきの血みたいなものは何もなくって、ごく普通に裂かれたポスターが床に落ちてるだけです。


 ポスターに描かれたその娘は、腹のあたりで真っ二つでした。


 ……結局、あれは単なる夢だったのか………さっぱりわからないまま、床で固まって朝を迎えました。


 そのグラビアアイドルの引退が発表されたのはそれから数日後でした。


 それ以来、俺、セクシーな女の人の写真がどうにも苦手になってしまいましてね。


 雑誌の表紙とか、広告とかで水着の女の人とか目に入るじゃないですか。


 それがなんだかすごくグロテスクなものに見えるんですよ。


 血が通った魂のある人間なのに、誰かに命令されて『私を食べて』って言わされているような印象が………。


 そんなの『言わされている』ぶん、と畜場の豚や牛よりも残酷じゃないですか。


 ヘドが出ます。

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