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08話 頑張った2週間


 冒険者活動から離れて、1週間がたった。

 冒険者としての活動をしていなかったとはいえ、俺はこの一週間で相当強くなった。


 大きく分けて、強くなった部分は、2つだ。


 1つ目は、魔法の数だ。

 これは、大図書館で本を読んで増やした。

 初めて行った後も、大図書館には通い続けて今では200ほどの魔法を使えるようになった。


 当初、100個程だと思われていた旧神魔法が200以上もあった。

 こまでくると、旧神魔法の数は未知数だ。

 1000個ぐらいあるんじゃないのか?

 

 そして強くなった2つ目は、仲間が出来たことだ。

 盟友とでも言おうか。

 ちなみに、女性だ。

 もっと詳しく言うと、女子だ。


 彼女は、言葉がしゃべれないらしい。


     ●


 彼女との出会いは、路地裏だ。

 俺はいつものように、立ちしょんをしようと路地の奥の方。

 人気のないところへ向かっていた。

 そこまではよかった。


 問題はその後。


 俺がウキウキと、用を足しているその時。

 見知らぬ少女が俺の右足をつかんできたのだ。


 その時のことは今でも繊細(せんさい)に覚えている。

 俺は、足を触られたことに対する恐怖からか、()抜けた声を出してしまった。

 その驚きで、俺の物は右に左に。

 そして上に。


 縦横無尽(じゅうおうむじん)に、暴れまわった。

 もう少しで、俺の物から排出される液体がその少女にかかる瞬間。

 まさに、その瞬間に俺は自分の物を掴んで制止させることが出来た。


 良かった良かった。


 無事、俺のアップルティーが少女にかかることは避けられた。

 ただ、残念なことに俺の物はしっかり少女の脳裏に記憶されてしまったのだ。


 賢者タイムとでもいおうか。

 (しばら)く、何にも感じなかったのだが・・・。


 賢者タイムにしては短すぎる、ほんの30秒後。

 俺の感情は正常に動作するようになった。


「おい! お前!

 お・・・俺のイチモツを見ただろ!!」


 俺は、問い正した。

 ほんとに俺の物を見たのか。

 見たのであれば、大きさまで見たのか。


 でも、返事は帰ってこなかった。


 俺が、一方的にしゃべりかけ続けた。

 もちろん、一個も返事は返ってこなかった。


 変ったものといえば・・・表情。

 それだけ。


 何なんだよ、この女は。

 全く喋らねぇじゃねぇか。

 女の子相手に、武力行使するには気が引けるし・・・もう、今日はいっか。

 用も足したし、さっさと帰ろう。

 許してやろう。


 明日、冒険者アーサーの物の大きさが話題になってたりしたら、地獄まで追いかけて、こいつ、とっ捕まえてやるからな。

 覚悟しとけよ。


 そして、にやけながら、足を踏み出したときに。

 〈思念〉特有の頭で言葉が響く変な感じがした。

 無論〈思念〉を使った覚えはないが、明らかにこの感じは〈思念〉で間違いない。


 少女が、思念を使ったのか──とも思ったが、それもなさそう。

 それも、新しく入手した旧神魔法の一つ。

 〈状態〉のおかげだ。


 この〈状態〉という魔法は、旧神魔法書曰く、その対象の物に関するあらゆる情報が分かるそうだ。

といっても、これでわかる情報というのも、性別・年齢・マナ量だけだ。

 こんな魔法、使えないだろ。


 と、習得時に思っていたものだが・・・。

 案外そういうものは、いざという時に使えるものだと思いながら、日々徹夜で習得した甲斐があった。


 ちなみにだが、200覚えた旧神魔法も実用的なものは20個程。

 後は、ポンコツ魔法だけだ。

 ほんとに覚えて価値はあるのだろうか。


(あ、え? な、なんでしゃべれるの・・・?)

 

 そう、()の鳴くような声で俺の脳に訴えてきた。

 上目づかいで、こちらに手を差し伸べてきた。

 泣きながら。


 汚れた服、泥だらけになった肌、ぼさぼさの髪に、ボロボロの爪。

 その、すべてが、今までの彼女の生活を物語っている。

 家もなく、親もいない。


 そんな生活を、してきた少女が初めてしゃべった。

 人と意思を疎通できた。

 それが、どれほどの事か、アーサーは分かっているつもりだ。

 そして、アーサーは考える間もなく、どうするかを決めた。


 少女を幸せにする。

 本来は、神として人間界に平等を作らないといけない。

 表面上の、平等ではなく、根底から平等を築き上げなくてはいけない。


 神の時に達成できなかったんだから、無論人間になってもそれを、遂行させる為の努力はしなければならない。

 少女と正式に仲間になって強くさせる。

 もちろん旧神魔法も教える。


 そうして、俺の中の目標が一つ増えたのだ。


---


(君。名前はなんていうんだい?)


怖がらせないように、細心の注意を払って、優しく聞いた。


(お兄さん誰?)

(アーサーだ。悪い人じゃないよ。君を助けたいだけだから安心して)

(ほんと?)


嬉しそうに、若干の生気のこもった声(?)だった。


(ああ、ほんとだよ。俺と一緒に冒険者になろう!)

(でも、お兄さんも、私をだますんでしょ・・・)


 やっぱり、今までにだまされた事があるのか。

 そんな感じはしていたけど。


(いや、そんなことはしない。俺は嘘はつかないから)


 俺は、その少女の目を見て言った。


 大体こういう時は、強大な力のもとで屈服させるか、最大の誠意を見せるかの、二極である。

 まあ、今回は後者だろう。


(ほんとに?)

(ああ、ほんとだ)

(じゃあ、約束して)


 少女は右手の左手を出し、その小指をぴんと立てた。

 その意味を察し、俺も右手の小指を差し出し、その2本の指が絡み合う。


──その後は早かった。


 少女を冒険者ギルドへ連れて行って、冒険者に登録させた。

 服も買ってやった。

 美味しいご飯屋さんにも連れて来てやった。

 食費がかさむと思い、俺は食べようとはしなかった。

 そしたら、そこの店員に白い目を向けられた。


「お前は、食2人分の金も持ってないのか、」と言わんばかりの・・・。

「もってるよぉ!」とは言わなかった。


 そして、肝心な名前だが・・・。

 少女は覚えているわけもなかったので、俺がつけてやった。

 “アイリーン=ガブリエラ”

 という名前にした。


 随分といい名前だと、我ながら実感している。

 上出来だ。


 そして、この一週間で成果はもう一つあった。

 街対抗戦(初心者大歓迎)という看板を見たことだ。

 もちろん、俺はこれに参加するつもりだ。


 大会の賞金は弾むらしい。

 俺はそこを狙いに行く。

 賞金はもちろんだが、本命は知名度の獲得だ。


 この大会で、優勝すれば間違いなく周囲の注目の的になることが出来る。

 その舞台で、旧神魔法の事。

 そして、魔物が知性を持って、自分たちの意志で行動しているということを公にする。


 平和を目指して。

 出来るだけ、早く。


 俺には直接関係ないとはいえ、今この瞬間も人間(特に冒険者)が、魔物相手に一種の殺人を起こしているんだ。

 もちろんその事実を、知らなかったとしても殺人をしているということに変わりはない。


 人間が一方的に、魔物を殺していると思われがちだが、案外その逆もある。

 人間にも、冒険者としての才がある人、ない人がいるように、魔物にも、他を寄せ付けない程の、圧倒的な力を持って生まれてくる者も多々いる。


 でも、割合でいえば、魔物の方が強かったなんてことは稀である。


 人間側はクエストという形で、相手の強さに合わせた冒険者を派遣することになっているからだ。

 この、事象が起きる要因としては、相手(魔物)の強さを見誤るか、冒険者がへまをするぐらいだが、冒険者も命がかかっている仕事だ。

 より一層、そこへの意識する部分は大きい。


 もし公にしたところで、誰も相手にしなかったら?──とは思ったものの、そんなことはないだろうと、割愛というか妥協というか──そのどちらともとれるような試案を提示し、笑顔で、右手に持ったフォークで肉を突き刺し、口へ運ぶアイリーンを見て、俺の顔にも笑顔が伝染する。


 服を着こなし、俺よりも十数センチほど小さいからか、俺に使ってくる上目遣いに俺の鼓動はやけに早くなった。

 それに伴い、呼吸が荒くなる。


 下心など一切ない。

 呼吸が荒くなったのはただ、空気が薄くなっただけだ。

 そうだと思う。


 このレストランに充満する肉にかけるソースのいい匂い。

 鼻から入り、口から出ていくのに何の違和感も感じられない程、自然に存在する。

 でも、確かにいい匂いとは感じられる、独特のにおい。


 その匂いに、支えられ名残惜しくも、このレストランから出なくてはいけないときが刻一刻と近づいてくる。

 最後の、一口を頬張るアイリーンの豪快な食べっぷりを見てると、おごった甲斐があるものだと身に染みる。


 慈善(じぜん)活動最高!

 後で、銅貨一枚単位で請求しようと思っていたアーサーも、アイリーンの嬉しさかつ喜びから、その気は消失した。


(ごちそうさまでした!!)

(おいしかったか?)

(うん。とってもおいしかった!! また来る!)

(また今度な)


 のどを通って出でる口からの言葉が発せないからか、路地裏での印象からか刷り込まれがちだが、ちゃんと常識はあるらしい。

 ご飯の前は、「いただきます」。

 食べ終わったら「ごちそうさま」も既知。


 その、言葉が周囲に聞こえようが、聞こえまいが、大事なのはその心だ。

 というのは、アーサーもアイリーンもわかっている。


 そうして、会計へと向かう。

 今まで座っていた席から、会計へのレッドカーペットを右足左足を交差させながら、それでいて、顔の場所は変わらずに。

 まるで、百合(ゆり)の花のような足癖。


 この、レッドカーペットを歩く、俺とアイリーンを称賛するかのような歓声が飛び交っている・・・と思っていたが、よく注視してみると、俺のことを罵っているかのような冷ややかな目が俺に雲集(うんしゅう)していることに気づいた。


 その原因は定かではないが、俺の服装がこの店にあっていないからか、俺が幼女を襲うような、重度の ロリコンに見えるかとか、その辺の事だろうがそんなことは気にせずさっさと会計をすます。


---


 相当値が張った。

 俺は、何も食べなくて正解だった。

 1人前、28銅貨程。


 何でもここの肉は、何十時間と保存してから、色を見て店主が言う「いい具合」になったら、そこから取り出し、肉の切り方は、店主曰く「秘密」だそう。

 そして、焼き加減も「秘密」で、そこからソースは・・・。


 ってことで、ここまで値が張るそうだ。

 という、ことを4・5分かけて一方的に話された。


 一言で言うと、つまらなかった。

 体感では、1時間ほど経ったかと思われるほどだった。


 この長くも、重々しく感じられた時間がチリンチリンといった、客によって開けられたドアの音によって終わりを告げた。


「またのお越しをお待ちしておりますー」

「「「ありがとうございましたー」」」


 さっきまで、つまらない話をしてきた男を先陣に、奥にいた店員が全員で声を合わせて挨拶をした。

 俺は、それに応えるために軽く2度会釈をしながら、外へと出て言った。


---

 

 このレストランは、冒険者ギルドの隣の隣の隣ぐらい。

 ギルド、住まい、行きつけのお店が、50メートルほどに集まっているとは、何とも優良なことだとつくづく思う。


 日が沈んでくると、この街も思いのほか物騒になる。

 これも、この一週間で学んだことだろう。


 夜遅くになってくると、昼間には考えられない程に空気が重くなる。

 大人の世界だ。


 事実、明らかな事件(殺人、誘拐等)は起きないものの、薬の取引やら、盗賊同士の争いやらが頻繁に起こる。

 街の中で、盗賊が活動しているということにも驚いたが、それより取締官の有無が最も注目を引いた。


 そういえば。

 と、フーリエに入る前に筋肉おじさんがそんなことを言っていたのを思い出す。

 嘘じゃなかったんだなぁ。


 そんな理由から、今まで足早に行動してきた。

 この、宿は2人で生活しても問題はないんだろうか?


 男女が同じ部屋で過ごすというのもいかがわしいものだが、さすがにもう一部屋を借りるというほど余裕がないのはアーサーが一番わかっていることだ。


(なあ、アイリーン。俺と同じ部屋でいいか?)


 肩を下ろし、頭を下げ(お辞儀程には下げていない)、申し訳なさげに聞いてみた。


(いいよ! カミと一緒の部屋! アイリーンうれしい!)

 

 ああ。

 忘れてた。


 何故かわからないが、アイリーンは俺のことをカミと呼ぶようになってしまったのだ。

 決して「自分は元神だとか」いった記憶はない。

 ただ、勝手に言い始めただけだ。


 事実であるし、別に咎めるつもりはなかった。

 それに、アイリーンが言うカミは「神」なのか「紙」なのかそれとも「髪」なのか。

 俺の知ることではないが・・・。


 ついでに、カミじゃなくてカミサマって呼んでほしいものだが・・・。


---


 十分なほどの食事を食べ、腹いっぱいで食欲が消えたら、その後は性欲か睡眠欲だ。

 でもこの場面では、睡眠欲の方が勝っているようだ。

 ぐーすかぴーすかと、ベットに横になってしまったアイリーンの気持ちよさそうな表情がそれを物語っている。


 妙な気は全く起きない。

 まあ、出会いが出会いだからだろうか・・・。


 無論それは、いいことである。

 本来は、その懸念(けねん)すら感じない程の感情を持っているべきなのだが、これは転生したことによる罰なのだと、自分を納得させる。


 そうして、俺もアイリーンの隣でそっと寝る。

 誤解が起きそうだから、一応──


 アイリーンはベットで俺は床だ。

 ちゃんと隣だろ!


---


 アイリーンに肩を揺さぶられ、もう見慣れた天井に目をやり上半身を起こす。

 こんな時に聞こえてくる〈思念〉は、俺の脳を覚醒させる。

 朝には弱いはずの俺も〈思念〉で直接、脳に干渉してくると、こうもきっぱりと起きることが出来るのかと驚く。


 こんな、美少女に起こされる日が来るとは。

 神の時には、起こされることはおろか、寝てもいないからな・・・。

 こんな体験は、転生したからこそできたことだろう。


 今日から、街対抗戦が行われるまでは2週間ほど。

 その間に、俺自身の強化。

 そして、アイリーンには旧神魔法を覚えてもらわなくてはならない。

 ついでに、お金も稼がなくてはいけない。


 また忙しい日々になりそうだ。

 アイリーンは、俺のこの特異な体ではないんだから、そこにも配慮して計画を立てなければいけない。

 ご飯も食べないといけないし、睡眠もとらなくてはいけない。

 まだ、俺の知らないことも沢山あるだろうからその点についても、解き明かしていきたい。


---


 時の流れには逆らえない。

 もう3日がたってしまった。

 まだほとんど何もしてない。

 大事な3日間を使って、この2週間の計画を立てた。


 その通りに計画するのかもわからない、計画を立てる意味はあるのかとは、何度も悩んだ。

 結局は、立てたんだからさっさと早い段階で立てとけば良かったと今になって思えてくる。

 このことをタラレバという。


 そうして、立てたからにはその計画通りに行動しようと、俺はアイリーンを連れて『フーリエ大図書館』へと向かう。


 大図書館で、旧神魔法を覚えさせるわけではない。

 そんな浅はかなことなら、いくらサボっていたとしても、3日もかかりはしない。

 そして、俺の導き出した妙案(みょうあん)はとは、アイリーンをゴブリンの村で育ててもらうことだ。


 もちろん、エトルフのところへ一度行って了承はもらい済みだ。

 そのせいで、遅くなったともいえる。

 後は、アイリーンが怖がらないかだが、まあ…。


 大丈夫だろ。


---



 何度来ても慣れそうにない、ゴブリンの村に漸くして到着。


 明るく出迎えてくれたエトルフには申し訳なくも、その端正(たんせい)な顔立ちからは想像しがたい(ぎゃあぁ!!!!)という声を上げて、叫び散らかすアイリーン。

 俺の後ろにぴったりとくっつき、俺のズボンを掴むその様子は、俺だけでなくゴブリン一同が憧憬(しょうけい)する。


(あ、あのー。アイリーンさん・・・? いや、アイリーンちゃん?)


 エトルフもアイリーンに気を使ってくれ、優しい口調にわざわざ言い直してくれた。


(くぅー・・・んー・・・)


かたくなにも、恐怖から言葉を発さないアイリーン。


(アイリーンちゃん・・リンちゃんって呼んでもいいかな?)

(ん・・・。うん・・・)


 ひそひそと呟かれたその声は、周りのだれもが聞き取るのに苦労を要した。


 実際の声とは違って〈思念〉には小さいからといって聞き取るすべがない。

 実声は、どんなに小さくても耳をすませば聞き取りやすくなるもの。

 でも、〈思念〉はどうだ?


 ──頭に直接聞こえてくるものには、どうあがいても聞きやすくなることはない。

 だから、元々小さく発しても、聞き取りやすいようにできているのだが・・・。

 ここまで脳に伝えられる音が小さいのは、それほどアイリーンの元の声が小さかったからだろう。


(なんか趣味とかあるのかな?)


 分かった。

 実はエトルフも、コミュ障なんじゃないか。

 会話が典型的だし、何よりエトルフの顔が崩れていたからそう思ってしまったのだが。

 でも、崩れた顔は目の前にいる少女のせいだということは言うまでもない。


(ない・・・です)


 今度はアイリーンも敬語を使うようになった。

 敬語には敬語で!

 いい心がけだ!!


 思ったんだけど。リンちゃんって良くね?

 俺もこれから、リンって呼ぼ。


(じゃあ、どんな食べ物が好きなの?)

(・・・ニク・・・!)


 引き気味だけど、食い気味に食いつく。

 先に食べた肉が相当うまかったんだろう。


(肉か・・・。肉・・・食べる?)

(食べる・・・!)


 言い方は悪いが、ついにものにしたな。

 完璧にとは言わないが、2人の距離が限りなく縮まった。

 肉一つで仲良くなれるとは、人間って不思議だな。


(ほい! これだ! 上手そうだろ!)

(ビミョー・・・)


 肩と顔を少し下げながら落胆していたが、それでも食欲は健在。

 食べ始める。

 が・・・。


 違和感に感じているのは俺だけだろうか。

 肉が・・・。

 肉が緑色だ・・・。


 アイリーン。

 いや、リンが躊躇なく食べられるのは、まだ肉というものを一度しか見たことがないからであろう。

 無知なことは時にいい方向に働くということか。

 学びになる。


 それにしてもゴブリンはカラフルなものが好きなのだろうか。

 青い茶もそうだし、緑の肉もそうだ。

 自分はまだ未知なのだということを遠回しに言われている感じがした。


---


(ごちそうさまでした。なかなかやるなオマエ! この肉マーマーウマイナ)

(あ、ありがとうよ!)


 何だろう。

 この友情(?)。

 いいなぁ。


 じゃあ、2人がなかなか仲良くなったところで、俺も俺のやることをしに行くとしよう。


(エトルフ、俺はもうそろそろ行くからあとは任せたぞ! よろしくな)

(ああ。わかった。次会うときには超強くなってるだろうから覚悟しとけよ!)

(期待してるぜ! エトルフ!)


 別れとは悲しいもので。

 それが短くとも、長くとも別れにはいつも悲しさと──

 そして次会う時への喜びが混じっている。


良ければブックマークと評価お願いします。

読んでくださりありがとうございます。

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