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その22 死神の服は何色か?

 私ちょっと珍しい仕事をしてまして。それにまつわる話なんですが……。


 ここ数年、VR技術がすごく発展していますよね。ゴーグル型のディスプレイを頭につけて、仮想空間にいるように思えるやつ。


 まぁ大抵はゲームとか、ユーザー同士のコミュニケーションとかに使われる場面が多いですけど、医療分野でも使えないかどうか色々模索されてるんですよ。


 そのうちのひとつが精神医学の分野です。私の仕事はそれに関わる仕事でして。


 たとえば酷いトラウマを抱えて心身に不調をきたしている人がいるとするじゃないですか。そういった人への治療の方法のひとつとして、"暴露療法"というものがありまして、ざっくり言うと、『トラウマの原因となった出来事に安全な環境で何度も向き合うことで、"慣れ"を発生させる。それにより、精神への負荷を軽減させて心身の回復を目指す』というものです。


 で、これにVRが使えるんじゃないかと。


 私の仕事は精神科医から依頼を受けて、患者さんのトラウマになった出来事をVRで再現することなんですよ。ある種のCGデザイナーとでも言いましょうか……。


 具体的な手順を言うと、まず心身の不調に悩んでいる患者さんが精神科医さんのところにくる。精神科医さんはその不調の原因が過去のトラウマにあると診断をくだすと、その治療として暴露療法を選択する。


 そしたら精神科医さんは、患者さんからトラウマの原因になった事件や事故の内容を細かく聞きとって、ときには警察と連携とかもしたりして、私に向けて発注をかける。


 私は発注を受けてその事件事故を可能なかぎり細かいところまで追体験できるVRコンテンツを作成し、納品する。


 患者さんはそのVRコンテンツを何度も体験することで、自身の恐怖に"慣れる"んです。


 ……イメージつきましたかね?


 とにかく、私はそうした仕事をしています。


 それで、コンテンツを製作するにあたって、精神科医さんが患者さんから細かく事件事故の内容を聞き取るんですが……。


 とくに事故の話ですね。これにちょっとみょうな点がありまして。


 事故といってもいろいろあって、交通事故、労災、自然災害中の事故、海難事故など……まぁ多種多様です。


 それで、やはり暴露療法が必要になるような患者さんだと、命に関わるような重大事故ばかりなんですね。


 たとえば自動車が自分に突っ込んできたり。


 倉庫のなかで積み上がった荷物の下敷きになったり。


 山道を歩いてるときに地すべりに巻き込まれたり。


 正直、発注内容を確認しているだけでもゾッとするような内容のものもたくさんあります。最近では転覆した船から投げ出されて溺れかけた方の体験とか……まぁそれは脱線ですが。


 で、ですね。みょうな点、というのが。


 そういった命に関わる重大事故のVRの発注内容に、ときどき『青い服を着た女性』というのが含まれてるんですよ。


 たとえば交通事故のときの歩道に立っていたり。


 倉庫内で下敷きになったときに遠くからこっちを眺めてたり。


 地すべりの直前に山道の前方に居たり。


 荒れた海の波の向こうに見えたり。


 どう考えてもそこに居ること自体が不自然なのに、事故にあった人たちは口を揃えて『青い服の女がいた』と言うんです。


 あとから思い返してもはっきり覚えているくらいなんですから、VR作成時に無視するわけにもいかないですし……しかもよくよく特徴を訊くと、『上下真っ青な服を着た、長い黒髪の女性で、顔はよく見えなくて、まっすぐにこちらを見ていた』と、完全に一致しているんです。3Dモデルを使い回せるほどに、毎回同じ特徴の女が。


 たぶん、これ死神です。


 まぁでも……


 『青い服の女』を見た人はみんな生き残っているのですから、もしかしたら私たちを守ってくれているのかもしれませんね。


 その場合、"本当に危険な死神"はどんな色の服を着ているか、わからないですけれど。


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