その11 友人の赤ん坊
地元に帰ったときだけ会う友達っているじゃないですか。会う間隔のスパンが半年以上空いているような人。
私にもそういう友人がいて、高校の同級生だった人なんですけど。その人は地元の工場に就職して、私は東京のメーカーに就職したから、私のほうがお盆や年末年始地元に帰ったときに会う感じで。
もちろん仲が良かったんで、その人が結婚するって聞いたときは心から嬉しかったですね。相手の人もいい人そうで。
それでまぁ、2年くらいしたころにその人に子供が生まれたってんで、お盆に帰省したときに見せてもらったんです。
赤ちゃん、可愛かったですね。月並みですけど、玉のようなお子さんで……まるまるとしていて、全然人見知りせずにニコニコしていて。
年末年始に帰ったときも、すくすくと育っているみたいで、私もなんだか自分の子供みたいな気持ちで見守ってました。
もともと私の友人、子供好きだったんで、その人も嬉しそうで……夫婦仲もすごく良さそうでしたし、まさに幸せというものを体現したような夫婦だなぁって。
だからその次に会ったときに、別の赤ん坊を抱いていても、びっくりはしましたけど、あまり不思議に思わなかったんです。
二人めなのかと訊くと、友人は頷きました。
いつの間に生まれたんだと訊くと、産んでないって言いました。
そこでなんだかちょっと嫌な予感がして、最初の子供の姿が見えないけど、どうしてる? って訊くと、その友人、もういらないから、って言ったんです。
それ以上は怖くて訊けませんでした。
あれから数年経ってますが、友人の家には今も赤ん坊がいます。




