第12話 ギルドでの乱闘騒ぎ
冒険者たちが戦闘態勢になっていた。
ルーコは鑑定スキルを使って冒険者たちの強さを見てみる事にした。
冒険者たちの前にステータスが見えた。魔導士もそれなりの人数がいる。
幽霊なので魔法にさえ気を付ければ良い。
怒りの中でもルーコは妙に冷静だった。
早速、戦士風の冒険者が剣で斬りかかってきた。しかし、すり抜ける。
「くそっ! やはり物理攻撃は効かないか」
「ちょっとー! 神様から認められた精霊候補だよー。
攻撃したらダメだよー!」
チルリーが羽をばたつかせ、頬を膨らました。
しかし、冒険者たちは聞く耳を持っていない。
「フフフ。じゃあ、魔法はどうです?」
魔導士風の冒険者が数名、ほぼ同時に魔法を放ってきた。
「ウィンドカッター!」
「ファイアボール!」
「アイスアロー!」
これは当たるとマズイ。ルーコは素早く避けた。
風の刃が壁を切り裂き、炎の弾が椅子を燃やし、氷の矢が窓ガラスを割った。
「いやぁぁぁ!」
フィーラは蹲って頭を手で抱えていた。
「きゃー!」
チルリーも悲鳴を上げながら、ぴゅーと逃げて柱の陰に隠れた。
ルーコは避けたつもりでいたが、少しだけ魔法を喰らったようだった。
生きていた時の生身の痛みに比べれば大した事は無かったが、ちりちりと痺れるような感覚がある。
幽霊も死ぬのだろうかと、頭を過ぎる。
この世界では幽霊にもHPが存在する。HPは生命力を表しており、0になると死ぬらしい。おそらく、この世界では幽霊も例外では無いのだろう。
幽霊としての死を経験したことが無いのでルーコには分からないが、HPが0になるのは避けようと考えた。
「ホーリーラッシュ!」
魔導士風の女が光の散弾を飛ばしてくる。
散弾なので全部は避けきれない。数発が身体を直撃して貫通した。
「ぎゃああああっ!」
つい叫んでしまった。これは結構痛かった。焼けるような痛みだ。
他の魔法よりも効いている実感があったのだ。
どうやら、闇属性のルーコには光の魔法はよく効くらしい。
戦士風の男が剣を構えて迫ってきた。剣は効かないから大丈夫……。
と思ったがよく見てみると、剣が炎を纏っていた。
もしかして、あれも魔法では――?
一瞬の判断で避けたが、少しだけ掠った。ビリっとした。ダメージが通ったのだ。
魔法剣とでも言うのだろうか。
相手は複数で避け続けるのも無理がある。ルーコは反撃することにした。
ルーコは腕を伸ばし、両手のダークハンドを手当たり次第に振り回した。
「ぎゃっ!」
「うわっ!」
「いてっ!」
数人の冒険者に攻撃が当たった。
「くそおおっ! あいつだ。あの女を殺れば、ゴーストも大人しくなるはずだ!」
フィーラの事をネクロマンサーと誤解した男が槍を構えてフィーラへと向かっていった。
まずい。フィーラが狙われてしまった。
ルーコはダークブレイドを男に向かって飛ばした。
黒い刃が男の手首辺りへと飛んでいく。
ぽとり、と男の両手首が床に落ちた。同時に切断された槍の柄の一部もガタンと音を立てて落ちる。
「えっ……。ギャ……ぎゃああああああああああああああああああっ!
手が……、俺の手がぁぁぁ……!」
手首から血を噴き出し、男は絶叫しながら膝から崩れ落ちた。
「ガッソン……! ガッソンがやられた!」
「あの闇魔法はヤバいぞ……」
「あいつの弱点は多分、光魔法だ! 光魔法が撃てる奴は一斉に撃て!」
「ライトボール!」
「ライトアロー!」
冒険者たちが戦慄しながらも、更に殺気を高めてルーコへと魔法攻撃を放ってきた。
「ダークブレイド!」
私はダークブレイドを魔法を撃ってくる者たちへ向けて連発した。
複数の黒い刃が冒険者たちの首や胴体、手足などを斬り落としていった。
魔導士に向けて撃ったが、その背後にいた者たちにも刃は届いた。
ギルド内に死体と肉塊が転がり、血の海となっていた。
自分でやった事なのだが、その血生臭い光景にルーコは目を背けた。
「ちょ、ちょっと! 冒険者が何人も……。うちのギルドにとって大損害よ……!」
受付の女性が青ざめていた。
「まだ、やるか?」
ルーコは生き残っている冒険者たちに睨みをきかせた。
冒険者たちは金縛りにあったように動かなかった。
この時、ルーコの中でレベルアップやらスキルレベルアップやら、新スキル取得やらのアナウンスがあった。
ルーコはステータスを確認してみる。
[ステータス]
名前:ルーコ 状態:普通
種族:ダークスピリット 魔法属性:闇・炎
神霊階級:精霊見習い
LV:27 HP:265/318 MP:297/394
力:70 体力:318 賢さ:355 速さ:232
攻撃力:108 防御力:144 魔力:458 信仰値:2
特殊スキル:言語翻訳(元の世界の言葉・文字をこの世界の言葉・文字に自動で翻訳する)、経験値二倍、成長速度二倍、鑑定眼LV10、異空間収納LV10、拳聖LV1
通常スキル:念動力LV3、金縛りLV5、死の呪い[十四日]LV6(十四日後に死ぬ)、解呪LV1、憑依LV3、幻覚眼LV5、怒りの炎LV1、気配察知LV3、暗黒手腕LV3、暗黒刃LV2、暗黒呪縛LV1
種族スキル:念話
【創造神の加護】
なるほど。確かに色々と上がっているし、新しいスキルもある。
HPやMPも多少減っているが、問題無さそうだ。
と、その時、ギルドマスターのドドルガスが柄の長い大きなハンマーを振り下ろしてきた。
しかも、その斧は青白い光を纏っていた。その光は雷のようだった。
「おりゃああああああああああああぁぁぁぁ!」
ルーコは間一髪で直撃を避ける。しかし、ハンマーは床を砕き、木片と同時に雷撃が辺りに弾け飛んだ。
電撃はルーコの身体を少しだけ掠っていた。光の魔法に比べると痛みは少ない。だが、直撃したら斧の力と合わさって大ダメージを喰らうだろうと思われた。
「ったく、ギルドを滅茶苦茶にしてくれやがって。
俺を怒らせたからにはただじゃ済ませねえぞ?」
ドドルガスは怒気を孕んだ笑みを浮かべた。
「おおおっ!!
すげえっ! 雷槌のドドルガス!!」
「さすが、元Aランク!」
冒険者たちから歓声が上がった。
ギルドマスターの地位は伊達じゃないようだ。彼からは他の冒険者の比にならない程の強さを感じた。