第9話 加護を貰う
「うむ。そう言ってくれると思っていたぞ。
そうそう。異世界から来たものには加護とスキルを与える決まりなのだ。
鑑定!」
ラグリオスがルーコに向かって手をかざした。
ステータスを見ているようだ。
「ふむ。名前が無いな。まずは名前を決めよう。
名前は親や自分自身が念じる事でステータスに刻まれるのだ。
今は名前が無いから、好きに決められるぞ。自分の名前を念じるのだ」
元々の名前は思い出せない。名前らしきものの断片は頭に過ぎったが、それも自分の名前だったのか確信がない。
しかし、フィーラやチルリーから「ルーコ」と呼ばれるようになって、もう自分の名前はルーコという認識でいる。
うん、それでいい。私の名前は……ルーコだ!
「うむ。ステータスにルーコと刻まれたな。今から正式にあなたはルーコとなった。
さて、早速、俺の加護を授けよう」
ラグリオスが私に指を向ける。指が光り、私の中に何かが宿るような感触があった。
「創造神の加護を授けた。経験値二倍、成長速度二倍、鑑定眼、異空間収納のスキルのセットだ。
異世界からやって来た者たちには必ず授けているものだ。この世界に早く適応し馴染めるためにな」
なんだろう。役立つスキルなのだろうけど、よく分からないので何と言っていいか分からない。
「あとは、特殊スキルを一つ、ランダムで与えるのも決まりだ」
そう言うとラグリオスは再び手をかざした。
すると、空中にカードのようなものが十数枚浮かんで現れた。
「さあ、このカードの中から一枚選ぶが良い。どのスキルでも、レアスキルなのは間違いない。大抵は役に立つはずだ」
「オーケー」
うーん。少し迷ったが、内容が見えないものを、悩んでも仕方ない。
私は適当な一枚に触れた。これでいいか。
すると、カードが光って玉状に変形し、私の胸の辺りに吸い込まれて消えた。
「よし。スキル授与完了だ。ステータスを見てみるとよい」
言われた通り、ステータスを開いてみる。
[ステータス]
名前:不明 状態:普通
種族:ダークスピリット 魔法属性:闇・炎
神霊階級:精霊見習い
LV:25 HP:294/294 MP:96/348
力:58 体力:288 賢さ:322 速さ:199
攻撃力:85 防御力:128 魔力:402
信仰度:0 畏怖度:2 神性値:0 邪性値:10
特殊スキル:言語翻訳(元の世界の言葉・文字をこの世界の言葉・文字に自動で翻訳する)、経験値二倍、成長速度二倍、鑑定眼LV10、異空間収納LV10、拳聖LV1
通常スキル:念動力LV3、金縛りLV5、死の呪い[十四日]LV6(十四日後に死ぬ)、解呪LV1、憑依LV3、幻覚眼LV5、怒りの炎LV1、気配察知LV3、暗黒手腕LV2、暗黒刃LV1
種族スキル:念話
【創造神の加護】
確かにスキルが増えている。経験値二倍、成長速度二倍、鑑定眼に異空間収納……。
他にも色々追加されている。
神霊階級が精霊見習い……。精霊になると決意したからだろうか。
そして、特殊スキルの拳聖とは?
もしかして……。
「あの、拳聖ってスキルがあるんだが……」
「ああ、カードで授与したスキルだな。格闘を極めし拳聖の如き体裁きとパワーを得られるスキルだ! だが、実体のない君には必要のないスキルかもしれんな……」
なんだそれは……。まあ、いいか。
「あと、これが一番重要なのだが、信仰度、畏怖度、神性値、邪性値という項目が新しく追加された」
ルーコは改めて確認してみる。確かに追加されていた。
「これは、あなたが精霊または神として信仰されるようになると上がっていく。
信仰値が上がれば上がる程、精霊としての格が上がっていく。格が上がると神霊階級がも上がるのだ」
簡単に精霊を目指すって言ってしまったが、思ったよりも面倒くさそうだとルーコは少し後悔した。
「信仰値を上げるって、具体的に何をすればいいんだ?」
「簡単に言えば感謝されるって事かな。場合によっては畏れられる事が必要な場合もある。畏敬の念が信仰に結びつく事もあるからな」
「なるほど」
「まあ、自分の思う通りにやってみればいい。神霊の世界には善も悪もない。
チルリーをあなたのサポート任務に就けるので、引き続き一緒に行動するとよい。
また何か聞きたいことがあれば教会に来るが良い。では、期待しているぞ」
ラグリオスが手を振った。私は再び光の中に引き込まれていった。ラグリオスの姿がだんだん霞んでいった。
はっと気が付くと、ルーコは再び教会にいた。
神様に会ったのが夢だったような気さえする。ルーコはステータスを確認してみた。
すると、神様に会った時に追加されたものが実際に追加されていた。
夢ではなかったようだ。
「なあ、チルリー。成り行きで精霊になる事になっちまった……」
「うん。そうみたいだね。あたしにも神様から指令が来たしー。
このままルーコの面倒を見てやってってさ」
チルリーが笑った。
「そうか。まあ、よろしくな」
「こちらこそー」
黒い靄に包まれたルーコの顔は、微かに笑っていた。