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悪霊だった私が異世界で女神になるまで  作者: 卯双誉人
第1章 異世界幽霊
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第14話 精霊契約について

 街を勢いよく抜けていき、街の門があるところまで来た。

 門番が二人、驚いた表情でこちらを窺った。


「ちょ、ちょっと止まりなさい!」

「びゃあああああああっ!」


 時速50キロ程度の速度で飛んでいるのでフィーラは叫んでいた。

 門番が立ち塞がるが、一瞬だけ力を込めて高く飛んだ。

 門番の頭上を越えて門を抜けていく。

 後ろを振り返らずに、暫く飛んで街から3キロ程度離れた所で着地した。


「はぁ……ここまで来れば大丈夫でしょ」

「ルーコすごいー! フィーラを念力で持ち上げながらこんなに飛ぶなんて」


 チルリーが楽しそうに笑い、腹を抱えていた。


「はあ……。無事に外まで来れましたけど、私の冒険者生活はもうお終いです……」


 フィーラは膝を抱えて蹲り、頭を垂れていた。


「なんか、大事にしてしまって悪かったな……」

「いえ、ルーコさんのせいじゃありません!

 ルーコさんが助けに来てくれて嬉しかったです。

 でも、大惨事になっちゃった感じはありますが……」

「まさか、話を全く聞かずに襲ってくるなんて……」

「これから、どうしましょう……。

 ギルドからの追放だけでなく、多分、お尋ね者になっちゃったかも……」


 溜息混じりにフィーラが言った。


「あいつらは死の呪いを掛けたから七日後には死ぬから大丈夫じゃないか?」

「えっ。死の呪い……ですか。けど、呪いなら教会に行けば解けますよね。お金は多少掛かりますが」

「ふーん。この世界では呪いって簡単に解ける感じなのか」

「呪いのレベルにもよりますけど」


 そこへチルリーが口を挟んだ。


「ルーコの呪いは解くの難しいと思うよー」

「そうなんですか? 呪いのレベルがたかいんですか?」

「いや、精霊見習いになった事で、精霊の誓約が掛かるようになったからねー」

「精霊の誓約ってのは何だ?」

「精霊の想念を固定化する力で、呪いや祝福、力の付与といった精霊の想念によるスキルが簡単に解けない様になるんだよー」

「ほう。それは凄いな。簡単に解かれたら意味無いしな」

「まー、絶対解けないってわけじゃないけど。大神官クラスの解呪魔法なら解けるかもしれないけど、世界に数人しかいないからねー」

「じゃあ、ギルドの問題は解決ってことだな」

「いえ、世界中のギルドは本部と繋がっていますから。私たちの事は本部に報告されると

思うので、やはりお尋ね者になるのは変わりないかも。

 しかも、ギルドの人達を大量虐殺ってことになるとギルドだけでなく各国の王族達が動く可能性も……」

「うーん、まあ、そうなったらそうなったで返り討ちにすればいいさ」


 ルーコは禍々しく笑い、フィーラは頭を抱えた。

 

「うーん。とりあえず、隣町を目指そうよー」


 チルリーが仕切り直す様に言った。


「そうね」


 フィーラが力なく微笑んだ。

 暫く無言でとぼとぼと歩いた。チルリーが言うには、道なりに進めば獣人の住むニャコ村があるという。

 そこでふと、フィーラが思い出したように口を開いた。


「そう言えば、ルーコさんは精霊見習いって言ってませんでした?」

「ああ、言ったね。

 教会で祈ったら神様と会って、精霊になる様に言われたんだ。

 でも、精霊になる為には信仰値を上げないといけないらしくてね。だから、今は見習いなんだ。

 信仰値を上げれば格が上がるみたい」


「えっ! ていう事は、私と契約出来るって事では?」

「いや……それはどうだろう。まだ見習いだからな」

「出来るけど、フィーラのレベルだと今は無理だよー」


 チルリーが事も無げに言う。


「どういう事だ? 私はまだ精霊では無いだろう」

「精霊見習いは精霊とみなされるんだよー。

 けど、ルーコは中精霊レベルだから、今のフィーラだと契約できないよー」

「じゃあ、レベルを上げればいいんですね! 私、頑張ってルーコさんと契約します!」


 目を輝かせるフィーラにルーコは苦笑した。


「契約すると私はどうなるんだ?」

「私の精霊空間に入って、私が喚んだら出てきて力を貸してもらう感じですね」

「ん? その精霊空間に入るって、自由に出入り出来るのか?」

「えーと、それは出来ないですね……」

「はぁ? つまり、閉じ込められるってわけか?」


 ルーコは目を怒らせた。


「嫌ですか? 言い伝えでは精霊にもメリットがあるみたいですよ?」

「あるみたいって、あやふやな言い方だな!」


 小精霊は命令を理解はするが、会話が出来る程ではないので精霊空間がどんな感じなのかも分からないし、精霊にとって契約にどの様なメリットがあるのかはフィーラ自身もよく知らないらしい。

 ただ、小精霊は比較的簡単に契約してくれるのでメリットはあるのだと思うとフィーラが言った。


「そうだねー。精霊空間は結構快適らしいよー」


 チルリーが口を挟んだ。チルリーは中精霊や大精霊と話した事があるらしい。


「術者次第だけど、ちょっとしたお屋敷のお庭くらいはあるみたいだねー。

 環境は木々が生えてたり小川が流れてたり、色々だって。

 小さなダンジョンみたいなものだって聞いたよー。

 あとは、信仰値が定期的に上がっていくメリットがあるよ!

 まだ力が足りない小精霊にとっては信仰値を着実に稼げるから、簡単に契約してくれる事が多いかなー」

「へえ。信仰値が稼げるのか……。しかし、いつまで拘束されるんだ?」

「それは、契約が解除されるか、術者が死ぬまでかなー」

「えっ。術者が死ぬまでって言うと、何十年も精霊空間に閉じ込められるって事かよ!」

「んー。まあ、そうだけどー。精霊にとっては人間の寿命くらいの年月はそんなに長い年月ってわけじゃないからねー」


 正直、ルーコは何十年も軟禁されて過ごすなんて考えられなかった。


「でも、中精霊クラスになると力を示すことで信仰値が上がるから、契約してちまちまと信仰値を上げる必要も無かったりするけどねー」

「じゃあ、やっぱり契約はしない方がいいな」

「えー! 私の夢は自分の契約した精霊を布教して精霊教会を創る事なんです。

 精霊教会を創って信者を増やせば信仰値とやらも上がるのでは!?」

「それはまた壮大な夢だな」

「はい。それで私も教祖としてちやほやされたいです!」

「えーと、本当の目的はそれじゃないのか?」

 

 フィーラはペロリと下を見せた。

 清純そうな見た目と裏腹に、フィーラはなかなかの俗物だったようだ。

 ルーコはちょっと呆れたが、フィーラと契約すれば自分の目標も近付くかもしれないとも思った。

 他愛もない話をしながら進んでいく中で、モンスターもちょこちょこ出現した。

 ゴブリンやスライム、キラービーなどが襲ってきた。

 襲ってくるたびにルーコが蹴散らした。

 半日位歩いたが村は見えてこない。疎らに木々が生えている林道に入っていった。

 すると、どこかで悲鳴が聞こえた。

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