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悪霊だった私が異世界で女神になるまで  作者: 卯双誉人
第1章 異世界幽霊
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第10話 ギルドへの報告

 フィーラはギルドに入っていった。

 戦士や魔導士など冒険者達の姿がある。幾つかのパーティがそれぞれ固まって何やら話をしていたり、ソロの冒険者がうろうろしていたりするいつもの光景だ。

 ガラの悪そうなのもいる。一人の時は、そういった連中はちょっと怖い。


 奥へ進んでいき、フィーラは受付の女性に話しかけた。


「〈野獣の牙〉のフィーラです。戻りました」

「あら、おかえりなさい」


 受付の女性は吊り目でショートカットのちょっと冷たい印象だった。


「他の皆さんは?」

「それが……」


 フィーラはダンジョンで起こったことを説明した。


「なるほど……。ダンジョンの地下五階でメンバーに襲われそうになったが、そこに偶然モンスターが現れて、その隙に逃げてきたと。そう言う事ね?」


 フィーラは眉を顰めて頷いた。


「うーん。でも、〈野獣の牙〉の他のメンバーの言い分も聞いてみない事には何とも言えないわね」

「でも……」

「ぶっちゃけ、Cランクの〈野獣の牙〉はギルドでも有能な方だし、揉めたくないんですよねー。

 けど、一応本人たちが帰ってきたら聞いてみますんで。それでいいですね?」


 受付の女性は有無を言わさぬ雰囲気を出していた。面倒な人をあしらう様な素っ気ない対応だ。


「は……はい。よろしくお願いします」


 フィーラは小さく頭を下げると、引き下がった。

 他の冒険者たちはフィーラを気にも留めていない感じだった。

 明日から、また別の仲間を探すことになるのかと思うと、少し憂鬱になる。

 フィーラはとぼとぼとした足取りで、素材買取コーナーへ向かう。

 ルーコのお陰で魔石や素材は沢山あったので、全部で小金貨3枚、大銀貨8枚、小銀貨5枚となった。通貨単位で表すと3万8千5百ドルーゴだ。

 Fランク冒険者の一日の稼ぎとしてはかなり多い金額だった。

 普通なら薬草1枚で1小銀貨なので、薬草を二、三十枚くらい摘んで大銀貨2、3枚(2~3千ドルーゴ)程度の収入なのだ。

 嫌な事もあったが少しだけ気分が持ち直した。

 フィーラはギルドから出て歩き出した。

 暗くなってきた空の下、ふと重要な事を思い出した。元々、〈野獣の牙〉では二、三日位掛けて地下十階を目指す予定だったのだ。つまり、今日の宿を取っていないのだ。

 お金はあるにはあるが、今日はルーコのお陰で稼げたが、明日からはまた薬草採取等の安い仕事になるだろう。なので、あまり贅沢は出来ない。

 少し歩いて宿を探す。少し街はずれの方へ行けば、ぼろいけど安い宿がまだ空いているかもしれない。

 宿を数軒訪ねて、ようやく空いている宿を見つけた。

 見るからにボロい。〈どぶの鼠亭〉と言う名前だった。

 案内された部屋に道具を置いて食堂に行った。

 店内はぼろいが掃除は行き届いているようで、汚い感じではない。テーブルに座ると店主のおじさんがご飯を運んできた。パンとシチューだった。

 あまり期待せず食べてみる。

 意外に美味しく、一気に食べてしまった。


「ここは見掛けによらず、飯が美味いし良い宿なんだぜ」


 唐突に近くで食べていた髭面の中年冒険者が話しかけてきた。


「そうなんですか。確かに、予想以上に美味しかったです」

「だろ。ここはソロ冒険者にとっては最高の宿だぜ」

「えっ。何でソロ冒険者限定なんです?」

「まず一つ! ここはパーティで泊まるにしては部屋が狭いからな。その代わり、客が少なく静かでくつろげる。

 そして二つ目! 店主が冒険者に干渉してこない!

 ソロでやってる奴にはソロでやってる奴なりの理由があって、干渉されるのが嫌な奴も多いんだ。

 俺はついつい声かけてしまうタイプなんだけどさ」


 豪快に笑いながら中年冒険者が言った。


「そんで三つ目が、安いこと! ソロで底辺冒険者だとそんなに稼げないからね。安いは正義だ!」


 この宿は一泊二食付きで1大銀貨だった。


「確かに。安いのは良いですね。私はまだFランク冒険者でお金も無いですし。

 おじさんは冒険者歴は長いんですか?」

「ああ。俺は十五年位だな。ちなみにランクはDだ」

「Dですか……。十五年もやってDだと大変だったんですね」

「えっ。ああ、俺は本当は働きたくなくてね。世界を旅してぶらぶらしてるんだ。

 冒険者登録しておけば、どこでも仕事は出来るから、金が無くなったり気が向いたらちょこっと仕事して……。その日暮らしさ。

 だから、積極的にランクを上げようとも思わなかったんだよ。Cランクに上がるには試験もあるし面倒だからさ。

 でも、小さな村とかで冒険者ギルドを通さない仕事とかも結構引き受けてたから、レベルはそれなりだぜ」


「へえ。レベルはいくつなんですか?」

「48だ」

「なるほど、Cランク相当って事ですね」


 レベルはあくまで目安だが、1~10がFランク(初心者)、11~20がEランク(初級)、21~40がDランク(一人前)、41~60がCランク(中級)、61~80がBランク(上級)、81~100がAランク(特級)、101以上でSランク(英雄譚級)だ。

 一応、実力次第で上がれるランクではSランクが最高だが、実力のみで上がることは多くない。実力のみで上がる場合はレベル101以上必要なので、逆に大変だったりするからだ。大抵はAランクの冒険者が功績によって認められ、一段上がる形で成る事の方が多い。

 更に上のSSランク(伝説級)、SSSランク(神話級)も存在はするが、これらは完全に功績次第の名誉ランクと言える。しかも、複数の大手柄でもないと与えられない。

 まさに伝説でも残すレベルでなければ……。


「そう。まあ、面倒とは言ったけど、そろそろCランクに上げようかと思ってるんだ。

 やっぱ、Cランクの依頼から金額がぐんと高くなるからね。それに、Cランクなら余程の事が無い限り指名依頼とか強制的な仕事も無いしさ」

「ランクは上げられるなら上げた方がいいですよ!」


 冒険者はランクによって測られるし、人の見る目が変わる。高ランクになれば、何かと融通が利いたりもするのだ。


「うん。そうするよ」


 おじさんと少しの間、仕事についての雑談などをして過ごした。

 名前はハンクと言うらしい。気さくでいい人だった。

 おじさんとの雑談が終わり、フィーラは部屋に戻って眠りについた。



 ルーコとチルリーは、教会から出ると特にやる事も無いので街を彷徨っていた。

 幽霊に宿屋も飯屋も必要ない。


「チルリー。夜は暇だな」

「街を探検してみる?」

「うーん。そうだな」


 当てもなく街をふらふら飛んで、酒場やらお店やら、領主の立派な屋敷に入ってみたりした。

 この世界の人々の生活を覗いて周ると、この世界について段々と分かってきたりして面白かった。


「ありゃ? なんか眠くなってきたんだが……。

 幽霊になってから寝た記憶が無い気がするんだがな」

「えっ。精霊とか幽霊も眠るでしょー。私も眠くなってきた……」

「そう言うもんだっけ?」


 元の世界での幽霊生活ではどうだったっけ、とルーコは思い出そうとしたが思い出せなかった。


「精霊とか幽霊はどこで寝るんだ?」

「うーん。屋根の上とか? 妖精の私は人に見えるし、ルーコも見える人には見えちゃうからね。あんまり目立たない場所がいいと思うよー」

「そうか。じゃあ、適当な建物の屋根で寝るとするか」


 ルーコとチルリーは結局、冒険者ギルドの屋根の上で眠ることにした。

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