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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

…共依存と供給

作者: すぎー

「なんで、こんなにも苦しいのに分かってくれないんだよ…」

男の人は、泣きながらそう言った。



…始まり…

携帯の通知が来て、画面が明るくなる。

?「また病みだしたの?」

そう返事が来ていたので、僕はすぐに返事を返すことにした。

僕「自分じゃどうにも出来なくて…リスカしちゃったし…

なんで、いつも傍にいてくれないんだよ!

そんあに僕のこと嫌い…?

嫌いならはっきり言ってよ!

死ぬから。」

我慢できなくて、思っていることを吐き出した。


返事がこなくなった。

「どうせみんな僕のことなんか必要としていないんだ…

僕なんか死んだ方がいいよね…」


そのまま死ねたらそれでいいんだ。

僕は、首を絞めるのが最適な気がして

今自分が着ているスーツのネクタイをほどいて

ワイシャツのボタンを2、3こ外した。

真っ暗な部屋の中で、死ぬ行為というのは

僕にとっては最高の空間だ。


ネクタイを自分の首にきつく巻きつける。

僕はゆっくりと目を閉じた。

少しずつだけど、苦しくなってくるのが分かる。

自分の出し切れる限り力を込めて首を絞める…



…リセット…

気づくと…

死んだはずなのに、生きてた。

首元を触ってみる…

きつく巻きつけたはずのネクタイがそのままついている。

部屋も暗いままだ。

そばにあった携帯の画面が明るくなった。

?「また、病みだしたの?」

あれ…?

なんで、また同じメッセージがきてるんだ?

僕はすぐに返事せず、しばらく様子を見ることにした。


?「ねぇ…?メンヘラ君?無視?」

なんで、さっきは返事こなかったのに

今はすぐ来てるんだ?


すると…

…ピンポーン!

ビクッ…!?とした。

座り込んでいた僕は、いきなりのことに驚いた。

向こうの玄関のほうから…

?「あれぇー?さっきは、返事してくれるの早かったのにー。

なんで今回は返事してくれないわけー?

ねぇー!きいてるのぉー?」

玄関のドアを思いっきり叩きだした。

僕は、戸惑いながらも、玄関のほうへ向かった…



…復讐…

玄関のドアスコープを恐る恐る覗く…

そこには、いつも優しく気にかけてくれる彼女がいた。

見た感じは、いつもの彼女…

でも…なにかが違う…

いつも笑顔が絶えない彼女で、どんな時でも僕の味方を

してくれる。

今立ってる彼女もそのはずなんだけど…

目がないんだ。

目の周りがくり抜かれたみたいに真っ暗なんだ。

しかも、不自然なくらい満面の笑みで笑ってる…

僕は、怖くなって玄関から離れようとした。


?「メンヘラ君、そこにいるんでしょー?

仕事が忙しくて中々会いにこれなかったから、来てるんだよ?

それなのに開けてくれないなんて酷いなー!ねぇー。

せっかく会いにきてるんだから開けてよー!」

僕は逃げるようにして、部屋に戻った。



…再会…

部屋に戻って、落ち着こうと寝室に向かうことにした。

寝室に向かう途中に、一度玄関のほうに出ないといけない…

僕は、なにも起こらないことを信じて、ゆっくりと寝室へと

向かった…

ふと、耳元で声がした。

?「逃げられるとでも思った?」

僕は恐怖で後ろを振り向けないまま、思わず叫んだ。

僕「ぎゃぁぁぁーー--!」

それと同時に尻餅をついた。


この時、初めて金縛りというものにかかった。

動こうにも動けない。

まるで、誰かに押さえつけられているような感じがした。

?「やっと…会えたね…」

また耳元で聞こえたその声は、安心感を感じるような優しい囁きかただった。


僕は、この時あんなにも怖いと感じていた気持ちが

一瞬にして崩れ去ったのを覚えた。



…安らぎ…

僕の彼女は、優しくて、気遣いできて、家事もできる完ぺきな女性だ。

なんで、彼女は僕なんかを選んだのか謎だ。

僕と彼女は、今の職場で出会った。

恋愛したことがなかった僕にとって、今の彼女が初めて付き合った人だったから

どう接していいのか分からないまま付き合って

その時に僕がメンヘラだってことが分かった。


初めて好きになった人だったから、噓つきたくなくて彼女に正直に

話した。

嫌われることを覚悟して話した。

そしたら、彼女は受け入れてくれるって言ってくれた。

どんな僕君でも好きな気持ちは変わらないからって言ってくれたし

これから先もずっと一緒にいるよって言ってくれた。

僕は本当に嬉しくて、彼女の前で泣き崩れた。

その時、彼女が優しく抱きしめてくれて

ずっと一緒にいたいと思えた。



…落胆…

耳元で聞こえた声はすぐに消えて、僕の首元に

誰かの手が優しく触れるのが分かった。

僕「…佳奈…?」

僕はあんなにも恐怖でいっぱいだったのに

なぜか安心感を覚えた。

僕「ねぇ…?佳奈じゃないの…?」

呼びかけても、返事はない。



…現実…

僕には佳奈の幻覚が見えた…

いつもみたいに沢山薬を飲んでたから、゛そう゛見えたのかな…

でも、゛そう゛見えたことが、なによりも嬉しかった…


僕には…

佳奈しか…

いないのに…


あの時…

僕は…佳奈を…

殺…して…なんか…

いない…はず…だよね…?


今だって…ほら…

こうやって…

笑っ…て…


洗面台に立つ僕

いつも通りの

無表情で死んだ目

血が付いた手で

こすった顔

普段

日の光を浴びないから

真っ白なはずなのに

今日だけは

少しだけ色がついていた


それはきっと

佳奈から流れ落ちた

綺麗な色

その色で

僕の肌が色づいた


大好きな人の

(たいえき)

僕は…

ただただ

嬉しかった…


おかしいくらいに

笑ってた



…鼓動…

僕は、ふと冷静になり…

彼女に話しかけた。

僕「ねぇ…

佳奈…

いつもみたいに笑ってよ。」

眠っている

佳奈を起こそうと揺さぶる僕。


ずっと

揺さぶっても起きないから

僕は怒って

佳奈を放置した。


僕は、急に思い出したかのように。

僕「あっ…!

そう言えば

佳奈が食べたいって言ってた

ご飯作ってあげないと!

佳奈と約束してたんだった!

約束守らないと

佳奈に怒られちゃう…」


今日のメニューは

僕の特製ハンバーグとビーフシチュー

健康面も考えてサラダもね!

それに佳奈の大好きなチーズケーキ

ケーキは佳奈が来るって言ってたから

前もって買っておいたんだ!

今日のお肉は

一番いいやつを買ってきたから

絶対おいしくなると思うよ!


佳奈に喜んでもらえれば

それでいいんだ

いつもより料理が弾む

佳奈の嬉しそうな顔が浮かぶ


佳奈が起きたら

なんて言って喜ばせて

あげようかな



…狂気…

薬が切れた…

僕は、切り刻んだ佳奈を

鍋にいれ骨になるまで煮た。


薬が切れると落ち着きがなくなる。

ひたすら何かを壊したくなる衝動に駆られる。


でも、佳奈がいたときは、僕は落ち着いていられた。

薬を飲んでいなくても平気だった。

佳奈は、僕にとっての精神安定剤だった。

なのに、僕はそんな佳奈に甘えて

佳奈の辛い気持ちや、しんどい思いを

分かっていなかった。

分かろうともしなくて、自分のわがままを

押し付けてた。

だけど、佳奈は僕の前では何があっても

ずっと笑ってた。

でも、そんな佳奈を気に食わないと思えた。


僕は本当に身勝手で、人の気持ちを分かろうとしない

最低な奴だ。

佳奈を殺した時も、佳奈は自分が死ぬのを分かって

いたのに、僕を優しく抱きしめてくれた。

何も言わずに、ずっと…



…懐かし…

眠たい目をこすって起きる。

隣には幸せそうに寝ている佳奈。

綺麗に手入れされた髪。

佳奈と一緒に住んで半年がたつ。

毎日見ても見飽きないくらい美しい。

透き通るくらい綺麗な肌。

純粋無垢の穢れのない瞳。

僕以外の人間(ひと)は、触れてはいけない。

僕だけの特権。

佳奈といれるこの時間(とき)

僕にとっての生きる希望。


佳奈が洗ってくれた洗いたてのシーツの

いい匂いがするこの゛感じ゛もたまらない。

佳奈だから、良いんだろうな。

ほかの誰がしたら、絶対によくない。

佳奈は本当にいいお嫁さんだ。

僕たちがおじいちゃんと

おばあちゃんになってもこうやって

ずっと幸せにいるんだ。

ずっと一緒に…


僕は、痛いけど体に佳奈の文字を刻んだ。

佳奈にバレないように…

自分で彫るのって、かなり勇気がいるよね。

でも、佳奈の名前だから全然怖くなかったよ。

腕の内側に大きく゛佳奈゛の二文字刻んだ…

これでもう佳奈は、離れていかない。

佳奈は今、どんな夢を見ているんだろう。

きっと…

僕との楽しい夢を見ているんだろうな。



…幻想…

僕は、料理が上手だ。

佳奈の好きなものを作って

佳奈の喜ぶ顔が見たいから。

佳奈の嬉しそうに

美味しそうに食べるその顔が

たまらなく大好きで

僕だけが知ってる秘密の顔。

佳奈に出会うまでは

まったく料理が出来なかった。

でも、佳奈に出会ってから

佳奈に喜んでもらいたい

その一心で料理を覚えた。

毎日のように手探りで

分からないなりに

猛勉強して…

やっと…

出来るようになった。


初めて佳奈に

僕の手料理を振る舞った

その時から

今まで頑張ってきた苦労が

報われたような気がした。


初めてだったのに

佳奈は美味しいと

喜んでくれた。

その時、僕は決めた…

僕は、佳奈の為に

料理を作り続けると…

佳奈の作ってほしいものは

僕の作りたいもの

リストに全部入ってる。

僕から佳奈に

常に何を作って欲しいか聞いている。


全ては

佳奈の喜んだ゛顔゛を

見る為だ。

その為なら

僕はなんだって出来る。

たとえ

佳奈が良いと思う゛奴゛でも。


佳奈には

僕だけでいいんだ。

佳奈を誰よりも愛していて

誰よりも佳奈のことを分かっていて

佳奈の好み、食べたいもの、趣味

その全てを分かっているのは

この゛僕゛だ。

佳奈にとっても

僕はきっと゛かけがえのない存在゛だと

分かっているはずだ。


気づいたら泣いてた…

「これって、僕が思い込んでるだけ…?」

いやいや。

そんなはずはないと、かき消す。

僕が泣いていることに気づいたのか

隣で寝ている佳奈が、優しく抱きしめてくれた。

そして…

僕の頭を優しくなでながら

佳奈「僕君、もう大丈夫だよ。

僕君が辛くなって病んだりした時は

私がいつもそばにいるって思ってぎゅーって

抱きしめてほしいな。」

そう言って、佳奈は自分そっくりの人形を

渡してくれた。

佳奈から人形を受け取った時に

手紙のようなものも同時に渡された。


僕は、佳奈からの手紙が初めてだったので

嬉しくて思わず

僕「ねぇ?佳奈。

この手紙、今ここで読んでもいい?」

って聞いてみた。

すると佳奈は…

佳奈「今はダメ。」

僕「なんで…?」

佳奈「…」

僕「佳奈…

どうしたの…?」

佳奈「…今読まれると恥ずかしいから。」

僕「分かった!

後で読むことにする!」

佳奈「僕君は、本当に物分かりが良くて助かる。」

僕「だって、佳奈は僕だけのものだもん!

僕も佳奈だけのものだよ?」

佳奈「僕君が言うならそうだと思うよ!」

僕「佳奈…」

佳奈「ねぇ?僕君そんなことよりもさ。

私があげた人形どう…?」

僕「もう…ね…

この地球上のどんな生物よりも

世界一、いやそれ以上に嬉しいし

一番輝いて見えるよ!」

佳奈「かなり大袈裟すぎるような気もするけど

僕君が言ってくれたから、それが一番嬉しい。」

僕「僕はいつだって、佳奈の味方だから。」

佳奈「私の味方でいてくれて、本当にありがとう。」



…ささやかな喜び…

その後

佳奈の為に料理を作った。

仕事で毎日疲れてる佳奈の為に

僕は、お腹に負担のないあっさり目の

メニューにすることにした。

どんなご飯作ろうか考えていると…

佳奈「僕君…申し訳ないんだけど…

食欲ないんだ。

だから、僕君無理して作らなくて大丈夫だよ。」

僕「本当に大丈夫…?

心配だよ…

佳奈が心配過ぎて…

僕どうしたらいい…?

佳奈の為に何も出来ない自分が難い…」

佳奈「僕君はなにも悪くないから

自分を責めないで。

僕君が私のことを思ってくれてるのと

同じくらい私も思ってるから。

僕君には

笑っててほしいから。

自分を傷つけないで。

お願い。」

佳奈は、そう言いながら優しく抱きしめてくれた。

しばらくして、休むために寝室に行った

佳奈の後ろ姿を見ていたら

喪失感と絶望感に襲われた。


僕は、何も出来ない自分が憎くて

リストカットをいっぱいした。

手首が真っ赤になった。

前傷つけてから、そんなに経ってないから

傷口がカサブタの状態になってて

その上から、リスカしたから若干ヒリヒリした…

沢山流れる血を見て、またしてしまったと

後悔した。

僕は、佳奈とある約束をした。

それは…

私といる時は、絶対にリストカットしないこと。

それが、たとえ私がいない所だとしても。

もし、耐えれなくてリスカしてしまった時は

隠さずに私に言うこと。

それが出来ない時は、私のそばにいること。

だった…


佳奈の仕事は自宅でも職場でも出来る

フリーランスのような仕事だ。

だから、ほとんど家にいることが多い。

たまに大事な会議がある時だけ、職場に行くことがある。

僕は、佳奈に隠さずに言った。

体調悪いのは分かっていたけど

約束したから…

僕「佳奈…ごめん。」

そう言って、佳奈にリスカした傷口見せた。

出血は収まっていなかったから

タオルを腕の下に敷いた状態で見せた。

横になっていた佳奈起きてきて…焦った顔をした。

佳奈「僕君…出血してるじゃん…!ちゃんと止血しないと!

僕君、救急箱ってどこに置いてたっけ!私すぐに探してくるから

僕君はとりあえず腕に敷いてるタオルで傷口抑えといて!」

そう言って、佳奈は救急箱探しに行ってしまった…

佳奈は、いつも冷静だ。


僕は、リスカした自分をひたすら責めた。

救急箱を探しに行っていた、佳奈が戻ってきた。

佳奈「僕君!救急箱持ってきたから、傷口出して!」

かなり強引だったけど、佳奈は素早く処置してくれた。

傷口はかなり痛むけど、佳奈の優しさで

かなりマシになっていたような気がする。

佳奈「とりあえず一時的な感じになっちゃったけど

これである程度は止血出来たと思う。

僕君、かなり深くまで傷つけてたから

治るまでちょっと時間かかると思うけど、我慢できる…?」

この時僕は、制御できない自分に気づいていた。

僕「うん…

佳奈との約束だから。」



…変化…

この時初めて僕の中で

何か違う違和感を感じた。

いや。

この違和感は、前から感じていたはず…

ずっと誤魔化して、隠して。

全ては佳奈の為。

佳奈の悲しむ顔は、見たくないから。

そう思って、僕はまた゛隠した゛。

さっきは、佳奈に迷惑かけてしまったから

お詫びに佳奈の為に何かしないと…

僕「佳奈…さっきは…」

そう言いかけたところで、佳奈が…

佳奈「僕君、今はとりあえず傷治すことが

最優先でしょ?変に私に気を遣って、謝らなくちゃとか

私のために何かしなくちゃとか、そういうのは

傷治してからでいいから。」

僕は素直に佳奈に従うことにした。



…服従…

今日は、僕の誕生日

それと偶然なのか佳奈の誕生日でもある。

佳奈は、僕にプレゼントをくれた。

佳奈「僕君にプレゼントがあるんだ。」

僕は嬉しくて思わず

僕「えっ!いいの?」と子供みたいにはしゃいだ。

佳奈は嬉しそうに、優しく微笑んでいた。

佳奈「私からのささやかなプレゼントですが

気に入ってもえらえると嬉しく思います。」

そう言って、僕に渡してきた。

貰ったプレゼントの箱開けた瞬間…

目の前が歪んで見えて…倒れてしまった。


…気づいたら寝ていたみたいで

眠い目をこすろうとして、手を動かそうとした…

僕「…うっ…う…うん…?」

寝起きのまだ冴えていない頭と眼の状態で

今起きている状況が読めないでいた。

僕「なっ…なんで…?

ぼっ…僕は…確か…佳奈に…プレゼント…貰って…

その後…確か…」

なんとか眠い目を自力で開け…

どうやら僕はベッドで寝ていたみたいだ。

でも何故か…

手と足が動かせない。

周りを見渡すことにした。

部屋は何もない牢獄みたいな部屋で

ベットの上に裸電球が一つあるだけ

手を動かそうとして気づいた。

ロープで手と足を縛っているみたいで

動かそうとする度にそれが食い込んで痛む…

手はベットの上に括り付けられていて

足は足首をベットに繋いだ状態でその先に何か重いものが

ぶら下げられているみたいで

とてもじゃないけど足を持ち上げることが出来ない。

周りは薄暗くて

裸電球だけ明るく照らしてくれているような感じだ。

…ギィー

寂れた扉の音がした。

?「ねぇ…?起きた…?」

僕「…」

…あれっ…?喋ろうとしたけど声が出ない…!?

僕は、パニックになってひたすら暴れた。

下半身は重りで動かせないから

なんとか動く上半身で、とりあえず逃げようとした。

括り付けられてる腕だけは、頑張ればなんとか

動かせれそうと思った僕は、力の限り動かした。

声のする相手が、どのくらいの距離にいるのか

分からないくらい、ゆっくりとこっちに歩いてくる。

コツ…コツ…コツ…

ピンヒールを履いているのか、一定の距離間で甲高い音がした。

でもきつく縛られすぎてるせいで、思うように動けなかった。



…恐怖…

佳奈の全部を知っているはずなのに…

どうして…

急にとてつもない不安がよぎる。

足音がピタリと止まった。

心臓の音が速くなる…

それと同時に

「カチャン…!」

何かの甲高い音がした。

僕はその音の方を感覚だけで探って、確かめようとした。

すると…

音の方向に何か赤い玉のようなものが見えた。

僕は、気になりよく目を凝らして見始めた…

すると…それは…

火だった。

火だけが、宙を浮いているように見えた。

僕「そんなこと…あるわけ…ない…」

動かせない状況で、どうすることも出来ず

ただただその゛火゛を見ていることしか出来なかった。


…真実…

さっきの火は

相変わらず宙を浮いたままで

でも気になることがあった。

それは…

ただ火が揺れ動くだけで、他に何も動きがないということ。

それが、恐怖心をより湧きあがらせた。

「…っふ…」

急に、人の声…?のようなものが聞こえた。

さらに恐怖心を煽られる。

僕の心臓が今にも飛び出しそうで、動きが聞こえてくる。


「あー…

うざいなぁー

ほんとイライラする。」


今度ははっきりと聞こえた。

あの聞き覚えのある声…


さっきまで宙を浮いていた火が、

今度はじゅー…という何かを燃やした音と共に

僕の顔を覆いつくす…

目の前に人の気配がないのに、何故か目の前まで

来ているようなそんな感覚に陥った。

その感覚とともに僕にまとわりついてくる

火…

その火は何故か熱くなく、においも全くしなかった。

だが痛みだけは感じ取れた…

表すのが難しいくらい、とてつもない痛み。

その痛みが僕の顔を襲っている。

想像を絶する痛みに必死に耐えながら

「…佳奈…!」と何度も叫んだ。


だけど…返事はなかった。



…感覚…

…どのくらいい時間が経っただろう。

声を張り上げすぎたせいか、僕の声が段々と小さくなっていく…

それでも僕は「…佳奈」と()ばずにはいられなかった。

()び続けて、僕は泣いていることに気づいた。

僕「…か…か…か…な…な…っ」

声がかすれて、思うように出ない。

それでも涙は止まらなかった…


佳奈が歌ってくれた曲が浮かぶ…

「~♪」

再生されてるはずのその曲は…

メロディーに沿って

流れてるように聞こえる…

「…これで終わりだね…」って。


声にならない声で

「…佳奈…

僕は…頑張って…

君のために…生きたかった…

…でも…

もう力が…出ない…」


「…ふぅ…」

再び煙が顔を覆いつくし


僕は、再び気を失った。


…最終…

佳奈「もう!

僕君ったら!

そんな所で寝ちゃって!

風邪ひいちゃうでしょ!」

そう言いながら

佳奈は僕を起こした。

起きた僕は焦って、鏡のある洗面台に向かった。

あまりにも焦っている様子だったから

佳奈が心配そうに声かけてきていたが

ぼくはそれを無視するかのように急いでいた。

洗面台で鏡をみた僕は驚いた。

僕「顔が見えない…」

顔以外のものは全て見えているのに

顔だけ見えない…

僕「なっ…なんで…

見えていないんだ…!

なんでだ…

なんでなんだ!

いくら顔を触っても

見えない…

そんなの…おかしいだろ…!」

目の前で起きている状況が信じられず

僕は家を飛び出した…

…どれくらい走ったのか

分からない…

気づいたら、海にきていた…

押し寄せる波に引き寄せられるようにして

僕は海に入った…

段々と飲み込まれていく感じが

心地よくて吸い込まれていった…

もう少しで僕が消えそうだった。

その時…

後ろから微かに声がしたような気がした…

振り返ろうとして…沈んだ。

一瞬で真っ暗になった。



…空白…

再び目が覚めた。

今度は、佳奈の顔が目の前にある…

佳奈が泣いている…

僕「…佳奈…どうして泣いてるの…?

僕…佳奈に悪いこと…」

さえぎるようにして佳奈が…

佳奈「僕君…」

抱きしめるようにしてこう言った。

佳奈「…まだ

生きてたんだ。」


…the story continus …

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